宗政報告No14(2005年6月28日)
予算については、一般会計は、経常部・臨時部あわせて、約85億円で、昨年度予算に対して、約4%の減額。それに伴い、全国への総御依頼額を0.5%減額することとしましたが、中越地震被災地への御依頼減額を全国で負担しあう事によって、ほぼ減額分がそれに相当し、昨年同額の御依頼がされる事になったようです。なお、今後とも、経常費御依頼の超過は、あまり望めないでしょうから、厳しい予算編成は当分続く事が予想されます。 以前にも、宗議会の仕組みについてふれましたが、改めて申しますと、本会議と委員会審議の大きく二つに分かれます。本会議では、議案の上程、代表質問・一般質問、そして採決等が行われます。上程された議案は、予算委員会・決算委員会、そして、条例関係は特別委員会に付託され、各々の委員会で審議されます。全国の門徒・僧侶から提出された請願は、請願委員会で本会議にかけるべきであるかどうかが審議されます。今議会には、26件という例年にない非常に多くの請願が出されました。その事は、あとでふれます。そのうち「広域災害に対応するためのボランテイア委員会の設立について」の請願が、本会議にかけられ、請願として採択されました。請願が採択されると、内局は、それに対して、どのように取り組んだかを報告しなければならなくなります。委員会としてはその他に、懲罰委員会があり、議員の非違行為などを審議します。この4年間、この委員会が開催された事はありません。 今回は、特別委員会に属し、内局提案の条例案11件、議員提案の条例案2件の審議をしました。13条例案のうち、「ご遠忌お待ち受け推進態勢確立のための条例」、「解放運動推進本部職制」そして、我々が発議した「宗議会議員選挙条例一部改正」について報告してみたいと思います。 さらに、今議会もっとも内外の関心と注目を集め、審議に多くの時間をかけた玉光前教学研究所所長解任問題と、共済制度について報告します。 ご遠忌に向けて 《組を教化の基軸に》 正式には「ご遠忌お待ち受け推進態勢確立のための関係条例の整備に関する条例」といい、組を教化活動の基軸とするための諸条例の整備をするためのものということです。 組を共同教化の場として活性化し、教化活動の中心的位置付けにしようとすることには、大いに賛同いたします。しかし、その事を実現する上で、次のような施策が有効であるかどうかについては、いささか疑問を持つものです。 《組同朋総会》 組会・組門徒会が組の議決機関であり、組教化委員会が教化事業の企画・立案・実働を担うことは今まで通りでありますが、新たに「組同朋総会」を設置するというものであります。 「組同朋総会」については、条例では、「組の運営に関わる住職・教会主管者、僧侶、坊守及び門徒会員等の意見を広く聴取する」とあります。これでは、組会・組門徒会の構成員より広い範囲の人たちの意見交換の場になるわけですから、そこで話された事が、組会・組門徒会よりも重くみられるという混乱は容易に想像できる事です。あるいは、「組同朋総会」を寄り合い談合の場として、組の運営に係る各般にわたる課題について意見聴取するとありますが、ただ聞き取るだけで、そこで話された事が具体的な施策にまでならないとするなら、参加者はしらけるだけでしょう。といって、「組同朋総会」で出された結論と、組会・組門徒会での議決が異なったとき、いよいよ混乱をきたすということも懸念されます。 また、「組同朋総会」の説明として、「組における教化推進の実働体制の基盤を確保する」と、組教化委員会が果たしてきた役割がそこに謳われていて、組教化委員会との役割分担も明確にしなければならないように思われます。 さらに、いままで実施されてきた組同朋会議と組同朋総会とは、どこがどう違うのか。あまり、その違いがはっきりしないと言う事もありますが、これからは組同朋会議ではなく、組同朋総会ということでいくということのようです。組同朋会議では何故ダメなのでしょうか。それも、はっきりしません。「組同朋総会」については、教区で、よくよく議論する余地がありそうです。 《組長・副組長の任務の明確化》 いまでも、組長の職務はかなりハードになってきています。そのうえ、さらにこの度提案されている事業を実施するとなると組長の職務の増大化は避けられないでしょう。その事に対しては、どのように対応しようとしているのかという問いに対して。副組長の任務を組長の職務を補佐すると条例で明確にし、組に必要により会計又は主事を置く事ができるとしたということ。従来、組長一人に集中していた職務を、副組長そして、会計・主事にも分散させることにより、組の円滑な運営をはかってもらいたいということのようです。 また、今回の条例では、組教化委員長は組長が当たるが、必要により組会員の中から選定されたものをこれに充てることができるとしています。 《七つの施策》 ご遠忌に向けての、中期教化研修計画として、次の七つの教化施策が提案されています。 @お待ち受け総上山 A帰敬式実践運動 B推進員養成講座 C親鸞聖人講座 D真宗子ども講座 E教化特別研修生制度 F同朋唱和推進事業 このうち特に組の教化事業として取り組む事を要請されるのが、C親鸞聖人講座ですが、これは、組内の住職・坊守・教師を対象にして、年間2回以上、テキスト「宗祖親鸞聖人」の「法語」を読む。なお、サブテキストとして真宗本廟育成員研修会の講義録を配布。 以上が概要ですが、全国419組が、各々独自の教化活動を展開しているなかで、サブテキストの講義録を輪読して研修会を実施しなさいと指示する事の持つ意味やねらいは何んでしょうか。研修内容まで、一々指示しないと研修会が持てないような状況であると、全国の組の現状を認識しているのでしょうか、あるいは、419組で、同じテーマで研修会を持つ事が何か、そこに大事な意味があるのでしょうか。ここは、教区の教化委員会が、仙台教区の8組にとって、組の教化活動をより活性化するには、この「親鸞聖人講座」が有効であるのかを含めて検討する必要があるように思われます。 《組交付金》 いままで、経常費御依頼の5%が、組交付金として、組の会計に入っていましたが、今年度からは、一旦教区会計に入れ、組の活動実績や実情によって応分の額を組に交付するというものです。 つまり、教区が交付金によって組を管理・査定するという仕組みを持ち込む事になります。果たして、そういう関係がのぞましいのでしょうか、。組は、それぞれの立地条件や歩みの違いにより、独自なあり方をしています。それを、画一的な事業を実施したかどうかで査定するという事自体、組の独自性・自主性を奪い、犯すことになりはしないかと危惧されます。このことも、教区として検討せねばならない事のように思われます。 女性室」を組織部所管から解放運動推進本部へ 今回、解放運動推進本部の職制を一部変更して、女性室を解推本部が所管することになりました。 昨年、部の統廃合があり、そこには明確な理念も方針もうかがえず、ただ部の看板を減らす事のみが目的であったとしか思えないなかで、ただ教務部が組織部と一つになることにより、女性室の業務が円滑に進むのではないかとひそかに期待をしていました。 つまり、女性室は、当面の目標として、宗門における男女平等参画基本法に当たるものを作り上げることをあげていました。それはまた、一般寺院においても、男女平等参画による運営が願われているわけですが、教務部は一般寺院とその構成員を担当する部署であるため、組織部と一つになる事によって、一般寺院での運営面の問題点がより整理され易くなると思われたからです。しかし、どうも期待はずれで、教務部と合併する事による利点を活かせないまま推移し、今回は、解推本部に移管されるという事になりました。 解推本部に移管するのは、「性差別問題を具体的な信心の課題として広く宗門内に受け止めて頂くため」であるとしていますが、女性室が課題としているのは単に性差別問題に止まらず、男女両性で形作る教団であり、この度の移管には納得できないものがあります。 移管にあっては、女性室のスタッフには、相談ではなく、伝達として、「所管が変わるだけで、今まで通り何も変わらない」ということが伝えられたと言うことのようです。これも驚く話で、所管が変わるのに、何も変わらないというのなら、何を所管していたのかと聞きたくなりますし、またそれでは、何故所管を変えるのかを聞きたくなるのはわたしだけでしょうか。 選挙制度について 《すべての有教師に被選挙権を》 宗議会議員選挙条例一部改正については、二つの条例案が上程されました。一つは、我々グループ恒沙が発議者となって議員提案したもので、「25歳以上のすべての有教師に被選挙資格を与える」というものです。この改正案は、賛成少数で否決されました。 《不服審査請求制度??》 今一つは、当局提案の改正案で、ここで記すべきことは「不服審査請求?」ができるようになったという当局説明についてであります。 相前後しますが、ご存知のように昨年の議会で被選挙資格が改正されまして、住職以外の教師にも被選挙資格を拡げるようになったのは大事な事なのですが、そこに、何のための拡大であるかという意図を全く否定することになるともいえる「住職の同意」という項目を入れた改正となったわけです。そんな同朋公議を真っ向から否定するような改正には賛成できず、今回も又、上記の改正案を提出したわけです。 そこでは、「不同意」の基準や根拠が全く開示されることなく、「不同意」となったものは立候補できないことになります。それに応えるためのものとして、「不服審査請求制度?」が提案されたのかと思いました。つまり「不同意」となった者が、その理由を住職に開示させ、それが「不同意」とするに適さわしいかどうかを審査するものであると。 しかし、条例では中央選挙管理会が、それを3日間でやるというのです。どうも、おかしいと、改めて内容を確認すると、「不服審査」とは、全く似て非なるもので、単なる書類審査、それも署名・捺印が整っているかどうかを確かめるものでしかないのです。そこでは、やはり、何故「不同意」なのかという理由の開示すら保証されていません。そのようなものを、「不服審査」などと詭弁を弄していいのでしょうか。 いま少し、その書類審査の中味の説明を加えますと、「不同意」の住職は、その事を証する書類を作り、責任役員・総代の署名・捺印を必要とするものとしたわけです。したがって、責役・総代の署名捺印が整っているときには、立候補できなくなりますし、不備がある場合には、立候補できるということです。 これは、「不同意」が、住職の専横専断となるという批判に応えたるものとして考えられたものでしょう。つまり、責役・総代の署名捺印が必要なのであるから、住職一人の専断ではないと。しかし、内実は、責役・総代が住職の専断を覆い隠し見えなくする役目や、住職の専横を追認する役割を果たす事に過ぎないことを見逃してはならないでしょう。この改正が、「同意」が宗憲違反であり欠陥条例であることを見えにくくし、不備な条例を固定化する方向にはたらくことを最も恐れるものであります。 《特命住職に同意権》 さらに、今年度の再度の改正でも残った問題として、特命住職のことがあります。事情があって特命住職を教務所長が兼任している寺院があります。その場合、行政官に、立法に関わろうとするものの適否を判断する権限が、この条例では付与されている事になります。これは、明かな欠陥と言わねばならないでしょう。 中越震災復興共済・支援について この度の中越震災で、改めて共済制度の問題点が浮き彫りにされました。 この度の震災で共済給付申請寺院が55ヶ寺あり、そのうちの19ヶ寺が再審請求、つまり査定内容に異議があると言う事です。申請寺院の35%の寺院が、これはちがうだろうと受け止めたということは、大きい事ではないでしょうか。この問題に対する、つまり再審請求の多さは異常ではないかという質問に対して、参務の答弁は、「異議を感じた寺院個々の問題であり、数の問題ではない」という認識を示します。 そこには、共済加入被災者と当局との間に大きなズレがあると言う事なのですが、たぶん再審請求によって、査定が変わる事はないのではないでしょうか。 自治体が出している被災証明では、同じレベルの被災状況の寺院同士でありながら、当局の査定では違いが出ているケースがいくつかあります。 そこにある不信感には、査定基準と査定方法が開示されず非公開にされている事と、専門家が現地に足を運んで査定をするシステムが確立されていない事によると思われます。この事が、放置されたままであるとすれば、共済加入者が今後、減少することが懸念されます。 ただ、この度の震災を機に「広域災害に対応するためのボランテイア委員会の設立についての請願」が議会で採択され、内局に送付されたことは大きいと言えます。 玉光教学研究所所長解任問題とは、何であったのか 今宗会は、ある意味で、「玉光宗会」と言ってもいいものでありました。この件については、先の冊子「世の祈りにこころ入れる宗政を」でも、ふれましたが、三月三十一日で、「後進に道を譲ってもらいたい」という理由で、玉光氏を解任し、後任に前大谷大学学長の小川氏を任命します。熊谷総長のなかでは、玉光氏より年上の前学長が玉光氏の後進(後輩)にあたるという認識のようであります。 玉光氏が解任されるようだという風聞が、三月上旬に流れ出した頃から、全国から25通、人数にして900名の人たちから、厳しい抗議や、この人事を思い直してほしいという要望、嘆願が寄せられました。また、今議会に対して、先にも触れましたように、26件の請願が提出され、そのうち20件がこの問題に関するものでした。その請願の内容としては、解任理由を開示せよ、この問題の糾明委員会を設置せよ等です。これほどの請願が出されることは、極めてまれです。 《予算委員会での特別審議》 本会議の代表質問・一般質問に先立ち、予算委員会(6月3日午後)において、特別審議の場が持たれました。そこでは、解任理由を明確にする、教研に対する方針が総長と玉光氏ではどう違うのか、免役処分は条例違反ではないか等が質問として出された。それに対して総長は、人事のことであるから、解任理由については言うわけにはいかない。また、3月30日に教研の所員と面談した時に、玉光氏とは、異なった方針を持っているわけではないと伝えたといい、教研に対する考え方に違いのないことを明かす。辞令は免役ではあるが、辞めることに玉光氏も合意をして、事実上は、依願免であると答弁。 (依願免:本人の希望で辞めること。 免役:いわゆる免職で、辞めさせること。免役にするには、宗務役員分限規定で定められた項目がある。今回の問題では、免役としながら宗務役員分限規定に則っていない事が問題となった) 《一般質問で手続きについて糺す》 今回、6月7日の午後に一般質問の機会がありました。質問内容については、後述します。そのなかで、免役にした条例上の手続きと、また、もし手続き上瑕疵があった場合、処分は撤回されることになるのか、あるいは、処分をした行政処置そのものが糾問されることになるのかを質問。それに対して、総長は法規総覧の「依願免職」の項目を読み上げられたので、その後を読んでいただきたい旨を再度要請。そこには、免役規定が記されているのですが、その要請には答えず、答弁が中断。議長が予定外の休憩を宣言し、議会が中断されました(こういう事はほとんど無い事)。再開後、当局は、「教研所長の任免権は宗務総長の専権事項であり、玉光氏からも合意を得ている」と、事情説明で質問をかわす。質問には、全く答えてはいず、再度追求してもよかったのですが、「任免権」という言質もとれ、同じ応答が予想されたので、それ以上の再質問は控えました。 《不信任案提出》 6月9日、無所属の木全議員が発議者となって、熊谷内局不信任決議案が提出されました。今回の解任問題で、全国から内局のもとに多数の人が抗議文・要望書・嘆願書・質問状が寄せられているのに内局は全く無視し続けたこと。さらに、条例を無視した独断専横の人事権の乱用で、宗門全体に宗政不信と混乱をもたらしたことは、不信任に相当するとして内局不信任決議案を提出。 翌日、上程されて、採決の結果。20:44で否決されました。20票の中味は、グループ恒沙11票、無所属8票、真和会1票。44票は、真宗興法議員団34票、真和会8票、無所属2票。欠席、真宗興法議員団1名。 ※無所属8名 今年3月、真宗興法議員団から分かれた人たちです。他の会派の事ですから、あまりコメントするのもどうかとおもいますが、この8名の人たちは、総長経験者2名、参務経験者4名と、真宗興法議員団の中枢、つまり大谷派の権力中枢にいた人たちです。その人たちが、かつて願った宗政を実現するために、真宗興法議員団と袂を分かったということなのでしょう。それほど、今の真宗興法議員団は、変質してしまったという事なのでしょうか。ただ、内部にい て、真宗興法議員団を変えようとしなかったのかという疑問は無いわけではあり ませんが。とはいえ、真宗興法議員団の宗政における横暴と弊害について、辟易としていることは言うに及びませんが。 《総括質問で罷免権について糺す》 6月13日午後に特別委員会の総括質問の時間があり、そこで改めて玉光問題を取り上げました。今回の問題は、玉光氏個人の問題だけではなく、宗務役員の身分の保証が十全になされているのかどうかを確認したいという事がありました。 一般質問で、総長には任免権があると説明していますので、その事を是非確かめたいということがあります。つまり、総長に宗務役員を罷免する権限があるのかどうかということです。 質疑応答では、罷免権があるというわけですが、罷免するには、宗務役員分限規定第2条・第3条に該当する場合にしか罷免できないということは認めるわけです。 少し煩瑣になりますが、本人が退職を願い出た時や、懲戒処分された場合を除くと、 1.心身の不調で職務を執行できない。 2.職制や規則の変更で宗務役員が過剰になった時。 3.勤務成績が甚だしく不良である場合(宗務役員分限規定第2条)には、罷免することはできますが、同時に、それ以外では、罷免する事が出来ないという事です。 条件に関係なく罷免したり、しなかったりする権能や自由が付与されているなら罷免権と言えるでしょうが、宗務役員分限規定第2条および第3条に該当する場合しか、罷免できないとすれば、これは決して罷免権とは言えません。上記条例に該当して罷免する場合も、これは総長の権限ではなく任務と言うべきでしょう。総長に罷免権という権限が付与されていない事は明白です。 今回の問題は、罷免権が与えられていないにも関わらず、罷免権を行使したところに問題の本質があります。つまり、総長は、玉光氏に後進に道を譲ってくれといい、教研の将来構想を話し、玉光氏も同意をしたから辞めてもらったといいます。だからこれは、事実上の依願免だと言うのが総長の主張です。しかし、分限規定によってしか罷免できないにも関わらず、分限規定には、「後進に道を譲るため」も、「将来構想のため」も、「本人の同意を得た場合」のどれも項目としてはありません。分限規定にない理由で罷免したという事は、本来付与されてもいない罷免権を行使したという事なのでしょう。 これは、手続き上のミスではなく、罷免に相当するに足る事由が無いにもかかわらず罷免したということであり、本来無い罷免権を行使した条例違反と言わざるを得ません。 残念ながら、いまの制度には内局が条例違反をしても、それを明らかにし、違反を糺す機関がありません。この度の問題で、内局の条例違反を糾明する機関の設置の必要性を感じましたし、総長には、罷免権など無い事を明確にしておかなくては、宗務役員は、門徒や宗門の方ではなく、いつも総長の方を向いて宗務を執行するようになってしまう危険性を払拭する事ができないでしょう。 今議会で採択した決議をここに紹介します。そして最後に一般質問の抄録を掲載します。
|