野口建築事務所
Noguchi Architect & Associates


「旅の宿」吉田拓郎
 浴衣のきみは
 尾花のかんざし
 熱燗徳利の首つまんで
 もういっぱい
 いかがなんて
 みょうに色っぽいね

 お彼岸を過ぎて、すっかり秋らしくなってきた。田んぼのあぜ道には曼珠紗華が咲き出し、緑の地に赤い模様を散らした帯のようである。実はきょう25日は私の誕生日で、曼珠紗華は誕生花だ。いつもこのころにいっせいに咲いて祝ってくれる。おまけにお月様までも祝福してくれている。今夜は満月である。熱燗でいっぱいやりながら...。
 と、ほろ酔いかげんで夜空を見上げると、何としたことか戦争映画か怪獣映画のようなシーンが現れる。あちらこちらからレーザービームのサーチライトが夜空を照らし、グルグルと回っているではないか。そこまでして私の誕生日を祝ってくれなくてもと思うが、よくよく考えてみると昨日も一昨日も同じだった。
 
 
 あのサーチライトは、ラブホテルが客室の空いているのを知らせるために投光していて、徳島市内に4ヶ所あるそうだ。旅行好きの友人の話しでは、県庁所在地にjこんなにサーチライトが多いのは徳島県だけだろうとのこと。しかし、いかに宣伝のためとはいえ、夜空をわがもの顔で照らして良いものだろうか。美しい夜空は市民の共有の財産でもある。何とかして心静かに眺められる夜空を取り戻すことはできないものか。
 旅行者による各県の好印象度を調べた結果によると、1位は北海道で36パーセント。続いて沖縄25.4パーセント、京都22パーセントとなる。徳島県は佐賀県と並んで0.5パーセント、最下位であった。(2004年、電通九州の調査)。日本の各都市は今後ますます環境や風景の良さを競いあうようになる。このままでは徳島県は取り残される一方ではないだろうか。
 部屋の灯りをすっかり消して
 風呂あがりの髪 いい香り
 上弦の月だったっけ
 久しぶりだね
 月見るなんて
 (「旅の宿」作詞 岡本おさみ、作曲 吉田拓郎)

建築家 野口政司
2004年9月25日(土曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より
旅の宿