宗政報告No11(2004年6月11日)


                     
第43回宗議会報告
 


 5月27日(木)から6月8日(火)までの会期で、宗議会が開催されました。
 詳しいことは、後日報告したいと思いますが、取り急ぎ、二点の結果についてお知らせ致します。
 詳しい報告は、グループ恒沙の議会報告を以て、それに充てたいと思います。グループ恒沙では、今回の議会報告を全国の大谷派の寺院に配布したいと思っています。従って、ここに掲載できるのはだいぶ遅くなると思われます。
ご了承下さい。
 なお、お知らせしていました5月28日の、東西本願寺宗会議員有志による教育基本法「改正」反対宗教者集会は、関西のみならず、福島・神奈川や島根の方から、また教師や主婦の方々の多くの参加者があり、盛会裡のうちに有意義な集会を持つことが出来ました。これを機縁として、今後とも本願寺派の議員諸氏と連帯していきたいと思っています。
 当日の集会のもようを宗教誌「中外日報」が、6月5日版に取り上げています。

       中外日報6月5日付け記事

       仏教タイムス6月10日・オピニオン欄掲載





◆ 教育基本法「改正」反対決議 宗議会で採択される 

 愛国心の育成と差別と選別を必然とするエリート教育を内容とする教育基本法「改正」に対して、宗門として明確な反対表明となる宗議会決議を採択しました。
 このうえは、宗門人一人ひとりが、この決議を単なる内部確認に終わらせない為に、何が出来るかということが、問われています。



教育基本法「改正」に反対する決議

 2003年3月20日、中央教育審議会は「21世紀を切り拓く心豊かでたくましい日本人の育成を目指す観点から」「教育基本法を改正する必要がある」とする答申を文部科学大臣に提出しました。
 同答申では、「国民の間での自信の喪失とモラルの低下、青少年の凶悪犯罪やいじめ・不登校・中途退学・学級崩壊など」を、学校教育に起因するものなのか、社会に起因するものなのかを十分に見極めることもなく、短絡的に現行教育基本法の問題と決めつけ、子どもの心や家庭への国家の過剰な介入を促進・容認する教育基本法「改正」を、強引に導き出しています。その内容は、「日本の伝統・文化の尊重」の名のもとに、「愛国心の育成」「復古的な道徳教育の強化」や「国家への奉仕・献身」の重要性を強調するとともに、もう一方で、能力主義・競争主義・強者の論理による教育再編を促すものであります。 
 2000万人を超える犠牲者を出したアジア太平洋戦争の惨禍への深い反省に立ち、私たちは、「国民主権」「平和主義」「基本的人権の尊重」を3大原則とする日本国憲法を手に入れました。相前後して制定された教育基本法は、その前文で、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し、民主的で文化的な国家を建設して、世界の平和と人類の福祉に貢献しようとする決意を示した。この理想の実現は、根本において教育の力にまつべきものである」と述べ、「個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期」し、「普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育を普及徹底」することで、日本国憲法の理想の具現化を図ろうと制定されたものであります。
 にもかかわらず近年の動きは、国歌・国旗法が制定され、国家主義に立った著しく歪んだ歴史観を持つ教科書を検定合格とし、新学習指導要領・小6社会学習目標に「国を愛する心の育成」を掲げる等、教育現場への国家の過剰介入が加速度的に進んでいます。これら一連の動きは、憲法「改正」のためなされているものと言わざるを得ません。
 教育とは、一人ひとりの人間の自己形成を促進し支援する営みであり、国家が特定の人間像を押し付け、その形成を図るといったものであってはなりません。まして、子どもたちは国家のために存在するものでは決してありません。
 私たち真宗大谷派は、過去において、仏教者としての本分を忘れ、宗祖親鸞聖人の仰せになきことを仰せとし、無批判に国策に積極的に協力した自らの戦争責任を深く懺悔して、1995年、宗議会において「不戦決議」を採択して「惨事を未然に防止する努力を惜しまないこと」を誓いました。
 平和憲法「改正」の道を開き、国際紛争を解決する手段として戦争をも辞さない国を支える人づくりを目指すとともに、強者の論理に立つ能力主義で人間を分断することを推し進めようとする教育基本法「改正」に、私たちは真宗仏教者として断固反対することを、ここに決議するものであります。
   2004年6月8日
                                    真宗大谷派 宗議会      


 ◆ 宗議会議員被選挙資格、住職の同意が必要で可決
                             どう考えてもおかしい
 

 前回の宗政報告No10でお伝えしましたように、宗議会議員選挙被選挙資格について、我々グループ恒沙は、25歳以上の全ての教師は資格を有するということに対して、与党真宗興法議員団は、教師であって住職の認定を得た者とするとしていましたが、この度、提出されました真宗興法議員団の改正案は、次の通りです。

*宗議会議員選挙条例
  第二条 選挙資格を有する年齢25歳以上の者であって、次の各号の一に
       該当する者は被選挙資格を有する。
     1 住職及び教会主管者
     2 自らが所属する寺院又は教会の住職又は教会主管者若しくはそれ
       らの代務者の同意を得た教師

 
 しかし、ここには随分多くの問題点があります。
 たとえば、住職の恣意によって同意を得られなかった教師を救済する方法が全く考慮されていません。あるいは、代務者についてだけふれても、同じ教区で兼務代務者をしている住職が立候補を考えていて、兼務代務者を務めている寺院に所属する教師にフランクに同意できるでしょうか。また、他の教区で、兼務代務者を務めている教師は、その教区で被選挙資格がないにもかかわらず同意を与えるという矛盾もあります。
さらに、特命住職は、教務所長が多く務めますが、その教区の行政の責任者が、同意を云々することの問題性等々。
この他にも、多くの問題点がありますが、ここではふれません。
 数多の矛盾・問題がありながら、真宗興法議員団は、数を頼んで上記条例案を通しました。いま、一番困惑しているのは、こんな不十分な改正案を通してしまった真宗興法議員団の執行部かもしれません。
 今回は、この二点についてだけ、ご報告させて頂きます。