宗政報告No.39(2019年6月26日)


第67回 宗 議 会 報 告

  老後に2,000万円の資金が必要とした金融審議会の報告書を麻生金融担当相が受け取らない方針という。金融担当大臣自身が審議会に諮問しておきながら、都合の悪い報告は受け取らないという、何と稚拙にして国民を愚弄した行為でありましょうか。都合の悪いことは無いことにして、無かったことにして済まそうという。これは、劣化した政府がすることだけではなく、わが大谷派宗門においても、同様のことが今議会で行われました。



    内局巡回で提示した予算50億円には全く触れず
                        35億円予算案を提案


   今議会は、2023年に勤修される「宗祖親鸞聖人御誕生850年、立教開宗800年慶讃法要」の総計画案の審議が中心になりました。

慶讃法要については、内局は、昨年、全国30教区を巡回して、意見聴取をしました。仙台教区では、919日に内局巡回が持たれました。その時、内局が提示した予算案は50億円であります。ところが、今議会に提示された予算案は35億円です。実は、それに先立ち、全国の正副教区会議長会では、40億円予算案が示されています。

そこで当然、財務長演説では、50億円、40億円、そして35億円に変更になった経緯と内容について詳細にわたっての説明が為されるものと思っていました。ところが、財務長は、50億円、40億円という数字に全く触れること無く、現場を取り巻く厳しい現実に鑑み、今やらねばならないことに絞って35億円としたと言及しただけであります。

正副議長というのは、教区を代表する役職です。その会議での発言は、教区の人たちに対する発言と何ら変わるものではないはずです。また申すまでもなく、内局巡回には多くの宗門人が参加しました。そこで示された50億円、40億円という予算案を35億円に変更するのですから、内局巡回に出席した人、あるいは正副議長は、何故、変更になったのかという疑問を持たれるのはごく自然であります。そして、疑問を持たれるであろうと考えるのが至当であります。

にも拘らず、宗門人を代表する機関である議会において、変更になったことに対して何ら説明を加えないどころか、50億円、40億円という数字は全く存在さえしなかったが如き演説は、極めて不誠実であり、同時にそれは、内局巡回に出られた方々、そして、正副議長を愚弄することでもあります。

そこで、議会に対して、内局が、変更の詳細について説明責任を果たすことを要求しました。ところが、内局の回答は、総計画案は特別委員会に付託されたので、そこで審議してもらいたいというものです。

私たちは、内局が、50億円を厳しく精査して、40億円に削減したものと思っていました。ところが、そこに更なる精査を加えたら35億円になりましたということなのでしょうか。では、もう少し精査すれば更に減額が可能なのではないですかということになります。つまり、私たちは、もはや、議会に提案された35億円に信頼が置けなくなっています。

そこで、議会と内局との信頼回復の作業なしには、審議に応じられるものではありません。その作業とは、少なくとも議員全員に対する予算案変更の詳細にわたる説明であると考えての要求であります。

ところが、内局の回答は、先ほど申しましたように、特別委員会での審議を願いたいというものです。しかし、その審議に応じるということは、コロコロ変わった35億円予算案を、何の説明もなしに受け容れることを意味します。

そこで、私たちは、如何に対応するかを会派で協議いたしました。全員での審議拒否も検討したのですが、予算委員会があり、決算委員会があり、本会議での質問を控えている議員も居ます。それ等のすべてを放棄することは、内局の不誠実さに対する抗議としては、失うものが大きすぎるということになりました。

とは言え、このまま審議に応じることの理不尽さも受け容れ難く、問題を提起した者として、一人で特別委員会審議と本会議出席を拒否する判断をしました。それが65日であります。その日のうちに当局側からの接触があり、6日の委員会前に担当参務が、私たちの会派控室に出向し、50億円、40億円、そして35億円の変遷の説明を款項目を提示しながら行うということで合意をしました。議会への説明ではありませんでしたが、私たちへの説明がなされたことを良として、委員会審議に復帰することを受け容れました。

しかし、そこには、全議員に説明がなされていないため、特別委員会委員と私たち以外の議員は地元に帰って、35億円に削減された予算に対して疑問を持つ人に、具に報告がなされるかどうかという問題は残りました。



  35億円予算案では 何が削減され 何が追加されたのか


 50
億円、40億円、そして35億円の予算案の変遷については、40億円予算案に触れること、また正確な数字を記すことはかえって煩瑣になると思われますので、50億円から35億円に変更されることで削減された予算項目、逆に追加された予算項目の概算についてのみ記します。なお、手元に内局巡回で配布されたパンフを参照いただければ有り難いのですが。

支出では、法要費が、経費の精査により1億円削減。境内諸施設整備費9億円が、全額経常会計で行うとして削除。教学教化費が、高齢者福祉施設2億円と、経常会計での実施により5億円削減。伝道広報費は、予算の5%を上限としている事から7500万円減額。調進費は記念品の精査で1億円削減。寺院活性化支援基金繰入を1億円削減。教区交付金は、ご依頼額変更に伴い6500万円減額。一方、事務所費が、聖教編纂室給与が入ることで1億円増額。また、未計上であった宗務改革推進資金繰入が25000万円追加されました。

収入では、教区ご依頼が453000万円から、29億円に減額。僧侶賦課金が15000万円から3億円に増額されました。

寺院賦課金・僧侶賦課金につきましては、慶讃法要が勤まる2022年度に、寺院賦課金は5割増し、つまり1.5倍。僧侶賦課金は10割増し、つまり2倍納めることになります。

ご依頼につきましては、一概に言えませんが、今年度から、4年間、経常費ご依頼の約14%が慶讃法要特別懇志として想定されるかと思われます。

テーマや法要のあり方、期間等については、宗報や同朋新聞等々で詳しく報じられることでしょうから、ここでは省かせていただきます。

 

  改編教区に対する特別給付金


  前出の、50億円予算案の時には未計上であったのが、35億円予算案に新しく計上されたものとして、宗務改革推進資金への25000万円の繰入金があります。多くの項目で削減される中で、新しく計上されることに違和感を持たれた人もおられるのではないでしょうか。

宗務改革推進資金は、186月時点で、約3億円近く保管されています。そこに、この度25千万円を繰り入れるわけですので、55千万円近くが保管されています。3億円近くあるのに、そこにさらに25千万円を、なぜ繰り入れたのか。その使途として考えられているのが、新しく教区改編を達成した新教区に対して、特別給付金を出すというもののようです。

それも、旧教区の教区予算の合算の3分の1を上限に給付するというのです。今後改編作業をし、新教区になると思われるすべての教区の総予算の3分の1にあたる金額は、約36千万円にもなるといいます。

30教区のうち、改編しない教区は8教区ほどあります。これらの教区には、もちろん給付金は支給されません。これは、公平性が保たれた支出といえるでしょうか。

また、上限とは言え、3分の1の根拠も、給付する目的も明確に聞けず、多くの宗門人が、経費の削減をのぞむ中、適切な支出といえるのか大変疑問であります。

 

   寺院活性化支援基金

慶讃法要の特別会計から、この基金に5億円が繰り入れられます。支援の内容は、3つに分かれます。寺院運営活性化支援・過疎過密地域寺院支援・青少幼年教化支援です。そのうち、過疎地域寺院の置かれている状況は誠に厳しく、宗門がサポート体制をつくりあげ、それぞれの事情や情況が異なる中、何を支援できるのかを模索しながら展開しようとしています。この活動には、大いに期待したいと思います。

青少幼年教化は、宗門の将来を託す子供・若者に念仏の教えを如何に手渡していくのかという大きな課題があります。それには、寺院・組・教区で展開されている青少幼年教化事業と緊密な連携を取りながら、子どもの集い等を開催し、青少幼年教化に携わるスタッフの養成が俟たれます。また、青少幼年支援の一つの集大成として、202356日には、青少幼年の全国結集大会が予定されています。

寺院運営活性化支援につきましては、1ヶ寺、1ヶ寺を活性化するための支援をしたいというものです。そのために、慶讃法要までに150名、そしてその後6年間に150名、計300名の支援員を養成したいという計画があるようです。全国に組が418組あるものですから、大まかに2組に一人くらいの担当を考えているようです。その支援員の任務とは、住職寺族、門徒と一緒になって、その寺院を活きいきとさせるための相談相手となるというものです。そして、いづれ、教区に寺院活性化支援室を設置したいという構想のようです。

しかし、1ケ寺が聞法道場として、そのはたらきを回復するお手伝いをするというのは、教区教化委員会、組教化委員会の仕事であります。仙台では、教区の中心事業として、一ヶ寺、一ヶ寺に出向いて、親鸞教室を展開してまいりました。さらには、教区寺院活性化支援室は、教区の教化体制を大きく変貌させるものとなる可能性があります。であればこそ、宗務所で企画を立てるだけではなく、全国の教区教化委員会との協議を重ねるなかで、進めるべき事業であるはずです。

真宗教化センターを立ち上げる時に、その主任務は、教区や組、寺院の現場の声や要請に応える事業や施策の展開であるべきだという、ボトムアップを大事にしてほしいというものがあったはずです。しかし、この度の寺院活性化支援事業は、上意下達のように思われてなりません。この事業を実のあるものとするには、教区や組との緊密な連携なしに出来るわけがなく、綿密な協議を重ねる必要が感じられます。

 

   教区教学研鑽機関の整備と充実


30教区のうち、教学研究所、あるいはそれに匹敵する研鑽機関が設置されていない教区は8教区あるといいます。その、無い教区に教研を設置できるように、ある教区には、その充実を期しての予算付けということのようです。192021年度に単年度2,000万円づつ、計6,000万円が計上されています。

仙台に教学研究所が設置されて40年近くになるかと思います。教区にとって、大変大きな役割を果たしていると思いますし、個人的にも教研に育てていただいたという恩義を感じているものであります。

教研のない8教区には、教研の機能に代わるような研修体制があるか、あるいは、教研を必要としなかったということなのでしょう。なぜ、これまで教研が無いのか、その理由をどの程度把握し、分析されているのかはっきりしませんが、今年度計上している2,000万円で如何なる施策を計画しているのかと質せば、助成ということのようです。助成金を出したからと、それが教研設置に繋がるようには思えないのですが、今後の展開を注視したいと思います。

 

 
      記念事業  聖教編纂室


「浄土文類聚鈔」「愚禿鈔」「尊号真像銘文」「一念多念文意」「唯信鈔文意」「三帖和讃」等について、校異や註釈を付したテキストの編纂刊行。

また、2023年までに、「真宗聖典」第2版の刊行が予定されています。改版するなら、お西の「浄土真宗聖典全書」(5編全6巻)に近いものを目指してもらいたいと期待しますが、非常勤特別研究員1名、常勤研究員3名、非常勤アルバイト3名の計7名のスタッフ体制での、短い期間での改版作業となりますので、残念ですが、そう無理も申せないのかとも思われます。



 

     慶讃法要勤修に伴い教区会議員の任期
             正副組長の任期が変更されます



     ◎教区会議員任期 2020424 20221223

              20221224日~ 2026423日 

 

     ◎正副組長任期   202041日 ~ 20221130

               2022121 2026331

 

つまり、慶讃法要を勤修するときは、次々期の教区会議員・正副組長ということです。

 

 

    沖縄準開教区駐在教導を設置


 沖縄準開教区は、沖縄別院を中心に、沖縄の歴史的、風土的特性を踏まえつつ、教化活動が展開されています。現在、教師が
9名誕生し、教化拠点が3ケ所設置されています。

それ等拠点の新寺建立への機運もあり、その法人化取得に向けての支援や、沖縄開教を志す人たちの支援等を業務とする沖縄準開教区駐在教導を設けることになりました。

また、沖縄準開教区駐在教導には、いま一つ、大事な業務として、沖縄の現況、そして沖縄の人たちの悩みや苦しみを聞き取り、それを本土に発信し、沖縄の問題を本土の私たちの課題として共有する懸け橋となることが求められます。

あわせて、沖縄別院での仏事執行を縁として、教化活動の充実をはかるため、沖縄別院に法務員を置くことになりました。

 

 

     第二種共済が変わります

 任意加入の第二種共済につきましては、これまで、被害査定の算定が不透明である、給付金の支給まで時間がかかり過ぎる、被災寺院の申請手続きが煩瑣である、20%未満の被害には支給されない等の声が多く寄せられていましたが、それ等の不満を解消するべく、共済条例が改正されました。

被害査定の算出には、専門家が現地に赴き行う。1%以上の被害から支給対象とする。申請手続きの簡略化。広域災害の時には、そうもいかないでしょうが、申請から支給までを2ケ月以内としたい、等々の改正がなされました。もっとも、2ヶ月以内という条文があるわけではありませんが、担当者が努力目標として挙げているものです。


     わが議会の「請願委員会」について

 そもそも、議会に請願委員会が設置されているのは、立法に直接参加できない人達の要望や意見を広く議会が聴き取り、取り上げるに相応しい要望や提言は具現化するという制度であります。議会に議席はなくても、直接参加できる道を開くことで、民意を汲み上げるとともに、議会に対する関心をつなぎ留める働きがあるといえるでしょう。

 ここでわが大谷派議会の請願委員会についてみてみましょう。紹介委員を通して、議会に提出された請願は、請願委員会に回付され、そこで、その請願が、議会の議に付するに相応しいかどうかを審議します。そして、本会議に付され、議会でその請願が採択されれば、その請願に応えるべく、議会で処理すべき案件については議会が、内局が対応せねばならない案件に対しては内局が対応せねばなりません。そして、内局が対応した事案については、次の議会に処理した内容を報告せねばならないとなっています。

 
 この度、高田教区から、「立教開宗の意義を明らかにするために、御影堂から見真額を下げることを求める」請願が出されました。請願委員会では、議会の議に付するかどうかの採決の前に、委員長を含む、八人の委員の意見が開陳されました。中には、明確な意見を述べなかった委員もおられたようです。発言された内、4人の委員の発言内容が同趣旨のものでありました。実は、この委員会に先んじて、高田教区から出されている請願と内容としてあまり変わらない一般質問が本会議でありました。4人の委員の意見は、そのことを取り上げ、この請願の内容はすでに本会議に於いて一般質問で取り上げられた内容と酷似しているので、請願として本会議に付する必要は認められないというものです。

 

   そこには、2つの問題があります。1つは、全く初歩的な委員たちの錯誤によるものです。一般質問というものは、内局に対して、その施策、方針を問い糺すものであります。一方、請願は、議会の意志そのものを問うものです。つまり、提出された請願を議会として取り上げるかどうかを審議し、採択されれば、内局は、進めたい方針とたとい異なっていようが、その請願に応えるべく処理せねばならない義務を負います。そのため、一般質問と請願が、全く同じ内容であったとしても、そこに何ら問題を見出すことは出来ません。つまり、4名の委員の発言は、彼らの請願と一般質問に対する基礎的な認識不足に起因するものと言えます。

2つ目は、これこそがわが大谷派議会にとっての、根の深い大きな問題というべきですが、4人が4人ともそんな初歩的な誤認をするとも思えません。にも拘らず、そのような発言をするところには、一般質問で取り上げられ、内局が答弁したのだから、議会で審議する必要はないという了解。つまり、内局が、見真額を下ろすつもりはないと決めたのであるから、それが宗門の方針であり、改めて請願を審議する必要を認めないということなのでしょう。しかし、そこにあるのは、議会が示す意思により、内局を動かせるという請願の持つ原則を忘れ去り、議会は内局の方針に従えばいいのだという、内局をチェックするという議会本来の任務を放棄した、内局の追認機関としての議会観ではないでしょうか。議会を内局の追認機関として甘んじて受け入れていること自体が問題にもならないことを露わにさせたのが、この度の請願委員会の審議のように思われます。

 ここ10年近く、請願が本会議にかけられた記憶がありません。仙台では、2016年、教区会議長が請願者となり、すべての教区会議員が賛同者となって、「教区会議員選挙における選挙資格及び被選挙資格に関する」請願を議会に提出しました。今は住職にしかない資格を、有教師に拡大されたいというものです。その時の請願委員会での審議は、全宗門的な課題になっていない、時期尚早、宗議会と教区会とはちがう等の理由で、本会議に付する必要がないと決められました。しかし、それ等の理由は、本会議で議論され、採択されない理由として語られるものなら分かりますが、本会議に付するかどうかが審議される請願委員会での議論として相応しいものなのでしょうか。例えば、議会の任務は、全宗門的な課題になっていないから取り上げないということではなく、気付いたものが少数であっても、肝要な課題は議会で取り上げ、全宗門的課題として提起することも議会に期待される仕事の一つです。つまり、時期尚早もそうですが、それは、本会議に付さない理由にはなり得ません。どうも、そのあたりの混同が、あるようです。つまり、請願委員会が、あたかも本会議の予備審査会と化し、不採択に当たるものは議会の議に付する必要はないという結論を導いているように思えるのです。

請願を本会議で取り上げないということが、宗門人の議会に対する無関心を呼び込み、議会に対する信頼を貶めていることに議会人たる私たちは気付くべきなのでありましょう。

 

             【あ と が き 】

   いま、大法要を勤修することを、宗門の一員であることを誇りに思ったり、宗門への帰属意識を高めたりする大きな機縁であると、考えておられ方はどれくらいおられるでしょうか。

とは申せ、大法要に期待することがないわけではありません。それは、この機会に、「親鸞を」「念仏を」社会に向かって、集中的に発信し、人々に手渡す機会としたいというものです。

この度、提案された慶讃法要事業は、殆どがこれまで展開されてきた業務を整理する形のものでしかありません。「親鸞を」社会と世界に手渡す、そのためにどのような事業展開が可能であるのか。すでに、4年を切っていますが、皆さんとご一緒に取り組んでいきたいと思います。