昨年9月1日から実施されている「時を超え光り輝く京都の景観づくり」がそれである。50年後、100年後の京都の将来を見据え、「京都が京都であり続けるために」どうすればよいかを考えた新景観政策である。 京都市の中心部では、毎年2%の町屋が消滅している。単純に計算すると50年で京町屋が全て無くなってしまうことになる。 確かに航空写真で見ても、祇園祭を支える中京の町屋の中心地に、マンションなどの高層ビルが建設され、町並みが分断されてしまっている。 このままでは町衆が支えてきた京都の文化も、町並みも消え去ってしまう。こうした危機感から今回の京都の新景観づくりが始まった。 具体的には、次の5つが柱となっている。 |
1、建築物の高さを低くする。 (都心部の幹線道路沿いは45mを31mに、その内部の町屋ゾーンは 31mから15mに) 2、建築デザインの見直し。 (市街地のほぼ全域を景観地区や建築物修景地区、風致地区などに 指定し、地域らしさを生かしたデザインとする) 3、眺望景観を守る。 (五山の送り火など38箇所を選定し、日本初の眺望景観創生条例で 近景、・遠景の眺望を守る) 4、看板を美しく。 (屋上看板や可動照明を全域で禁止、7年後までに全ての看板を新基準に統一) 5、歴史的町並みの保全・再生。 (京町屋などの外観の修理・修景に対して助成) 京都のグランドデザインを大きく書き換える、今回の新景観政策は、単に京都だけのものではない。それは、日本人にとって京都が千年の都として、日本文化の象徴であるということ、そしてその政策の成功は、日本全国のよいお手本となるという二重の意味においてである。 徳島においても、徳島駅前シンボルロードからの眉山の眺望など、大いに参考になるのではないかと思う。 「あのとき、日本の風景が変わる一歩が踏み出された」 後の世に語り継がれることになるかもしれない物語が、今京都ではじまろうとしている。 建築家 野口政司 2008年3月6日(木曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より |
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