「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」報告書について(談話)
社会民主党幹事長 又市征治
1.5月15日、安倍総理の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(座長・柳井俊二元駐米大使)が、集団的自衛権の行使容認を求める報告書を安倍総理に提出した。総理は報告を受けて官邸で記者会見し、政府対応の「基本的方向性」を示し、与党協議を経て憲法解釈の変更が必要と判断されれば改正すべき法制の基本的方向を閣議決定していくと述べた。
2.そもそも安保法制懇は、集団的自衛権の行使容認に賛成の人々ばかりを集めた安倍首相の「私的諮問機関」であり、結論は初めから決まっていたのである。したがってこの報告書は安倍政権の「自作自演」であり、国の重大な安全保障政策の提言とは到底言えない。
3.同報告書は、他国を守るために武力を使う集団的自衛権の行使は憲法9条の定める「必要最小限度」の自衛権の範囲内だとして、憲法解釈の変更を求めている。「(戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認を宣言した)憲法9条の下で集団的自衛権の行使は許されない」という歴代政権の確立した憲法解釈を、「行使は許される」と解釈変更することは平和政策の根本転換であり、憲法9条の実質停止を狙うもので、断じて認めることはできない。
4.また、日本を取り巻く安全保障環境の変化をあげ、憲法論が硬直化し「憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない」、「個別的自衛権だけで国民の生存を守り国家の存立を全うすることができるのかについて論証がなされてこなかった」などとしているが、まったくのタメにする論理である。そもそも報告書は、「集団的自衛権が行使できないと国民の生存や国家の存立を全うできない」ことをなんら論証できていない。集団的自衛権とは、「仮想敵」を持つ軍事同盟が角逐した過去の遺物であり、国連による集団安全保障の理念と完全に対立するものだ。
5.憲法の解釈は一回決めたら未来永劫変えられないというものではないが、長年にわたる国会論議や国民的な議論、学問的な研究、司法の判断などを通じて確立し修正され定着してきたものであり、総理の恣意的な判断で解釈を変更できるようなものではない。内閣が好きなように解釈を変えることが出来るのであれば、憲法は権力制限規範としての意味を持たず法治国家とはいえない。
6.社民党は、このようなクーデターまがいの手法で憲法解釈を変更しようとする安倍政権に対して、各界各層の闘いと結びながら、全力を挙げて対決していく決意である。
以上