積極的睡眠のとり方の提案
1、積極的な睡眠スケジュールにより睡眠不足を吹っ飛ばせ。
-----------------------------睡眠飢餓への対処法
2、現代社会と睡眠障害について(考察)
3、時間生物学的治療
そのためには、自分自身に備わっている体内(脳内)時計の把握が必要です。
イ、個人特性をチェックしての対処法
ひばり型(朝方)か、ふくろう型(宵方)かを調べよう。
簡単なチェックテストがあります。詳細は当院まで御問い合わせください。
判定結果が、極端なひばり型という判定なら、昼間業務に限った勤務にしなくてはいけません。残業等の時間外勤務を禁止するように医師の診断書を職場に提出して下さい。極端なふくろう型の場合は変則勤務が向いています。しかし、朝の起床困難、不調感がありますので、午前8時半から始まる通常勤務が難しい場合があります。フレックス勤務制度導入を会社に働きかけたらどうでしょうか。医師の診断書で、午前の勤務をずらすようにする方法もあります。なお、両極の極端な型は一般人口の10%を占めるということです。
ロ、一般的対処法
人間の体内時計が25時間であること、それを地球の自転周期、社会時計の24時間に一時間早く合わせていることを認識することです(1999年の発表では、25時間ではなく、24時間ということ。以下は25時間計という仮説で説明します。新しい知見でも24時間より少し長いということでは共通しているようです)。
これはサーカディアン・リズムといわれるものです。その体内時計を社会時計に一時間早くあわせているために、時計回りには適応しやすいのですが、時計逆周りには適応し難いのです。そのために、遅寝遅起きはいつでも簡単にできるが早寝早起きが簡単には出来ないこと、また海外旅行で時差ぼけ(ジェット・ラグ)が避けられないが、それも東に行く航路は、西に行く航路より適応が困難なのを理解しなくてはいけません。
また、ウルトラ・ディアンリズムというものの存在も確認されています。その中でも、90分周期のものは重要です。睡眠において大事なものとして、睡眠構造の大きなものであるレム睡眠は90分周期に出現するのです。ノンレム睡眠が続いた後の約90分後に再びレム睡眠が出ます。その終了で睡眠の一周期となります。
この特徴を知って、睡眠スケジュールを立てるようにしてください。具体的には、約90分の周期で睡眠を取るようにする。目覚し時計をセットするときに、約90分の倍数で行なうようにするのです。
目覚まし時計をセットする時に、電車に乗る時間、出社の準備に要する時間、そして、最後に睡眠のために残された時間を計算します。睡眠のための時間が7時間しかないのなら、睡眠周期を4回取ることで6時間となります。しかし、5回取るなら7時間半となり30分の時間オーバーします。よって、30分の時間延長が難しいなら、60分早くに起床時間をセットすることになります。60分を思い切って切捨てるのが効率よい睡眠の取りかたになるのです。もし7時間を目一杯に睡眠に当てることで目覚し時計をセットすると、深い睡眠のところで覚醒を強制されることになり、不快な思いで起床しなくてはいけなくなります。せっかく6時間以上の貴重な時間を睡眠に当てたのに結果は効率の悪い睡眠になってしまいます。この傾向は睡眠時間を短く設定するほど、効率が悪くなってしまいます。
貴重な時間を睡眠に提供するなら、割り切りの態度が必要です。約90分(一時間半)の倍数を当てることが合理的な睡眠です。皆さんもこの知見を睡眠計画に生かしてください。
付記:現代人はこの周期的な睡眠だけでは睡眠時間が十分でありません。それを補うのが仮眠です。それをマイクロ・スリープによって取ることが有効です。この睡眠は系統発生の歴史の上で新しい脳細胞を休めるためのものです。なお、周期的な睡眠は歴史的に古い脳細胞を休めるものであります。マイクロ・スリープは周期的睡眠のスイッチは入らないように取るのがコツです。そのためには30分以内で切り上げるようにすることです。これは業務の間のわずかな時間を利用して睡眠不足を解消する手軽な工夫になります。試みて下さい。
考察:この日本に蔓延する勤務者の睡眠飢餓と気分障害について
1.日本においては、完全週休2日が導入されて10年近く(平成4年、1992年に国家公務員)、会社によっては四半世紀になっています(NTTグループ(旧電電公社)では日本では早期に導入された。1976年)。このことが勤労者のメンタルヘルスにプラスの効果があったと言われます。しかし、マイナスの効果については触れられていないようです。
2、プラスの効果については、電電公社東京における健康管理年報という資料において、精神障害関係の新規発病者の減少が早くに確認されました。しかし、その効果は長く続きませんでした。1983年を過ぎてから新規患者は増加傾向になっていきました。効果を減少させた直接因子して大きなものは業務量の過剰であろうと考えられます。その後、民営化(1985年、昭和60年、日本企業の国際化元年、グロバライゼイション)の大きな組織変革の波にのまれて、大きな増加になりました。
3、業務量の過剰は週勤務5日間、週勤務40時間の枠内での労働を困難にさせました。その結果、残業量を増やすことになりました。また、その当時盛んになった作業のコンピュータ導入による作業の孤立化があり、その孤立化を通じて業務量の過多の個人差が顕著になりました。
4、業務量の個人差は、コンピュータ導入、つまり業務の自閉化という側面から業務全体の業務進捗状況の不明化(ブラックボックス化)、末端職員の時差の発生、つまり、業務の進みが不明となり、いつ来るか分からなくなった業務を孤立状況でバトンタッチされた職員が締切時間までの残された短い時間内にがむしゃらに、かつ時間外に働かざるを得ないことが問題として発生してきました。
5、職場内において時差が生じたこと、それが孤立作業であることから、プライベー時間を犠牲にしての深夜、土日の時間帯での孤立な作業を増やしました。
6、このことが勤労者の睡眠障害、最近の研究結果の専門語で言い換えるところの睡眠・覚醒リズム障害の発生を増やすことになりました。
7、また、その臨床症状では食欲障害や身体の不定愁訴を合併しており、診断上は気分障害という報告のものも少なくありません。
8、ここ20年に増加している精神科問題は、睡眠・覚醒リズム障害、気分障害であります。気分障害の特徴は不安・抑うつ状態です。抑うつが時制的に過去に向かった症状を呈するのに、不安という未来志向の症状が混在する常識破りの症状となっている。その原因はマクロ的には巨大企業のリストラなど組織における変革によって発生した予期不安、ミクロ的には個人業務のコンピュータ導入のよる孤立化、そして個人時間を犠牲にしての残業増加にある睡眠時間の減少、睡眠飢餓の発生(効率的な睡眠摂取を必要とする状態、個人レベルの対策は上記の記事を見て下さい。)、その後に続く身体面の疲弊、過労にあります。精神症状としての意欲低下は、個人の勤労意欲を低下させる、コンピュータ導入という個別作業のために発生した業務量の不平等性、サービス残業という報酬なし(インセンティブなし)の労働提供に原因が求められます。
9、以上から、個人レベルにおいては睡眠の取りかたに工夫が必要です。組織レベルでは勤務者のリストラ不安を軽減する対策、労働提供意欲増進策(インセンティブ)、そして個々人の勤務時間の把握、つまり事務作業の工場作業化に伴い事務作業者の固定勤務形態(9時から17時に勤務する形)が変則勤務に近くになっていること、そのためには変則−交代勤務者への古典的対策である勤務時間表作成やその裏付けとなる人員配置(つまり、交代勤務の勤務表、それを可能にさせる人員配置、業務交代要員制度。ワークシェアの一形態)が必要となろう。
10、追加: コンピュータ導入に通信機能としてインターネットが追加されたことで、その後に続くはずの完全な孤立化は避けられました。これは幸運なことでしたが、孤立の変質化(不幸の手紙化、コンピュータ・ウイルスのチェーンメールなど)がその後の問題になっています。
注釈:サーカディアン・リズムとは、サーカ〜CIRCAは約という意味、ディアン〜DIAN、DAYとは一日という意味です。約一日、つまり約24時間という周期性のリズムのことです。ウトラル・ディアンは、ultradianということで、一日、24時間より短い周期性のリズムのことです。狭義にはその中で有意義な約90分のリズムを指します。#dian戻る#ultra