宗政報告No.38(2018年7月10日)


第66回 宗 議 会 報 告




 【 内 局 不 信 任 決 議 案 提 出  】

 問題が表面化したのは、昨年10月の臨時宗議会において、財産処分の承諾を求める件が上程されたことに始まります。この件については、すでに参与会・常務会(宗会閉会中に議決権を有する機関)で可決承認されているという当局の説明ですが、その手続きに大きな疑義があるということで採決にあっては棄権をしました。その後、宗政調査会(議員相互の調査研究する場)に於いて、疑義の確認をしましたが、当局は明確な説明を果たすこともないまま議会に臨んだものですから、今議会は、そのことを糺すことが焦点の一つになりました。


問題の所在

 事はこういうことです。2009年、宗派は、川崎市の解散する三門徒派の寺院を買い取り、その寺院を首都圏における大谷派の開教拠点の一つとして設立しようとします。これは、その寺院を大谷派の宗教法人として設立するにあたって、宗派における手続きに大きな疑義があるという問題であります。宗教法人として設立するに当たっては、大谷派の土地・建物を当該寺院に寄付するという宗派の財産を処分すること無しには不可能です。

財産処分にあたっての宗派においての手続きは、財産管理審議会に諮り、そのうえで、参与会・常務会において議決されることが必要であります。

しかし、参与会・常務会にかけたのは、宗教法人設立認証がなされ、その後、当該寺院に於いて設立奉告法要が勤修された4ケ月後になります。これは明らかに法規違反であり、議会無視だと言わざるを得ません。

 

経緯説明

 宗派は、寺院取得の経費6500万円あまりを、当該寺院での法務活動により回収できた時点で、土地・建物を当該寺院に寄付し、大谷派の宗教法人として設立することを目指します。

 そして、資金回収には至っていない時点で、監督官庁であります神奈川県庁の指示と思われますが、宗派と当該寺院との間で2014年3月、覚書(資料―1)を交わしています。そこには、当該寺院が宗教法人格を取得した時、土地・建物の所有権移転登記手続を行うとあります。

 また、当該寺院が神奈川県庁に対して宗教法人設立認証を申請する際には、その土地・建物が当該寺院の基本財産であることを証明する「宗教団体であることの証明書」を宗務総長の名で2016年10月18日に交付しています。

そして、この覚書と証明書が法人認証の決め手となり、(つまり、土地・建物という基本財産を所有しない団体には法人格は与えられないということがある)2016年12月2日には、神奈川県知事が宗教法人設立を認証し、12月5日に、宗教法人の設立登記を済ませています。そして、12月18日には宗教法人設立奉告法要が勤修されました。

覚書があり、知事が認証したという事実から、土地・建物の所有権は、2016年12月5日に、当該寺院に移転していると見るのが妥当でしょう。つまり、これは、財産管理審議会に諮ることなく、参与会・常務会の議決なしに当局の一存で宗派の財産を処分したということです。

そして、すべてが完了した翌年、3月27日に財産管理審議会を、そして、4月24日に参与会・常務会を開催して財産処分の議決を得ています。果たして、すべてが完了してからの、この議決は如何なる意味を持つものなのでしょうか。

 

当局の答弁

○議会の議決を経ないで、何の権限があって、土地・建物を寄付する、あるいは、その土地・建物が当該寺院の所有であるという証明が出来たのか。

答弁:内局の宗務執行責任として行った。宗憲44条、「宗務執行の権限は内局に属する」に基づいての執行。

     (財産処分に関しては踏み行うべき手続きが決められていて、財産処分は宗務執行権の範囲を大きく越えるものであります)

○覚書には、宗教法人登記がなった時に所有権移転手続きを行うとあるが。

答弁:所有移転登記の手続きを行うことをいうのは、宗派内の手続きを行うというもので、それから財産管理審議会を開き、参与会・常務会を開催し、財産処分の公告を行い、不動産登記をした。

  (覚書をどのように読めば、このような詭弁が成り立つのでしょうか)

このほかにも言い逃れ、強弁と思われる答弁は多くあったが、煩瑣になるので省略します。

 

議会と宗務行政との緊張関係のなさ

 何故、この度のような問題が起こるのでしょうか。その主要因は、議会と宗務行政との間に緊張関係が確保されていないためであります。先ほどは議会無視といいましたが、宗務行政が議会を自分たちのやりたいことを追認する機関としか考えていないからです。この度も、神奈川県庁への一切の手続きが済み、宗教法人設立奉告法要まで勤修してから、議会の議決を得ようとしましたが、もし万一、そこで否決でもされれば、多くの所に多大なる迷惑をかけるでは済まされないことになります。しかし、内局は、否決されることなど微塵も考えていないからこそ、すべてが終わってから議会にかけることが出来たのでしょう。

そして、宗議会もまた、当局提案の議案を否決するなどとんでもないことだと言わんばかりに、問題があっても修正もしない(主な施策の2の②)で可決していきます。宗議会が当局提案の議案を否決しないのですから、わが宗議会は、議決機関というより、承認機関、あるいは議案通過機関であると言った方が実状を言い当てているかもしれません。これでは、議会は経費とエネルギーの無駄遣いの場でしかないとさえ思えます。

このような中で、いかにすれば、宗議会と当局との間に緊張関係を生み出す事が出来るのか、知恵が無く、力もないため、全く道筋が見えません。諸兄、諸姉のお知恵を拝借いたしたいところであります。

 

内局不信任決議案提出

 議会無視という宗務行政手法を取ったのではないかという疑義がある中で、質問に対して明確な説明責任を果たそうとしないだけではなく、財産処分を約束したのは、「宗務執行の権限は内局に属する」という宗憲44条をあげ、内局に付与されている宗務執行の責任として行ったものであると強弁をします。この答弁は、居直りとも取れますが、単なる居直りと見過ごせるものではなく、恣意的に宗務執行の権限を拡大解釈するものであり、宗門法規を無視するものであります。宗門法規を遵守しない内局にわが宗門の宗務を任せることができず、議長に内局不信任決議案を5月31日、提出しました。提出にあたり、賛成討論(資料ー2)を行いました。採決は、与党と無所属が反対し、賛成はわれわれ10名で、賛成少数で否決されました。


【 主 な 施 策 に つ い て 】

 

宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要

 宗務審議会「宗祖親鸞聖人御誕生850年・立教開宗800年慶讃法要基本計画に関する委員会」が、今年3月に答申書を提出しました。当局としては、この答申書をふまえて、計画概要を作成して、18年度中に、それをもって慶讃法要の趣旨の伝達と慶讃法要に対する意見聴取をするために、全教区に内局巡回をし、そのうえで、総計画案を策定し、来年の議会に提出することを考えているようです。

 宗務審議会の答申には、多くの大事な指摘がなされていますが、この度お迎えする慶讃法要に願うことは一つであります。寺離れ、宗門離れと言われる宗教意識の激変のなかで、大きな法要を勤めることで、宗門に対する帰属意識を喚起し、宗門人であることを確かめ合うことはあまり望めません。寺離れ、宗門離れとは、檀家制度の上に乗っかった既存の門徒が離れていくことになかなか歯止めが掛けられないということです。それは同時に、新しい門徒をどのように獲得していくかということを本気で考えることが要請されているときでもあると受け取るべきではないでしょうか。そのためには、特効薬などないのでしょう。地道に教えを発信し続けることしかありません。その端緒として、この慶讃法要は大きな機会ではないでしょうか。親鸞の名と念仏の教えを社会に発信し、手渡すチャンスとして、この慶讃法要を位置付けるべきだと思われます。

 その一例として、宗門人と社会で活躍する著名人との対談を多く企画する。著名人には、宗教者、哲学者、作家、ジャーナリストあるいは芸能人やタレントも良いでしょう。その人たちの持っている知名度で本を手にしてもらう。テーマは、「いま、宗教は人類のたすけとなりうるか」あるいは、「宗教は人生の力となりうるか」等の宗教を問題とする形で念仏の教えを社会に発信するというものです。寺離れ、宗門離れはあっても、自身を問い、この人生と社会を問うという宗教的関心は人間である限りなくなるものではないと思われます。宗教的関心に訴えるテーマ設定が大事であります。そこで宗門人が親鸞聖人の教え、念仏の教えを分かり易く表現して伝える。それを、大手出版社から出すのと同時に、真宗ドットインフォに掲載する。これは、ほんの一例ですが、教えの発信と親鸞の名を社会に手渡すことを中心課題と位置付けるような慶讃法要を期待したいものです。

 

宗務役員の労務環境の改善について

 昨年、同朋会館の常勤補導職の時間外手当未払い問題を通して、宗派における宗務役員の労務環境が問題となりました。

 その労務環境の改善を目指しての条例改正や時間外手当の明確化等が計られました。そのことに関連して、職務の内容を定める宗務職制の改正もなされました。

1、これまで、関係学校の教職員をみなし宗務役員と称し、教区駐在教導・青少幼年指導主任及び別院の輪番・会計・書記を準宗務役員としてきました。今回の改正で、教区駐在教導・青少幼年指導主任は宗務役員に、法人が別になる学校の教職員、及び別院の輪番・会計・書記を準宗務役員とすることになりました。

なお、解推・教研・青少幼年センター・親鸞仏教センターの研究員や専門職員、常勤補導、大谷専修学院(別法人ではありません)の教職員等をすべて宗務役員としました。

2、さて、教区駐在教導と青少幼年指導主任を宗務役員として位置付け直すにあたって、宗務職制の改正を行ったのですが、その32条の改正案は、

「地方における青少幼年教化の推進をはかるため、教務所に教区青少幼年指導主任を置く。」というものです。

しかし、この表現では、30の教務所に指導主任を配置することになります。当局に確認すると、北海道と高田にすでに配置されている以上のことを考えているわけではないということ。そうであるなら、ここは、「置く」ではなく、「置くことができる」とすべきところでありましょう。

さらには、教区青少幼年指導主任については、「教区青少幼年教化推進本部規定」なる達令があり、そこでは、教区青少幼年指導主任は、教務所に置くのではなく、教区青少幼年教化推進本部に置くことが規定されていて、その達令とも齟齬することになります。

これらの点を指摘して、修正を要求しましたが、その修正には応じず、特別委員会を賛成多数で通過して、本会議で可決されました。

問題を孕んでいると思いながら、修正にも応じない当局と、その原案を唯々諾々と可決して通していく大谷派宗議会とは何か、と問わずにはおれません。この条例は、この7月1日施行ですから、教務所長は、早速、青少幼年指導主任を総長に申し出て任命してもらわねばならいことになるのでしょう、条例を遵守するなら。

3、時間外手当の明確化を次のようにしようとしています。

事務職については、出退勤時間を明確にし、時間外手当を支給する。解放運動推進本部や教学研究所、親鸞仏教センター等の研究職・専門職については、裁量労働時間制、つまり出退勤の時間を問わず、業務に従事する制度を適用するようです。常勤補導・式務員については、月別変形労働時間制を導入するというものです。これは、主任が、170時間/月、あるいは160時間/月とかのシフトを組み、それ以上の時間については、超過勤務手当を支給するというもの。

また、教区駐在教導については、9時から17時の勤務時間とし、それを超える場合には、時間外手当を支給するという。

なお、教務所員については、20時間/月までは、宗務所支給であるが、それを超える場合には、その時間外手当は教区負担であるというのですが、教区で負担する場合があるにもかかわらず、教区会・教区門徒会の承認もなしに勝手に決めるというのも、如何なものかと思われます。

 

組制の条例一部改正

 組のあり方、位置付けが条例の上に明確にされました。これは、今回新しく改正されたということではなく、明確化がはかられたということです。それは、組が宗務執行機関の最前線であること、そして組長は宗務執行官であるということです。

 ただ、組長を宗務執行官として明確にするなら、手当についても配慮が必要と思われますが、いかが思われますか。また、宗務執行官が立法を担う教区会の構成員であることの矛盾がより明確にされたということでもあり、教区会のあり方を見直すことがいよいよ求められるところであります。

 
組制 第1条

 組は、 ―中略― 寺院・教会その他の所属団体により構成される地方宗務機関であって、―後略

第3条

 組長は、教務所長の監督を受け、教学振興及び教化推進をはかり、組を統括代表し、宗門法規によって組の宗務を行う。

 


  聖経編纂室

 慶讃法要の記念事業として、常設の「聖教編纂室」を設置しようとするものです。私たちが依るべき諸聖教の編纂刊行はもとより、教学研鑽、教化活動に資する学習テキストや教師養成、学校テキスト等々の刊行を業務とするというものです。

 喫緊の課題としては、「真宗聖典」の改訂版を2023年の慶讃法要にむけて刊行することを目指すということです。

 

経常費ご依頼 5000万円減額

 慶讃法要の懇志金による特別募財の46億4千万円という数字が独り歩きしています。総計画が未だ策定されることもなく、何をどのように実施しようとするのかが定まっていない段階で予算が独り歩きするのも解せません。
とはいえ、それに近い金額が19年度から22年度に亘って募財されるのでしょう。

当局は、特別募財が始まることに対して、「厳しい寺院運営の現状を踏まえ寺院・門徒の負担を考慮して、18年度から22年度までの間、地方御依頼額を5000万円減額する」という措置を取りました。それに対して、参議会の代表質問では「この20年間、募財に次ぐ募財で現実は大変厳しい。宗門が使命を全うするために不可欠な施策とは何か。」5000万円の減額に対して「やるべきことはやるという強い意志があるなら、我々門徒は負担とは思わない。これでは、5000万円がなくても宗門運営に支障はないことを自認していることにつながる」と指摘しています。

5000万円は、募財目標額の率にして1%です。これは、1万円集めますが、とりあえず100円おまけしましょうというようななんとも姑息な児戯に等しい施策ではないでしょうか。これが、寺院・門徒のことを十分考慮しての施策なのでしょうか。

 


【 保養事業について 】

 これまで、全国の教区や組の教化委員会で、あるいは様々な団体の方々が、福島やその周辺の子供たちを保養事業で温かく迎え入れ、宗門もまた多くの支援をしてきたことは、とても大切で有意義なことであり有り難いことと受け止めています。

ところが、今年2月の同朋新聞に、保養は風評被害を招くだけとの声もあり、これまで実施してきた保養が、誰かを傷つける「善人の闇」ではないかという記事が掲載されました。

 確かに、論理的には、保養に行く、それは保養に行かねばならないほど福島はまだ危険だからというメッセージを社会に送ることとなり、福島は危ないという風評被害を助長することになるということなのでしょう。

ところで大阪教区では寺院へのホームステイという形式での保養受け入れを展開していますが、受け容れ寺院のある友人は、福島の農家からコメを取り寄せています。勿論、支援という意味もありますが美味しいからというのが第一の理由だそうです。そこでは、保養に来るから危険という構図は見られません。あるいは、保養については、それほど多くの人が知っているとも思えませんが、福島から保養に来る人がいることを知ることは、福島が今も危険な地であるということより、7年経って、いまなお、不安やストレスの中に居る人々の存在についてではないでしょうか。

また、たとえば、福島県の現況が情報としてほとんど社会に流されることもない中で、保養事業ということが突出するなら風評被害を助長するということもあるでしょうが、福島県産の農産物や水産物についての情報は、公開され多くが放射性物質の値が非検出という中では、その心配もあまり現実的ではないように思われますがどうでしょう。

国や福島県は、事故は7年前のことで除染も進み、今は安全・安心なんだからと、多くのところで避難指示解除も進めています。しかし、今なお不安を抱えながら子育てをしている親がおられることを見過ごしてはなりません。そして、その人たちはごく少数派であり、周りからは理解が得られず孤立しがちであります。保養事業はその人たちにとって、掛け替えのない自己確認をする場として働いていると思われます。

前述の記事は、あたかも保養事業が「善人」の行為のような指摘ですが、保養事業に関わって下さっている方は、善行のつもりでやっている人はあまりおられないのではないでしょうか。力なく弱き人たちの傍に居たいということだけではないでしょうか。そして何かをしてあげるということではなく、その人たちのもつ輝きや確かさに、逆に勇気づけられたり元気をもらったりすることが続いている要因ではないかと思われます。保養を必要とする人がいる限り、続けていただきたいものです。



【「是栴陀羅」問題 】

 

難波別院差別事件を通して宗門が部落解放同盟から第1回糾弾を受けたのが、1969年8月ですから、それからほぼ半世紀がたちます。厳しい糾弾を縁として宗門では差別や人権に対する学びが始まりました。50年近い歩みを重ねてはいますが、どれ程の深まりと気付きがあったでしょうか。そのような私たちに改めての問題提起がこの度の「是栴陀羅」問題ではないでしょうか。観経序文の「是栴陀羅」という経言が問題となって久しくなります。栴陀羅という語が、カースト制のカーストの外に位置づけられたチャンダーラを表わす語であり、被差別者を指す差別語であるからです。

この度、改めて部落解放同盟広島県連からこの問題に対する提起を受けました。それは、観経・和讃(是栴陀羅を含む)が読まれることに「痛みを感じる」という門徒の声がある現状を重く受け止め、如来教化の場としての仏事のあり方を再検討し、宗祖のおこころにかなう真宗の仏事として回復していかなければならないこととして、教化の現場に立つ我々が問われているものであります。

教区では、このことをテーマとして研修会を実施していますが、各組においても学びの場の必要性が思われます。

なお、「是栴陀羅」以外にも、正依の聖教における差別性を含む表現が指摘されています。

「御文」についていえば、差別性が認められる表現の整理が「女性室」を中心に図られ、しんらん交流館では、それを基に「御文」を選んで拝読されています。まだまだ、緒に就いたばかりではありますが、避けて通れない課題であります。

 

 

資料-1】 (閲覧による)

覚  書

下記不動産について、宗教法人真宗大谷派(以下甲という)と宗教団体○○寺(以下乙という)は、乙の宗教法人格取得時に下記のとおり取り扱うものとし、ここに覚書を取り交わす。

 

不動産 当該土地・建物

所有権の移転期日について

甲が支出した開教拠点設立資金65.648.050円の全額を乙が甲に償還し、かつ、宗教法人格を取得した時、上記不動産について、甲名義から乙名義への所有権移転登記手続を行うものとする。

 

上記内容を証するため、本書面を2通作成し、甲乙署名捺印の上、各々1通を所持する。

  2014年3月18日 宗教法人 真宗大谷派代表役員      ㊞

             宗教団体 ○○寺代表役員        ㊞

 

(なお、償還という語は事実を言い当てるものでは無く、宗派が全額を回収した時を指します)

 

【資料-2】  内局不信任決議案賛成討論 2018年5月31日

内局不信任決議案に賛成する立場で意見を述べます。我が大谷派議会は、念仏の教えを一人でも多くの人に伝え拡める機縁を、ご門徒の浄財を使ってどう開いていくのかということを審議する場であると思います。そしてその念仏の教えとは、弱くて、愚かで、間違いを犯すこの私が、強くなくても、賢くなくても、そして過ちをおかす可能性がある中で、そのまま生きて行く私をいただく教えだと了解しています。

間違いを否定しているのではないのです。間違いを認められないことが受け入れられないのです。何を守ろうとしているのですか。見栄ですか、体裁ですか、立場ですか。我々の教えでは、間違ったら間違ったと認めればいいんでしょう。

「覚書」の中身は、ご覧になった方もおられるかと思いますが、宗教法人格を取得した時は、不動産の所有権移転手続きを行うものとする。2014年3月18日、真宗大谷派代表役員、公印。○○寺代表役員、㊞。

これは○○寺との間で個人的な形での「覚書」を交わしたものではありません。これは、今までも認めているように、神奈川県庁の要請によって神奈川県庁の審査資料として要請されて作ったものです。つまり、役所ではありませんから、公文書とは申さんのでしょうが、代表役員の名前と公印があるのですから、これは大谷派としての公式文書です。公式文書で 神奈川県庁に対して約束をした。中身は、不動産の所有権移転手続きを行う。財産処分以外の何ものでもないのでしょう。財産処分そのものです。今までの内局答弁は、28日の渡邊議員の質問に対して、担当参務は、「覚書」というのは財産処分には該当しない、とお答えになっていました。それは一つの立場であったんでしょう。そして2017年8月8日の登記が財産処分の時点だ、という形でのご主張でありました。その全体、つまり「覚書」から8月8日までのその全体が、2009年か2010年かちょっと記憶が曖昧ですけど、2009年にしておきましょう。2009年にその全体の枠組みを作った、その宗務執行の中身が「覚書」から8月8日までだった、という形での主張でした。

が、今日、総長が改めて答弁に立っていただき、ご苦労をおかけしましたが、そこで総長がご答弁されたことは、驚かなかったですか、今までと全く違う主張です。つまり今までは、その全体が行政執行権の中身だったのですが、今日のご答弁は、私の質問状を改めて紹介いただいて、今申したように、その「覚書」が、今改めていいますと、あの「覚書」、それと「証明書」でありますが、今は「覚書」だけでいいです。「覚書」を議決、参与会・常務会の議決なしに取り交わした根拠を示してください、ということに対して総長は、どうおっしゃったか。つまり、財産処分を行う根拠は何か。それに対して、2009年の議決によって内局に付託された宗務執行権が根拠だ、とおっしゃいました。どこにそんなもの、つまり財産処分をするのが宗務執行権の範囲だなんてことが、どこに書いてあるんや。これを認めたとすれば、認めたとすればですよ、拡大解釈をして、議会で、この議案について付託されてんだから、財産処分はできる、という道を開くことになります。つまり今日の総長答弁は、とんでもない答弁です。危険極まりない答弁です。議会の議決なしに財産処分が内局にゆだねられるという答弁を今日なさった。こんなことを本当に認めていいのか、議会が。その前にまず、今回の一連のことが議会を無視するような形、置き去りにするような形で決められたことについて、議会人として与党も野党もない。大谷派宗議会議員として、本当にどう考えるのだろう、議会の在り方を。そうゆうことで言えば、今回の問題は大きな提起をしてくれたことが一つと、とんでもない禍根を残すような答弁が議事録に残ってしまったこと。あの議事録をそのままにしておいていいのか。つまりこれから、そんな人は出てこないでしょうけれども、もし万一、恣意に、大谷派の財産を何とかしたいというような人が内局を握った時、その根拠に、つまり財産処分を内局はできるのだという根拠の一つに、今日の総長答弁が利用されてしまう危険性が全くないとは言えない。そのような危険なお考えをお持ちの内局に、このままずっと宗務をご担当いただくというわけにはいかない。その点から、内局不信任案に賛成する、そうゆうことを申しあげたいと思います。どうもありがとうございました。  

     (原稿のないところでの演説のため、読みやすくするため一部加筆)