宗政報告No.20(2008年7月3日)
6月14日朝の地震には驚きました。教区内では、震源地からたぶん最も遠いと思われるいわきでも、随分揺れ、魚釣りに来ていた人が崖崩れの下敷きになって亡くなりました。震度6強という地域の皆さんは、さぞ恐ろしかったでしょうし、いまも震源地に近いところでは二次被害が心配されています。 震源地に近いご寺院では本堂の屋根瓦がズレ、壁に大きくヒビが入り、墓石の倒壊等の被害がでたようです。お見舞い申し上げます。 ◎正副議長職を与党真宗興法議員団が独占 定例の宗議会が5月29日から6月10日までの会期で開催されました。今回は、正副議長の改選(規約があるわけではありませんが、一応2年で交代ということになっています)がありました。 我々は、当然副議長は、野党から選出するものと思っていましたが、なんと、与党真宗興法議員団は、数にものを言わせる相変わらずの横暴さをもって、正副議長の独占を主張。 あの郵政選挙で衆議院の3分の2以上を獲得した自民党でさえ、副議長には民主党の横路氏を起用することに賛成しています。それが、与野党共になって議会を運営していこうとする常道であるからです。 我々は、それは、議会を運営するにあたって野党は必要ない、興法議員団だけでやっていくということを内外に示したいということなのか、そうでないなら、興法議員団でどうしても正副を独占しなければならないという正当な理由を示すように求めましたが、それに対する明確な返答も得られないまま話し合いはつかず、選挙となり、興法議員団の二氏が選出されました。 議 長 安 原 晃 氏 副 議 長 武 宮 眞 哉 氏 ◎08年度予算は、85億6000万円 本年度予算額は、07年度予算に比して、1億円の減となっています。これは、一般会計の緊縮化ということではなく、余剰金の処理の仕方によるものです。 なお、08年度から、全国門徒戸数調査によって得られた指数を基にして各教区へのご依頼がなされます。調査によって得られた全国門徒戸数は、131万戸、指数では113万指数となりました。各教区へのご依頼額は、教区の指数に、その教区の地域特性や京都からの距離等を勘案して算出されるようです。算出方法については、議会に諮られることではなく、内局の専決事項です。 因みに、仙台教区では、03年のご依頼から適応された算出基準が妥当性を大きく損なっているとして、その基準によるご依頼を拒否し、門徒戸数を根拠とする実状にあったご依頼額の算出のために全国門徒戸数調査を提唱して参りました。今回の門徒戸数調査は、我々をはじめ多くの人たちの要望に応えるかたちで実施されたものです。 ◎御遠忌に関する事項 1.御遠忌法要期間について すでにご承知かと思いますが、2011年の3月・4月・5月の19日から28日の3期30日間を法要期間とします。各期、初日・中日・結願法要を設け、それらの法要は伝統された次第で厳修されますが、それ以外の逮夜法要は、正信偈真四句目下・念讃淘五、晨朝・日中法要は、正信偈草四句目下・念讃淘三で同朋唱和による厳修が予定されています。なお、各期の26日の逮夜法要は、音楽法要として厳修するということです。御伝鈔は、各期22日に上巻が、25日に下巻が拝読されます。 法要時刻は、逮夜:午後2時、晨朝:午前7時、日中:午前10時。 なお、団体参拝は、逮夜法要と日中法要の座席指定によるイス席での参拝となります。晨朝法要については、座席の指定はありません。 2.団体参拝について 法要期間中の逮夜法要27座、日中法要27座、計54座が団参を受け入れます。 各座、3,100席(堂内2,020席、広縁1,080席 座席は抽選) 受け入れ総数 167,400人(3,100×54) 因みに、蓮師500回御遠忌の際は、99,900人(3,700×27 畳席のため堂内で3,700席が可能。27座の内訳は逮夜・第一日中・第二日中と三座の九昼夜) なお、一般参詣者席として、向拝側の欄干を撤去して、落ち縁と同じ高さに階段の両側に張り出し増床して自由席を設置。 各教区への割り振り(割当ではない)は、総数の50%にそれぞれ「蓮師500回御遠忌参拝者率」と「全国門戸数調査から得られた教区門徒指数」を掛けて算出。 なお、団参募集開始は、調整等の時間を必要としますので、09年7月からになりますが、もっと早くどうして出来なかったのかという不満の出るところかと思います。 蓮師御遠忌の反省から、参拝の到着・出発時刻に余裕をみようとしています。出発については、時刻の指定がなく、じっくりと参拝の後も展示物を観たり、買い物をしたりと時間を有効に遣えそうです。 3.「教区の日」について 3月29日から4月18日までと、4月29日から5月18日までの、法要期間の間の41日間を、讃仰期間とします。その間に実施される諸行事やイベントについては検討されているところですが、その一つに、我々も提唱していたのですが、直接参加型の御遠忌として、各教区が、課題やテーマを決めて、教区主催で本山を会場にして、全国に発信する場を「教区の日」として設定するというものです。 発信の方法としては、大会を主催したり、ステージ発表、あるいは展示発表等があるでしょうが、仙台教区として、または東北三教区として、如何なる行事が出来るか皆さんのお知恵をお貸し願えたらと思います。アイデアがありましたら、教務所まで是非ご連絡ください。 たとえば、東北の真宗、かくし念仏等をテーマとした研究発表と展示、あるいは、仙台拘置所を教区内に持つ教区として、死刑廃止を訴える大会を仙台教区が主催して御影堂で開催する等。 「教区の日」・団参については、7月の教区会・教区門徒会で設置されるであろう機関において検討されることになると思います。その機関では、御遠忌を期に仙台教区における同朋会運動50年以降を如何に展望するか、又そのために教区の教化体制をどのように見直すかということについても検討する部会が設置されるのではないかと思います。 なお、「教区の日」の企画書提出の締切は、09年2月となっていて、あまり時間的余裕がありません。 ◎坊守の規定について 今回の議会に望むに当たり、二つのことについて特に注視してその趨勢を見届けたいと思っていました。その一つが、坊守の規定についてであり、今ひとつが宗務審議会「真宗教化センターに関する委員会」の答申をどのように今後に繋げようとしているかということであります。 坊守の規定については、08年3月に宗務審議会「坊守の位置付けに関する委員会」答申が提出されていて、そこには大きな問題があるにも関わらず、内局・与党興法議員団は、その答申に沿って条例改正をはかろうとしていることは承知していましたので、現実的には否決することは無理でも、明確な提案理由を聞き出すという当然のことを果たそうと思っていました。 今回改正された条例は次の通りです。 寺院教会条例第20条 住職又は教会主管者の配偶者を坊守と称する。 2 住職又は教会主管者が欠けた場合であってもその配偶者であっ た者は新たに住職又は教会主管者就任するまでの間、坊守と称 する。 3 住職又は教会主管者に配偶者がいない場合であって、特に必要 があるときは、満二十歳以上の寺族の中から選定した者を坊守 と称することができる。 4 前任の坊守は、前坊守と称する。 第22条 坊守は、住職又は教会主管者とともに門徒の教化に携わる ため得度式を受けるものとし、教法を聞信し、門徒との 交流を緊密にして、寺院又は教会の興隆発展に努めなけれ ばならない。 (第21条は坊守籍簿に関するもので今回改正されていない) 目を通して頂いて、皆さんもいろいろと感じられたのではないかと思いますが、ここでは煩瑣になってもいけませんので、2点についてふれたいと思います。 一つは、坊守を住職の配偶者とする規定のもつ問題性です。 これは、坊守になろうとする人が、その人の意思によって、主体的に坊守の座に就くことを選び取るのではないということです。そうではなく、配偶者が住職に就いたというそのことで、その人の意思とは無関係に坊守になるということです。 このことについては、本山の女性室広報誌「あいあう」17号に、「坊守の資格有無が婚姻制度の上に成り立っている。つまり、坊守の処遇が夫である住職(当時男性坊守は認められていなかった)の進退により決定され、本人の意思に無関係であるという問題がある」と指摘している通りです。 この「あいあう」17号の発行責任者は、宗務総長熊谷宗恵氏です。そこに、配偶者とすることには問題があると指摘しているその熊谷氏が、今回の条例改正では、改めて配偶者と規定して提案しているわけです。 そこで、総括質問で、そこに自己矛盾はないのか。矛盾がないとおっしゃるなら、その道筋を明確に説明してもらいたいと質す。問いには返答せず、いままでの事情説明に終始し、配偶者とすることに問題があるか無いかを明確にすることなく、時間切れとなりました。 次に、坊守は得度式を受けるものとすると言う表現についてであります。これは、「ねばならない」という義務規定ではありませんが、限りなくそのニュアンスに近いものが含まれていると言えます。得度という極めて内発的な宗教的欲求によって受式されるべきものを、資格要件とすることは、得度そのものを著しく貶めるものと言えます。 その確認をすると、義務規定ではもちろんなく、受けても受けなくてもいいが、受けることが望ましいということだと答弁。それなら、「受けることが望ましい」とすべきで、紛らわしい表現を条文に用いることは控えるべきではないでしょうか。 ◎宗務審議会「真宗教化センターに関する委員会」答申 その扱いについて 07年2月に設置されました宗務審議会「真宗教化センターに関する委員会」は、本年5月、答申を提出しました。ご承知のように、宗務審議会は総長の諮問機関でありますので、言うまでもなく、その提出した答申をどのように活用するかは総長の判断にかかっています。 そこで、今議会では提出された答申に対しての総長の見解を確認しておく必要があります。 と言いますのも、この宗務審議会に諮られる前に、教化関連部長による「宗務総合企画検討会議」が、教研を中心にして、解放運動推進本部・青少幼年センター・女性室を統合する機関を「真宗教化センター」としてはどうかという報告を出しています。総長の構想もその報告に近かったように理解するからです。 審議会では、その報告は一資料として扱い、「真宗教化センター」を構想するからには、真宗同朋会運動を展開する上で、現在の教学・教化機構が抱える問題を克服し、今後の展開を期する上で欠かせない機能を有するものであるべきだという観点で調査検討を重ねました。 そのため、問題点抽出作業として教化担当部及び教務所を対象に、聞き取りあるいはアンケート調査を実施、つぎの4点を課題として確認しました。 @時代の苦悩に真向かうことの必要性 A宗務所における教化担当部門間の連携の必要性 B宗務所と教区の密なる連携の必要性 C蓄積されている膨大な資料の分析・整理・活用の必要性 これらの諸課題を克服するための機能をその業務とする「真宗教化センター」を提言しました。そこで、特に留意すべきこととして、教研は宗務行政とは一定の距離を置くべきであり、解放運動推進本部・青少幼年センターをはじめ個別の重要な課題を担っている部門間の連携においては、それぞれの部門の独自性の確保が重要であることを付言しました。 今回特にこの事についての当局の見解を確認したかったのであります。 ところで、総長は本会議での答弁で、「教研・解放運動推進本部・青少幼年センターを統合する教化センター構想をもっている(取意)」と、いままでの持論を展開されました。 一方、里尾参務は、「教研については将来にわたってその独立性を確保することが望ましい(取意)」と答弁。宗務審議会の答申が内局の施策を縛るものでないことは言うまでもないことですが、とは言え、それを無視されるにはその根拠をはっきりと聞かねばなりません。また、この答弁では、総長と参務の見解が異なり、明らかに内局不一致であります。 そこで、総括質問では、まず、総長に「真宗教化センターに関する委員会」答申に対する評価から尋ねることにしました。それに対して、「私の考えていた教化センターと答申とが必ずしも一つではなく、すぐに肯諾できないが尊重したい」と。その後やり取りがあり、独自性を確保しての連携が重要であるというのが答申の要点の一つであるが、それについてはどうかという問いに対して、総長は「委員会の意見を大事にしたい」と。それでは、本会議での答弁で「統合する」とおっしゃっていることと違うのではないかと再確認。それに対して、「本会議での答弁を訂正してもいい」と。後日、議長手元で処理されて、統合という表現が無くなり「各部の独自性を確保しつつ連携できる機構」と訂正されることになりました。 今議会で、教研の独立性の必要性と解放運動推進本部・青少幼年センターの独自性を保ったうえでの連携が達成できるような「真宗教化センター」についての当局の見解を確認できたことは、大きな成果といえます。 なお、達令により、「真宗教化センター設置に関する委員会」を設け、さらに一歩進めると言うことです。 ◎議員発議による条例案及び決議案 全ての有教師に無条件で宗議会議員の被選挙権を付与すべきであるとする「宗議会選挙条例の一部を改正する案」と、過疎にあえぐ地域の方々が何を宗門に願っておられるか、現場の声を聞き、的確な施策を講ずるための調査機関の設置を提起する「過疎地域現状調査委員会設置に関する条例案」を発議しましたが、ともに賛成少数で否決されました。与党の人たちは、野党からの発議ということだけで、反対しているのではないかとさえ思ってしまいます。 また、「靖国合祀取消訴訟を支援する決議案」と「中国政府のチベットへの宗教弾圧に抗議し、非暴力による対話の継続を求める声明に関する決議案」を、議員発議し、「中国政府の…」については、全会一致で採択。「靖国合祀取消…」は、宗議会・参議会両会で決議されました。 |