野口建築事務所
Noguchi Architect & Associates



「関白宣言」
さだまさし
さだまさし
  俺より先に寝てはいけない
  俺より後に起きてもいけない
   めしは上手く作れ いつもきれいでいろ
   出来る範囲で構わないから

  
   さだまさしさんの「関白宣言」が大ヒットしたのは25年前だ。それから15年ほどたって、関白宣言その後と言える歌をさださんは発表する。
     お前を嫁にもらったけれど
     言うに言えないことだらけ
     かなり淋しい話になるが
     俺の本音も聞いとくれ
     俺より先に寝てもいいから
     夕飯くらい残しておいて       (「関白失脚」)。
  
 人生にはさまざまなリスクがついて回るようだ。
 さださんがデビューした30年前、建築学科の学生だった私は大学の製図室で「精霊流し」や「親父の一番長い日」を聞きながら、徹夜で課題の図面を引いていたのを思い出す。
 そのころ防災計画(リスクマネジメント)を教えてもらい、後に神戸大学に転じて名誉教授となった室崎益輝先生が先日来徳した。
  阪神・淡路大震災の教訓についての講演のためで、6400人におよぶ震災の犠牲者のほとんどが、家屋の倒壊と家具の転倒による死亡であったと話された。そして迫っているという南海地震に備えて、何より大切なのは家の耐震化(改築もしくはリフォーム)と家具の固定であると力説された。
  地震余話として、震災離婚が数多くあったそうで、グラグラっと来たときに妻をそのままにして逃げ出した夫が信頼を失ったのが主因とか。また夫婦で寝ていて家具の下敷きになり死んだのは決まって片方だけで、家具に近い者が重い家具を支える形で亡くなったそうだ。
  さて関白復活を願う世の男性諸氏、今すぐできる地震対策は次の3つ。あなたはどれを選ぶだろうか。
 @ 寝室から大きな家具を運び出す
 A 家具を壁に固定させる
 B 自分の布団を家具の側に移す

 
   俺より先に死んではいけない
    例えばわずか1日でもいい
    俺より早く逝ってはいけない     (「関白宣言」三番)

建築家  野口政司
2004年6月8日(火曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より  
関白宣言