宗政報告No.37(2017年6月25日)
第64回 宗 議 会 報 告
6月15日、言論の府であるべき参議院が自らの存在意味を正面から否定する手法で共謀罪法案を成立させました。それに先立つこと、5月18日には、宗務総長の名で、共謀罪の反対声明を出し、今議会では、同様の趣旨の決議を宗議会が全会一致で、参議会が賛成多数で採択いたしました。 第2次安倍政権になってから、多数与党を背景に、自分たちの政権運営がやり易いように、そして彼らの野望を実現するべく、特定秘密保護法をつくり、武器輸出三原則を骨抜きにし、教育委員会制度や検定制度を改め、憲法を空洞化させる安全保障法制を強行可決し、そしていま共謀罪を成立させました。そしてその先には、憲法改正をめざしての動きを速めています。 これまでにやってきた事、そしてこれからやろうとしている事をみれば、安倍政権がどのような国を目指しているのかは、明白です。それは、国民には情報を与えず自分たちで独占し、国民を監視、管理し、あるいは互いに監視し合わせ、政府に反対する運動や団体を抑え込み、自分たちに従順な人たちを作りだし、アメリカと一緒になって世界のどこにでも出かけて戦争のする国にしようとしているとしか思えません。 それは、一人を尊重し、共に輝くことの出来る同朋社会をめざす私たちとは、全く相容れない社会であり、国の形です。そうであるからこそ、念仏の教えを一人でも多くの人にお伝えし、目指すべき同朋社会をこの世に開けるような歩みが、いま、求められているのではないでしょうか。
慶讃法要準備本部設置
いま宗務所は、2023年にお迎えする「宗祖親鸞聖人ご誕生八百五十年・立教開宗八百年慶讃法要」に向けて、その準備を本格的にし始めています。 すでに、宗務審議会「慶讃法要基本計画に関する委員会」が立ちあげられ、第1回の委員会が5月に開催され、来年3月までに答申を提出することが求められています。20名のメンバーで、そのうち仙台教区からは、仙台組の白木沢琴さんと、浜組の小丸洋子さんのお2人が委員として選出されています。この審議会は、慶讃法要の基本理念を明確にすることですが、それは、この法要がいまを生きる人々に浄土真宗が開顕された意義を伝え、共有できるような機縁となることを明確にすることであるといえるでしょう。皆さんも、どのようなご法要にすればいいか、ご意見やご要望がありましたら、お2人にお伝えになるといいかと思います。宗務審議会での意見等は企画や実施計画に結構反映されることが多いものですから。
そして、2018年9月には、総計画案をもって内局巡回をして、全国のご門徒の意見聴取をしたいということです。 2.寺 院 活 性 化 支 援 室 一昨年、活動を開始した教化センターは、その中心業務とする一つが、寺院・組そして教区という教化の現場をサポートすることであります。そして、その支援は、どこまでも寺院・組・教区が必要としていることに応えるというものでなくてはならないという確認はされてきました。現場のニーズがないところで、宗務所で、こういうサポートを展開しようとしても、ニーズと合わなければ、大きなお世話になることさえあるからです。 今回、教化センターに「寺院活性化支援室」を設置いたしました。 その支援内容としては、大きく3部門に分かれています。一つは、寺院運営活性化支援、 二つには、過疎・過密地域寺院支援、そして青少幼年教化支援であります。 過疎・過密地域寺院支援及び青少幼年教化支援につきましては、具体的な活動内容については今後検討が加えられるということです。 寺院運営活性化支援として、17年度は、久留米教区、三条教区、横浜・広島両別院近辺の寺院を対象に、これらの4ケ所で「元気なお寺づくり講座」を展開するというものです。 「元気なお寺づくり講座」というのは、一般社団法人「お寺の未来」が展開する事業に指導を受けながら、経営学の知識や手法などを用いて、社会環境の変化や近隣地域の様子などお寺を取り巻く外部環境を客観的に分析しつつ寺院の運営を改めて見直し、お寺が持つ組織や人の繋がりなどの眼には見えない強みや地域の特性を活かしながら、寺院とご門徒が互いに元気になっていくような「お寺の在り方(寺業計画)」を作成することを主たる内容としているようです。 たしかに、寺檀関係を崩壊させるような社会状況の激変や寺離れという宗教意識の変化に曝される中で、寺院を経営していくことの困難さが大きな課題としてあります。それはまた、喫緊の問題であるだけに、なおざりには出来ませんが、そうであるからと寺院経営ばかりが重要視されるようでは、大事なことを失ってしまう危険性を感じます。寺院の活性化というとき、蓮如上人が「御一代記聞書き」で示されている、「一宗の繁昌と申すは、人の多くあつまり、威の大なる事にてはなく候う。一人なりとも、人の、信を取るが、一宗の繁昌に候う」ということを見失ってはならないことは申すまでもありません。 ここで言う寺院運営活性化支援の内容が、この「元気なお寺づくり講座」を展開することをいい、教区によっては、それを教化事業として位置付けているところもあると聞きます。しかし、言うまでもないことですが、教化事業と寺院経営とは明確な峻別が必要であります。
そこでは、門徒の求めにより、所属寺院の住職が、宗務総長の承認を得て、執行するとされています。 そして、複数の寺院が合同で行う帰敬式については、受式しようとする門徒が所属するいずれかの寺院の本堂で執行できるとしていますが、その執行者につきましては、それぞれの所属寺院の住職が行うものと定められていました。 この現状に対して、円滑な儀式の執行のうえから、いずれか代表となる住職が執行できないかという要望が出されていました。 この度の「帰敬式に関する条例」改正は、その声に応えるかたちで、複数の寺院が合同で実施する帰敬式については、受式者本人及び所属寺院住職の同意を得たうえで、宗務総長の承認により、受式しようとする門徒が所属するいずれかの住職が執行できるようにするものであります。 4.真 宗 本 廟 奉 仕 施 設 進 捗 状 況.
工事費については、2012年の見積もりでは20億6千万円であったものが、その後の経費見積もりでは31億円となり、結局、そのまま、工事費31億円で大成建設が落札しました。当初の見積もりから50%の増額には納得出来ないものがありましたが、今回、6,000万円を削減や見直しでやりくりできるというところに、31億円自体がもっと削減できる数字でなかったかと改めて思わされてしまうのですが。
第一種共済には、現行制度では、退職慰労金、遺族給付金、慰問金、弔慰金及び住職年金がありますが、これまでそれらのすべてが、必要書類を添えて申請することによって共済金が給付されるものでありました。 この度、条例改正がなされ、事務手続きの簡素化をめざし、慰問金以外については、申請を必要とせず、宗派より速やかに共済金が給付される制度になりました。 内容は下記の通りです。 退職慰労金:30年以上住職であったものが、退職した時に給付。(50) 遺族給付金:30年以上住職であったものが、死亡した時に給付。(50) 改正により、上記の二つを住職慰労金と一元化し、住職交代の諸手続きにより給付する。 弔慰金:住職(8)・前住職(5)・坊守(5)・前坊守(3)・本務代務者(5)が死亡した時に給付。死亡届提出時に給付。 住職年金:住職50年以上在任したものに、終身、年一回給付。(5)自動給付。 慰問金:住職(3)・坊守(2)で、病気や事故で業務に著しい支障をきたすものに給付。現行通り申請制。 ※()内は、共済金額:万円
そして、2013年1月には、改めて部落解放同盟広島県連からこの問題に対する提起を受けました。その提起に応えるべく、宗派としては、様々な準備を整えて、解放運動の原理となり得る教学の確立に向けて、「是栴陀羅」問題を中心としての「部落差別問題等に関する教学委員会」を立ち上げました。 昨年6月、その報告書が取りまとめられました。そこには、「観経・和讃(是栴陀羅を含む)が読まれることに『痛みを感じる』という門徒の声がある現状をどう考えるのか。(中略) この現実を重く受け止め、如来教化の場としての仏事のあり方を再検討し、宗祖のおこころにかなう真宗の仏事として回復していかなければならない」と、教化の現場に立つ私たちにとって、避けて通れない問題としてこの問題はあり、そして、「是栴陀羅問題を通して、我々教団における封建的な体質や様々な差別問題に向き合い、浄土真宗の教えを明らかにしてほしいというのが、私たちにかけられた願いである」と、向き合うべき方向を提言しています。 これの課題を受けて、教区、組そして寺院において、僧侶、門徒が共に問われるものとしてこの問題を共有することの大事さが思われます。 【 残 業 代 未 払 い 問 題 】
四月下旬、全国紙やテレビで、わが宗門の残業代未払い問題が報じられました。 教区内のご住職やご門徒から数件の問い合わせがありました。皆さんも、ご心配されたことではなかったでしょうか。 全国から奉仕団として上山されるご門徒を同朋会館でお迎えし、そこで有意義な研修の時間を送っていただくお世話をする補導職にある2人の職員が、残業代金の未払い分を請求し、その解決金として660万円を支払ったことが大きく取りあげられて報じられたのです。 労務環境については、社会的関心が高くなっている中で、大谷派もブラックか?という視点で取り上げられた面も否定できないのではないかと思われます。 一般企業とは異なり、企業活動による利潤を収入としているのではなく、ご門徒のご懇志をもって宗門を運営していることから、職員には、ある意味、奉仕精神を言わずもがなで強いてきた側面のあったことは否めませんが、宗門が社会的存在である限り、現在の社会のルールに則った時間外勤務に対する対応が必要であろうと思われます。
総会所において確保されていた聞法の場が、しんらん交流館にその機能が引き継がれることで、総会所を今後どのようにするのかということが問題となりました。当局としては、耐震を施しての改修や今後の管理運営に掛かる経費という財政の上から保存しての利活用ということには難色を示していました。一方、破風造りの建物そのものが持つ建築物としての価値や両堂再建時の門徒を支え、法悦にひたってきた人たちの歴史を伝える上からも何とか保存してもらいたいという要望の声がある中、昨年の本会議で、総会所の今後についての質問に対して、「保存や移築を含めた幅広い活用方途を公募する」と当時の財務長は答弁されました。ところが、今年5月号の「真宗」には、総会所の活用方途として公募された内容は、「移築及び用材活用」となっています。そこには、「保存」は削除されています。
内局は、昨年の前財務長答弁を反故にして、財務長の諮問機関である財産管理審議会に諮り、保存を除く公募に踏み切りました。これは明らかにルール違反です。議会軽視というルール違反です。 昨年、明確に答弁しておきながら、その答弁内容と異なる、公募内容として移築と用材活用を財管に諮ること自体が、議会軽視そのものであります。保存・移築・用材活用を内容とする公募をして、その結果を財管に諮問すべきでありました。 今議会の財務長答弁で、総会所を保存した場合には管理責任や財務負担が払拭できないとし、それを、保存を選択支から外した理由として挙げています。しかし、昨年の前財務長答弁の時にも、管理責任や財務負担については充分勘案されたうえでの答弁であると考えます。ただ、保存を削除しようとした時点と、昨年の答弁の時点とで、財務状況が著しく変化したということでもあったのなら、そのことを明らかにして昨年の答弁を変更する旨を示すのが手順ではないでしょうか。しかし、そのような財務状況における著しい変化は見出せません。 納得の出来る理由を示すこともなく、答弁内容を勝手に変更することは、内局が自身の答弁そのものを軽いものとし、ひいては内局自身の信頼を失墜させ、同時に議会の権威を貶めることに繋がります。 b.条 例 案 の 審 議 が 審 議 に な ら な い この改正案は、岐阜・高山教区地方協議会においては、すでに改編に向けて合意書をかわし、教区会・教区門徒会で承認されています。さらには、日豊・久留米・長崎・熊本・鹿児島教区地方協議会では、17年4月に合意に達し、17年度中の教区会・教区門徒会への提案が予定されています。それらの状況にかんがみ、新教区準備委員会発足に向けて、小委員会の設置や新教区発足後の役職者の地位等を明確にすることがその内容であります。 既存の条例には、新教区準備委員会の構成員を、教区会議長及び教区会副議長、教区門徒会長及び教区門徒会副会長、教区会参事会員、そして教区門徒会常任委員としています。 改正案は、そこに小委員会を置くことが出来るというもので、「小委員会は、新教区準備委員会において互選された委員で構成する。」とし、但し書きで、「新教区準備委員会が必要と認めた時には、改編関係教区の寺族・門徒の中から選定することが出来る」としています。 ところが奇異なことに、その但し書きで選定された委員は、小委員会の委員ではあるが、新教区準備委員会の委員ではないというのです。 中学の時に習った集合でいえば、大きい集合A(新教区準備員会)とそれに含まれる小さな集合B(小委員会)、そしてBの要素であるC(選定された委員)とするとき、必然的にCは、Aの要素となります。ところが、この度の条例改正では、Cは、集合Aの要素ではないというのです。これは明らかに、論理的に破たんしています。選定された小委員会委員は、新教区準備委員会の委員ではないというのですから。このことは、論理的に成り立ちません。論理的に破たんしている関係を条例化してはなりません。 小委員会の委員とするなら、それは論理上、必然的に新教区準備委員会の委員になります。改正案を「選定することができ、新教区準備委員会委員とみなす」と修正すべきであります。
このことは、議会が、当局の提出した議案をただ可決する承認機関となっていることを、残念ではありますが、改めて確認することになりました。 【 議 員 発 議 三 件 】
1.
宗議会議員選挙の被選挙資格から、住職の同意を削除する。 2.
坊守の規定を寺族、又は帰敬式を受けた門徒のなかから、住職、責任役員、 総代とともに願いでたものとする。 3.
教区会議員選挙の被選挙資格を25歳以上の有教師に、選挙資格をすべての 有教師に付与する。 残念ながら、3議案とも賛成少数で否決されました。 |