宗政報告No.24(2010年2月16日)


     第52回宗議会(臨時会)が開催される


 この2月2日から4日に宗議会、そして3日から5日に参議会のそれぞれ臨時会が開かれました。主な議案は、本山に於いてのご遠忌法要及び讃仰期間は、教務所事務を一部を除き休止するという宗務役員の執行体制に関する臨時措置条例案と、今年6月の常会に2010年と2011年の2カ年の予算案を提出したいという予算編成に関する臨時措置条例案。これは、ご遠忌が2011年5月28日に終わりますが、2011年の常会を例年通りの内容で実施することは、日程上不可能であり、2011年の常会は決算を中心に6月の下旬に開き、予算については今年の宗会に提案したいというものです。
 このほか、補正予算関係他が4案件提案されました。


 
◎教区の研修会や諸会議が73日間休止状態になります

 宗務役員の執行体制に関する臨時措置条例案というのは、「2011年3月18日から5月29日までの間、宗務総長が必要と認めた業務を除き、教務所の事務を休止する」というものです。
 ご遠忌法要・讃仰期間は71日間ですが、前後の2日が追加されて73日間、教務所事務が休止されるという条例案です。
 そして、宗務総長が認めた業務とは何かということですが、条例案には、第2項があり、そこには、宗務総長が告示するとなっていますが、現時点の予定としては、「収骨・読経・一般お斎の取り扱い、収納及び現送に関する事項、院号法名に関する事項、寺族の慶弔に関する事項、門徒会員に関する事項、責役・総代に関する事項、第1種共済に関する事項、門徒授与物に関する事項、帰敬式に関する事項等」であります。
 このほか、変更して取り扱う業務としては「教師修練に関する事項、生前論功に関する事項、住職・代務者・特命住職の任免に関する事項、第2種共済見舞金・共済金に関する事項等」があります。そして、その余の業務については休止するということです。
 この間の教務所員の勤務地は、本山・宗務所となり、教務所には上記のような業務をするために出向して来るという体制を組むというものです。
 そして、一番の問題は、その間には、教区での研修会や諸会議は一切実施しないということです。研修会、諸会議が実施されないということは、教化活動は全く中断されてしまいます。
 ところで、今回は、所属会派「恒沙の会」の代表質問を担当しましたが、この問題を中心に取り上げていますので、ご参照下さい。
 今回、臨時宗議会に臨むにあたり、教区の皆さんのご意見をお聞きしたうえで出席したいと思い、事前にこの件について、教区会議員・教区門徒会員の皆さんからアンケートを採らせて頂きました。その結果も、代表質問で触れています。ご協力頂いた皆さんにはこの場をかりてお礼申し上げます。
 このような教区を無視したような条例が、宗議会では与党真宗興法議員団の賛成多数で可決されました。
 なお、参議会では全会一致で可決されました。

  
 
◎2010年度と2011年度の両年度予算を
        次の常会で編成する臨時措置について

   
 先程も少し触れましたが、本山のご遠忌法要が2011年5月28日まで勤まりますが、例年ですと常会は5月下旬から始まります。ところが、予算の概算の算出等の作業の日程が十分取れないということもあり、又2010年と2011年は、ご遠忌の年度とその総括の年度として2カ年を一括りとして捉え、両年度予算案を今年の常会に諮り編成したいというものであります。
 しかし、宗憲には「内局は毎会計年度の予算を作成し、宗会に提出」とあり、本派の会計は単年度であることが謳われているにも関わらず、条例でそれに抵触する恐れのあることを、それも会期3日の臨宗で決めていいのかということ。しかも、予算という宗門における教化活動の屋台骨を構成する案件を2カ年纏めて審議するということに対しては賛成できるものではありません。
 準備が間に合わないのであれば、ひと月遅れで常会を開催すればどうかという質問に対しては、教区会・組会等の地方への影響が大きいものがあるという答弁。この時には、教区や地方のことに対しての配慮が理由とされました。
 あるいは、一歩譲って、2011年度予算を今年6月の常会に提出する準備が出来ているとすれば、それを一年間塩漬けにしておいて、20011年6月の常会で諮ればいいではないかという質問に対しては、そういうことも考えられるが、2カ年を一括りで考えたいという答弁。
 ここにも、ご遠忌なのだから、何だって許されるという対応の在り方がかいま見えます。
 この案件も、与党の賛成多数で可決されました。


 その他の補正予算案につきましては、昨年6月の常会で、すでに可決されている事柄の予算上の執行に伴っての補正であります。
 一つは、開教拠点設立にあたり、首都圏開教拠点として土地建物の取得及び改修経費として7千万円、沖縄東本願寺別院設立に伴う土地建物取得及び改修等の経費1億1千万円であります。
 いまひとつが、役宅建設資金割賦金の金利大幅削減のために金融機関からの借入金4億2千万円を予算化するものであります。これは、不明門役宅(1991年)、東六条役宅(1995年)を建設するにあたり、住宅・都市整備公団から30年ローンで資金(合わせて13億9千万円)を借り受けましたが、当時としては妥当な金利(5〜6%近い)であったのですが、低金利の現在から見れば余りにも大きな金利であることから、一端未返済分を金融機関から借り入れ、住宅・都市整備公団に完済して、低利の返済を金融機関にするというものです。

 以上のような諸議案を内容とする臨宗でしたが、特に教務所事務休止は今後、現場で大きな混乱が予想されます。代表質問で、その件を中心に問題にしていますので、ここに掲載します。
          【 代 表 質 問 】

 
当局が提案されている、ご遠忌の宗務執行体制を中心に、恒沙の会を代表して質問致します。
 私たちは、05年に作成した冊子「世の祈りにこころいれる宗政を」のなかで、「ご遠忌は、大法要ではあるが、宗門の大事ではありません。教団の一切がご遠忌に集約されるようなご遠忌教団にだけは成らないように注意せねば成りません」と提起してきました。
しかし、この度の当局提案は、最も危惧してきた全てを本山で執り行われるご遠忌法要に集約させようとする施策であります。

 昨年12月上旬、他派の友人から真宗教団連合の同和問題・靖国問題の各年毎の中央研修会を、ご遠忌体制を整えるため、2年間は休止したいという申し入れが、教団連合の事務局を担当している大谷派からあったということを聞きました。その友人は、ご遠忌だからこそ、教団連合としてのアピールを発信すべきでないかと思っているのだがと付け加えていました。真宗教団連合という、浄土真宗の教えのもとに教団の枠を越えて、重要な課題の研究・研鑽を重ねている組織にとっての、主な業務の一つといえる同和問題・靖国問題の研修会をご遠忌体制を整えるために取り止めるという、そういうご遠忌とは一体何なのか。そのことを聞かされた時、大きな違和感を覚えました。
 そして、この度の教務所事務休止という当局提案であります。そこには、違和感という言葉では表現できない、当局は一体ご遠忌をどう考えておられるのかという疑念に近いものを感じました。

 このご遠忌は、宗祖としての親鸞聖人に出遇うをテーマとして掲げてきました。それは、一人が念仏者として歩み出すことを願いとした運動としてのご遠忌を勤めようとすること。あるいは、ご遠忌が、宗祖に出遇うご縁となることを願いとする運動そのものでありたいということなのでしょう。もしくは、ご遠忌を通して運動を推し進めたい。さらには、新たな機軸の運動を作り出したいということであると了解していました。
 しかし、どうも、この度の条例案はその了解の修正を迫るものと思われます。
 なぜなら、運動が具体的に展開されている場は、教区であり、組であり、そして各寺院であります。そして、それらに助言・指導・支援をする機能が求められるのが教務所そのものに他なりません。その教務所を、71日間事務休止とすることは、運動を中断させ、停滞させることになります。ご遠忌を運動として位置付けるとするなら、決して各教区での運動を阻害するような施策が採られるはずがないと思うからです。
 運動としてのご遠忌を見失い、いつの間にかご遠忌を勤めることそのものを自己目的化してしまっているのではないでしょうか。

 また、ご遠忌という時、本山を場とするご遠忌事業、あるいは教区を場とするご遠忌、そして組や寺院で展開されるご遠忌事業があります。それらすべてを総称して、宗祖750回ご遠忌であると理解します。
 そのなか、本山で執行されるご遠忌法要は、もちろん中心的な内容と大きさを持つことはいうまでもありません。しかし、一人の念仏者の誕生を願うという運動の質においては、本山を会場とするご遠忌も、教区、組そして寺院におけるご遠忌も、その軽重はないはずであります。
 ところが、この度の条例案の提案趣旨には「ご遠忌法要業務に万全な体制を以って臨む」とありますが、そこでいう、ご遠忌業務は、本山を会場とするご遠忌のみのことであり、そこには、教区や組のご遠忌は全く見落とされています。それはあたかも、ご遠忌といえば本山で開催される事業のことで、教区や組、寺院での事業はご遠忌とはいわないのだといわんばかりであります。本山の方を向いておればいいのだ、本山の言うことを聞いておればいいのだという在り方、発想がこういう施策を生んでくるのではないでしょうか。

 さて、この度の条例案の提案理由として、特別委員会審議の中で確認しましたが、「団参の皆さんに対する丁重な対応と宗務役員間の温度差を無くすため」という事が挙げられています。教務所員は教区における日常の業務の他にご遠忌業務を担当し、手一杯の仕事を果たしていると思います。それぞれの場で、宗務役員として、ご遠忌を支え担う業務に励んでいます。ご遠忌業務に精励している点からは、宗務所と教務所に温度差などあろうはずがないと思います。もしそのように見えるとすれば、教務所宗務を正しく評価していないからに他ならないでしょう。あるいは、もし、本山の盛り上がりを教務所員にも味わわせてあげたいということであれば、そしてそのために、教務所事務を休止するのであれば、誰のためのご遠忌を勤めようとしているのか、それではまるで宗務役員のためのご遠忌ではないかと問わねばなりません。
 また、団参の対応のために人員が必要であるとするなら、その人員を各教区の若手から募集する方途を提案したいと思います。これからの宗門を支える若い人たちが、本山のご遠忌に直接スタッフとして参加することは、彼らにとって得難い財産となるに違いありません。それはまた同時に宗門にとっても大きな財産となります。

 ところで、施策を立案するにあたっては、どれだけの人々がそこに思い描かれているかということがあるかと思います。この度の条例案は、宗務役員と団参に参加する人たちのことは想定されていたのかも知れませんが、30教区の教区の人たちの姿はそこには見えていなかったのではないでしょうか。これを立案されるにあたって、教区の人々に意見聴取をされたでしょうか。
 この条例案は、30教区は、生きて活動しているということを正しく見ないまま立案された教区無視の施策であるといわざるをえません。

 さて、議員たるもの、自身の宗門に対する情熱と識見に基づいて議会活動をする者であると共に、教区から選出されたものであることから、教区の意見を代弁するものでもありたいと心掛けています。そこで、先月21日に、仙台教区教区会議員・教区門徒会員合わせて26名を対象に、この件についてのアンケートを採りました。
 そのアンケート内容をご紹介しますと、「2月2日から5日の4日間に渉りまして、臨時宗議会・参議会が開催されることになりました。主な案件は、ご遠忌期間中の宗務役員の執行体制に関する臨時措置条例の一部改正であります。
 その内容は、ご遠忌法要期間及び讃仰期間(2011年3月19日から5月28日)は、一部を除き、教務所事務を休止するというものです。
 なお、除かれる一部の業務の内容につきましては、現時点では明確にされてはいませんが、災害・慶弔等の緊急に対応を要する業務と思われます。
 休止する理由としては、宗務役員が総力を結集してご遠忌業務にあたるためとされています。つまり、その期間の教務所員の主な職場を本山とするということのようです。
 就きましては、この措置に対しましての皆様のご意見を、是非お聞かせいただきたいと思います。
 1.大いに賛成である 2.止むを得ない事と思う 3.あまり賛成出来ない
 4.全く受け入れられない そして、別に意見欄を設けたものです。
 26名中22名から回答をいただきました。85パーセントの回収率です。
 結果は、大いに賛成であるゼロ。やむを得ない2名。あまり賛成できない7名。全く受け入れられない11名。回答保留が2名。全く受け入れられないが50%の11名です。それに、あまり賛成できないを合わせた反対意見は18名、8割をこえます。
 意見欄に記されていた主立った意見を紹介すると、教務所の存在意義が問われる。誰のため、何のためのご遠忌法要か根本から問いたい。教区・教務所を設置した当時の目的・役割・位置を問う。地方宗務とはなんぞやを問いたい。いかにも地方を知らない中央中心の愚策。地方の宗門行政を無視したイベントオンリーの発想、71日間分の経常費は返還されるのか等々。厳しい指摘があったことを紹介します。このアンケート結果は、決して仙台教区だけのことではないと思われます。

 この条例案が可決・施行されれば、現場の混乱と宗門に対する不信は大きなうねりとなるでしょう。それも、ご遠忌によって引き起こされるというところに耐えられないものがあります。当局におかれましては、是非ご再考をお願いしたい。

 最後に、教化センターに関してお尋ねします。総長は、「仮称教化センター設置に関する条例案」を来る常会に提出予定であることを表明されました。宗門の教化研修業務に大きく寄与すると思われます教化センター構想が宗務審議会を経て、その後検討委員会に諮られ、その報告書を受けられてのご英断大いに支持するところであります。教化センターが整えられ、教化研修に関わる機構・組織が整備されることは誠に頼もしいことだと思われます。しかし、如何なる方針と方途で同朋会運動50年以降の教化事業を展開しようとするのか、そのグランドヴィジョンが明確でなければ、その機構・組織は生きて機能しないでしょう。
 2002年12月の「宗祖親鸞聖人750回ご遠忌基本計画最終報告」には、「真宗同朋会運動構想を再検討し、信仰運動として新たな出発の機縁となるようなご遠忌を目指し」とありますが、50年の運動を検証し、50年以降の信仰運動を構築するような作業をどこで行っているのでしょうか。
 わが宗門には、優れた知見と豊かな経験持った多くの諸氏が在野にもおられると思います。人数を集める必要は感じませんが、それらの人に結集頂き、これまでの50年の運動を功罪共につぶさに検証し、50年以降の運動を模索検討する機関をご遠忌事業として是非設置して頂きたいと強く要望して質問を終わります。                                            以 上