映画「名もなく貧しく美しく」より
  
 
 一枚のモノクロ写真がスクリーンに映し出された。
「この写真に全ての解決策が示されています。」
 それは、ちゃぶ台のまわりに座ってだんらんしている懐かしい日本の家族の写真であった。
 「50年前の生活を思い出して下さい。そこから学ぶことはたくさんあります。」
 2月16日、ふれあい健康館で、ネットワーク『地球村』の高木善之さんの講演会があった。「不都合な真実を語る」と題され、CO2による地球温暖化と、オゾン層破壊や森林減少などによる地球環境の危機がテーマであった。
 年に300回、これまで一万回に及ぶ講演会を行い、個人として最も多い講演回数ではないかという。
 高木さんがこのような活動を始めるのには、あるきっかけがあった。
1981年、33歳のときにオートバイを運転中、逆走してくる車と正面衝突。生死をさまよう臨死体験の中で、ある意識の覚醒が起こったという。
“10年後、ソビエトの崩壊
 20年後、アメリカの崩壊
 そして40年後 世界の崩壊
 無数の未来の記憶・・・  ”
 それは、高木さんが40年後の世界の崩壊を防ぐために、自分の役割を自覚し、動き出すきっかけとなる出来事であった。
 高木さんは、経済優先で環境を破壊してしまった日本の姿を、参加者に気付かせようとする。まずは身近な生活のことから始め、同時に国や行政に働きかけることの大切さを述べる。そして大量生産、大量消費、大量廃棄の愚かさを改め、グリーンコンシューマ(地球にやさしい市民)となることが、今求められています、と結んだ。
 うーん、50年前の暮らしに戻れるかなあ。人間の欲望はおなかのようにどんどんふくらむばかりだし。
 貧しかったけれど、自然と仲よく暮らしていたあのころ・・・。もう一度真面目に考えてみるのもいいかもしれない。
 高木さんは、車を捨て、服はリサイクルショップで求め、1日1食、1500kcalで生活しているという。
 私たちもできることから始めなくては。しかし、地球はいつまで待ってくれるのであろうか。




 建築家 野口政司
 
2008年2月20日(水曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より

野口建築事務所
Noguchi Architect & Associates

50年前の暮らし