宗政報告No.27(2011年7月7日)



 この度の震災並びに原発事故によって、お亡くなりになられた方々に深く哀悼の意を表し、避難を余儀なくされている方々に心よりお見舞いを申し上げます。

 3月11日の震災前には、宗祖親鸞聖人750回御遠忌厳修に向けて、仙台教区としては、5月13日の「教区の日」『死刑制度と私たち』ー真宗門徒にとって死刑とはー 開催に向けて準備を重ねてまいりました。また、寺としては浜組の皆さんとの5月の団体参拝を心待ちにしていたものです。それらが全て中止となるだけではなく、すべての事柄が大きく変わってしまいました。
 本山では、第1期のご遠忌は中止となり、「支援のつどい」として執行され、第2期・第3期はご遠忌として勤められました。
 例年ですと5月下旬から2週間ほどの会期で常会が開催されますが、今年の定例議会は、ご遠忌厳修のため、当初からの予定通り、6月22日から29日の8日間にわたり開催されました。
 
 
 
◎今議会は、「震災支援と原発」議会

 今議会の主な議案としましては、2011年度補正予算、2009年度決算、そして条例関係が3件です。なお、2011年度予算につきましては、昨年の議会で随分変則的な2ケ年度分予算の審議を済ませており、従って2011年度については補正予算の審議となり、主な審議は2009年度決算ということになります。もちろん、決算は大変重いものではあります。それについては適正に執行されたかを審議することが重要ではありますが、今議会では特筆すべき事項はありません。
 そういうことで申せば、震災を受けての初議会として、どこに主眼をもって臨んだかと言えば、震災復興に向けての支援がどのようなかたちで実施されようとしているのかと言うことと、原発事故を受けて、原発に対して、宗門として明確な反対声明か、議会決議を出せるかという2点でありました。

 ここで、震災後すぐに実施された昨年度の対応を含めて、これまでの仙台教区に対する支援を整理しておきましょう。
 3月18日の参与会・常務会(宗会閉会中に緊急を要する事項を決する機関)において、宗派特別見舞金として、仙台教区に1億300万円、東京教区に2,000万円、山形教区・奥羽教区にそれぞれ100万円。さらに、救援物資購入費4千万円、物資搬出および職員派遣1千5百万円、総計1億8千万円の緊急支出を決定しております。
 仙台教区としては、その見舞金から気仙組・仙台組の津波による全壊寺院2ヶ寺と原発で避難している3ケ寺のご寺院にそれぞれ1,100万円をお見舞いとしてお渡しすることが出来ました。
 また、宗派会計からの拠出ではありませんが、第1次として5月18日までに全国から寄せて頂いた災害義援金3億7千万円のうち、仙台教区には1億5千万円、東京教区に3,700万円、山形教区・奥羽教区にそれぞれ100万円が給付されました。その余は、あしなが育英会に1千万円、被災63市町村に計1億7,100万円をお渡しすることになっています。
 お寄せ頂いた見舞金並びに義援金を今後の仙台教区の復旧・復興にどのように生かしていくかが大きな課題であります。

 今議会の2011年度補正予算として、提案されましたのは、仙台教区5,500万円(ご依頼の7割相当)、東京教区4,500万円(ご依頼の1割相当)の減免措置であります。そして、その減収分1億円につきましては、平衡資金(非常時のために各年度の余剰金の半分を保管している金員)から6千万円を融通し、宗務の2%の緊縮により2千万円、宗務役員削減により2千万円を捻出しようとするものであります。
 なお、納められたご依頼の15%が、交付金として教区に還流していましたが、減免により交付金が減少することが、教区運営上から懸念されていました。しかし、特別教化交付金として減免分の交付金が手当されているようであります。
 さらに、仙台教務所内に設置されている現地支援センターを中心に、今後さらなるサポートの継続と強化を当局は表明しました。

 今回は、当局には支援という点に関してはさまざまな高配をいただいたと議場でも謝意を表明してきました。 


 
◎脱原発に関する宗派の明確な見解は?

 さて、7月4日、佐賀県の玄海町々長は、玄海原発2、3号機をめぐり、九州電力に運転再開への同意を伝えたということです。それに先立ち、経済産業大臣は、安全については国が責任を持って請け合うといっています。
 
 福島においても、国は安全の約束をしたはずであります。その国は、どのように住民の安全のための責任を果たしたでしょうか。何処に避難すれば、より少ない被曝で済むかという情報を流したでしょうか。ここに止まっていては、多くの被曝を免れないと言う情報を伝えたでしょうか。子どもたちの被曝を少しでも抑えるために、一件でも除洗作業を国の責任でやったでしょうか。やったのは、その程度の放射線量なら直ちに健康に影響を与えることはありませんという、いよいよ不安を煽るアナウンスを流し続けたことだけではないでしょうか。原子力行政を司る経済産業大臣が、安全には責任を持つというなら、放射性物質を無毒化する技術と方法を手に入れてから言いなさいといいたいですね。いまも、大地を大海を大気を放射性物質で汚し続けながら、それをなんともできなくて、どこで安全について云々出来るのでしょうか。憤りを越えて無力感さえ感じます。
 この度の事故は、経済の発展も雇用も確かに大事ではあるが、いのちを蝕まれ、健康をおかされながら手に入れねばならない経済発展とはなにか、地域振興とは何かが問われたはずであります。
 ところが、玄海町の判断は、福島の問題はあったけれど、雇用をまもることが、町の財政のほうが大事だということであり、福島の事故に何も学ばなかったということなのでしょう。この度の玄海町々長の発言は、福島をフクシマと特別な事例として、切り捨て、見捨てることで、これまでの夢を追い続けようとするものと映ります。それは支援とは対極にある残酷な仕打ちです。
 これから、さらにこのような事例や議論がますます幅をきかせることが予想されます。であるからこそ、福島の人たちに対する無形の支援があるとすれば、それは「原発はいらない」と言うことを明確に意思表示することであります。それこそが、あなた方と共にあり、けっして見捨てないと言うことを伝えることになるからです。大谷派教団が、原発の被害で苦しんでいる人たちと共にありたい、何か支援したいとするなら、まず、「原発はいらない、止めろ」と声を挙げることこそが、いま求められている喫緊のことであると思います。

 ところで、宗務総長は、「支援のつどい」と2期のご遠忌法要で原発の誤謬性にふれ、賛成でないことを挨拶で表現しています。しかし、それは宗派としての声明としては不十分だあったため、仙台教区として正・副議長をはじめ、教区会・教区門徒会の主だった有志により、要望書(資料ー1)を提出し、宗派としての声明を出すことを要望してきました。
 当局は、それに応えなかったため、議会でも複数の議員から、宗派声明を出さない理由を総長に問い質しました。しかし、総長からは、すでに挨拶で見解は表明していること、いま大事なことは学習することであると、声明は出すつもりはないという答弁でありました。いまは学習することが大事であるとは、なんとも悠長としか言えません。福島の事故から、何を学んだのでしょうか。このうえ、何をいったい学べば態度決定が出来るというのでしょうか。
 この対応は、「見真額」の時にも繰り返された答弁である事を思い出します。見真額についても、学習をして充分検証されなければ判断できないと態度猶予の言い訳を繰り返しました。おかげで、見真額をご遠忌前に下ろすというタイミングを失ってしまいました。何とも、安原総長は学ぶことが大好きで、動くのは学びに学びを尽くさなければダメなようであります。


 
◎議会決議をめざす
  
 当局が宗派声明を出さないことがはっきりしましたので、大谷派議会として、脱原発の決議を採択できるように、真宗興法議員団と無所属クラブの代表と交渉を重ねました。私たちは、決議の内容として、原発の問題点の指摘と脱原発を明確に盛り込むことを主張しました。無所属クラブとは合意に達したのですが、真宗興法議員団は、脱原発と言うことを鮮明にしない、教えの言葉を多く盛り込むことと注文を付けて来たため、文案で合意に至らず、無所属クラブと合同で決議(案)(資料2)を発議しました。無所属クラブ10名、無所属2名そして恒沙の会9名の21名です。本会議では、真宗興法議員団全員が反対。大谷派では2002年1月にすでに、ブックレット「いのちを奪う原発」を発行しています。福島の事故を経たにもかかわらず、その当時よりさらに後退しているというのは、どのように、この教団を理解すればいいのでしょうか。いのちが危機に瀕している状況に声を挙げないで、いったい何をまもろうとしているのでしょうか。
 

 
◎修復事業

 第2期の修復工事として阿弥陀堂と御影堂門の修復があります。それにつきましては、御正当報恩講が円成する翌日、11月29日に、ご本尊動座式を執行し、来年1月より、修復工事に着工する予定であります。工期は、3年の予定。


 《 あとがき 》

 いわき市では、一時は五千人を超える人々が暮らしていた避難所が閉鎖されました。仮設住宅や公営の住宅、民間から借り上げた住宅に移って行かれたのです。学校の体育館や公民館の広間での生活からは解放されましたが、先行きの見えない不安の中での生活には変わりないでしょう。 避難所には、同朋の会のメンバーと炊き出しをさせてもらいましたが、これからどのようなことができるのか、お知恵があればお貸し下さい。


【 資料ー1 】

   〔 要 望 書 〕

 この震災はかつてない甚大な被害をもたらしました。それはまた、福島第一原発事故を誘発し、その事故により多くの人たちが、持っていきどころのない怒りと不安を抱えて先の見えない生活を強いられています。
 放射線により健康を損なわれ命を蝕ばまれる危険性の中で生活することの不安に止まらず、避難により仕事を奪われ、生活を奪われることで人間としての誇りと生き甲斐を奪われた多くの人たちがいます。あるいは、避難生活での心身の労苦で亡くなっていく人さえいます。
 私たちを受け入れ、育み、育てるはずの大気や大地や海は、いまも放射性物質で汚染され続け、そこに私たちが生きることを拒もうとしています。
 原子力発電は、私たちがそこに生きることを許さない環境を生みだすリスクを抱えた発電方式であることがはっきりしました。いわば、命を代償としての発電方法ということです。
 原発を容認し受け入れてきた要因の一つに、私たちのより快適で、より便利な生活様式の追求があったことは否定できません。高いリスクがあることに目をつむり、恩恵だけを享受しようとしてきたところに、この度の事故を生む素地がありました。この度の事故は、原発を受け入れ容認したところに、すでにその要因があるとすれば、この事故の責任の一端は私たち自身にもあります。

 念仏の教えは、「普共諸衆生 往生安楽国」と、すべて命あるものが、共々にこの生を謳歌せんことを願い求める教えであります。その教えに立つ時、命を蝕み、人々の誇りと生き甲斐を奪う事態を引き起こす危険を孕む原発は決して容認できるものではありません。

 ここに、この度の事故をふまえ、左記の3点について宗務当局に強く要望致します。

1.総長は「被災者支援のつどい」開催にあたり、この度の原発事故を人知の闇と表現され、鋭い警告を発して下さった。その発言は内外に多くの共感を呼んだが、さらに進めて、第3期のご遠忌法要の冒頭に、宗門として明確な「廃原発」の決意表明をしていただきたい。

2.原発の被曝をおそれて避難している人々が全国におられる。その人たちに対する相談窓口を宗務所の中に設置してもらいたい。そこでは、少なくとも放射線にたいしての科学的知見を資料として持ちながら、避難生活の不安に応えられる部署として、関西におられる避難者はもとより、全国の別院や教務所に来られた方々の問いに対応できるようにする。

3.共済制度は、寺院教会の施設の損害に対して給付されるものではあるが、この制度が同朋相互扶助の精神に則り、災害復興支援を目的とすることを鑑みる時、この度の原発事故による被災は、これまで全く前例のない事例ではあるが、福島第一原発20キロ圏内の寺院については、居住不能となる可能性さえあるなか、寺院復興という観点からは全壊にも勝るダメージを蒙ったものと言え、それに似合う給付がなされることを願うものである。

     2011 年 5 月 13 日
              
          仙台教区教区会議長 諏訪 敦雄 
          教区会副議長 永井 隆
          教区門徒会副会長 大谷 彰
          参事会員 藤原 善継 東舘 義浩 吉田 信  
          常任委員 中川 長則         
          盛岡組組長 櫻田 正憲 花巻組組長 和田 演郎
          気仙組組長 杉村 郁麿 仙台組組長 那波 昭西
          仙南組組長 久保田 驕@中組組長 白江 成
          宗議会議員 藤内 和光 参議会議員 神野 昭治

  宗務総長 安原 晃 殿

【 資料ー2 】

   「脱原発社会」実現への決議(案)

 2011年3月11日。私たちは、東京電力福島第一原子力発電所事故がもたらした放射能汚染が、未だかつてない愚かな人間の所業として人類史に刻まれたこの日を忘れることができません。
現在、広範な地域の子供たちを含む100万人にも及ぶ住民が、強い放射線にさらされています。大気、土壌、地下水、海水、食物等への汚染は、その人たちに長期にわたる被曝におののく生活を強いることになるのは必至であります。そのうち10万人近い人たちが仕事や生活を奪われ、故郷を棄てさせられ避難を余儀なくされています。
ここに至って、「核の平和利用」「クリーンエネルギー」「電力の安定供給」というスローガンのもと、国策として推進してきた原子力政策の問題の本質とは、「被曝の問題」であることが露わになりました。まさに、原発が生きとし生けるものの「いのち」を奪うことが明白になった今、人間は原発とは共存できないことを、私たちははっきりと見定めなければなりません。
福島原発をはじめとした54基の日本の原発では、ヒロシマ・ナガサキの生存されている被爆者数をはるかに超える労働者が被曝しています。それのみならず、放出された放射能による住民被曝の拡がり、さらには核廃棄物による遠い未来に生まれてくるいのちをも被曝の恐怖にさらすことになります。
原発を支えてきた「安全神話」と「必要神話」という二つの虚構によって覆い隠されてきたものが、いのちへの冒涜であり共に生きあう世界を根こそぎ奪う以外の何ものでもないことが明確になりました。もはや原発を必要とするどのような理由付けも成り立ちはしません。
私たちは「脱原発社会」の実現を目指し、地獄・餓鬼・畜生のない国を希求した浄土の願いに応えるため、宗門を挙げて歩みだすことを全世界に表明し誓うものであります 

2011年6月29日
                                 真宗大谷派 宗議会議員一同

                  発議者 藤内 和光
                  賛成者 釈氏 政昭  篠田  穣  田澤 一明
                        森島 憲秀  三浦  長  新羅 興正
                        村上 大純  藤井 学昭  真野 琢児
                        三浦  崇  大澤 秀麿  椋田 隆知
                        滝澤 康俊  赤松 範昭  本多 一寿
                        旦保 立子  福田 元道  木全 和博
                        吉藤 真人  玉光 順正