野口建築事務所
Noguchi Architect & Associates

夏至祭のシンボル「メイポール」
の飾り付けをする人々
(スウェーデン)
ミッドサマーポールの飾り付け
 
 今日23日はヨーロッパで夏至祭の前夜祭にあたる。夏至祭は植物と火と水と恋人たちの祭礼で、その前夜には魔女や妖精その他ありとあらゆる超自然的存在が地上に現れて活動するという。

 北欧の娘たちは、愛の夢を見るように、そして夢が実現するように、その日摘んだ花を枕の下にはさんで眠りにつくそうだ。太陽の恩恵を受けているすべての生き物たが力をみなぎらせ、輝く夏至を祝ったのがその始まりだ。
 私たちの住むアジア東部ではちょうど雨期にあたり、火よりもむしろ水のイメージが強い。しかし、今年のように梅雨の合間に清々しい青空が広がると、強い日差しと山の緑の鮮やかさに目をうばわれる。
 私は仲間たちと毎年吉野川源流の森と里を訪ねているが、2年前の6月にとても印象的なシーンに出会った。 
 田植えされた棚田を見学していると、同行の子供たちが地面にはいつくばって動かなくなった。驚いた大人たちも一緒にのぞきこむと水田にはミズスマシやゲンゴロウ、ザリガニやらがうようよと泳ぎ回っている。町中で育った子供たちは水生動物のいない農薬づけの田んぼしか見たことがなかったのだ。水田の虫を求めてツバメが飛びトンボが舞う。私が子供だったころには当たり前だった里山の風景がそこにはあった。
 さてこの27日(日)、岐阜高山でオークヴィレッジを主宰する木工作家の稲本正さんを招いて里山シンポジウムを開く(「森からのメッセージ−里山の共生進化」、午後1時半から県立文化の森21世紀館)。
  人類はチンパンジーと99%以上遺伝子を共にしているのに、森から最大限離れることが文化的と思い込み、ひたすら工業化をおし進めたあげくに、精神も肉体もむしばまれ始めていると稲本さんは言う。そして自然と多くの生命体の共生ワールドである里山こそが人類のお手本であると注目している。
  当日は稲本さんの作品も展示される。初夏のひと時、木の文化、森の恵みに触れ、里山に思いをはせてみてはいかがだろうか。

建築家 野口政司
2004年6月23日(水曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より  
里山シンポジウム