宗政報告No.34(2014年7月3日)
           第60回 宗 議 会 報 告


  安倍政権は、公明党と一緒になって、憲法解釈を大きく逸脱するかたちで解釈改憲を行い、他国への攻撃に自衛隊が反撃する集団的自衛権行使容認を閣議決定しました。それは、もはや憲法9条の空洞化に他ならず、アメリカの要請によって世界中の戦闘に巻き込まれることになりかねません。

  この時に当たり、安倍政権の暴走に危惧の念を持ちつつも、座視しているしかない圧倒的多くの人々、この私もまたその一人ですが、その人達に、仏教者としてここに、「ストップ.ザ.安倍」という旗を立てて反対する者たちがいるという事を明らかに出来るような議会にしたいということがありました。

大谷派は、昨年11月には、仏教教団で唯一、「特定秘密保護法案」を廃案にする要望書を提出しています。その上からも、真宗教団連合、全日佛、あるいは同宗連に呼び掛けて、集団的自衛権行使容認反対を仏教界、宗教界で大きく声をあげて表明する、そのリーダーを総長には務めていただきたいとお願いしましたが、今後の趨勢を見て、対応したいという答弁をいただいただけでした。

71日には、総長名で集団的自衛権行使容認に対する反対声明がだされました)

 

  一方、宗議会としましては、全会一致で「集団的自衛権行使容認に反対する決議」(資料)を採択しました。そこでは、宗祖親鸞聖人の教えを大きく歪め、国家に追随し戦争に加担してきた宗門の過去の罪責をふまえ、戦後50年に当たり議会が採択した「不戦の誓い」にある、戦争を未然に防ぐ努力を惜しまないという誓いをベースとして、反対表明をしました。今後は、そのために具体的にどのような事を宗門として実践していこうとするのかが、問われるところであります。

 

 

1.90億の予算

529日、906600万円の14年度予算が上程されました。特に記すべきものとしては、修復関連事業を一年延長して、収骨施設や高廊下、御休息所、出仕廊下等の整備事業を約9億円かけて実施したいというものがあります。そのうち、今年度は、8,900万円を計上しています。収骨施設については、これから委員会を作ってその内容・規模等を検討するということですが、今後の検討事項に予算付けをしているということ自体に違和感を持ちます。そこでの予算の算出根拠は何かということになります。明確な算出根拠があるとすれば、これから開かれようとする委員会の役割とは何かということにもなります。また、新事業としては、奨学金制度を担ってきた育英財団が解散して、宗派の奨学金制度の趨勢が気になっていましたが、宗門関連学校38校の高校生以上を対象に返済義務のない奨学金制度を起ち上げ、今年度、2.765万円の予算を計上しています。そして、専修学院の岡崎、山科学舎を一学舎化し、その新築等々があります。

その予算案が上程された翌日、予算書に5会計、48ヶ所に及ぶ誤記があり、訂正がなされた修正案が出されるという失態がありました。このような大失態が引き起こされる背景に、宗務役員の過重な勤務ということはないのか、心配でもありますし、同時に、最終的にチェックする体制が機能不全に陥っているのではないかと気に懸ります。

 

2.復興支援事業について

 今年度も、仙台教区へのご依頼は、800万円減額の処置が取られました。

また、全国から、3年を経過しているのも拘わらず、昨年度、2,009万円の救援金をお寄せいただきました。原発事故や震災が多くの人々にとって遠い過去の出来事になりかけている中で、今もこうして2千万円を超える救援金と共に被災地に心を懸けてくださっている方々がおられるというところに心強いものを感じます。

これまで、救援金として宗門に託されました総額は、75,400万円になります。そのうち、現在、12,000万円が東日本大震災復興支援資金として保管されていて、そこから、今年度は、5,300万円を復興支援経費として予算化しています。その内容は、保養事業に対する助成、県外避難者への支援等であります。

また、宗派会計から、復興支援費として2,500万円を計上し、教務所に併設されているボランティア活動の拠点としての現地災害救援本部と、522日に原町別院に開設された福島事務所の運営経費に充てることにしています。福島事務所は、原発学習に福島を訪れる方々の対応と原発に関する情報収集と発信が主な業務となるでしょう。

 

3.原発問題

原発事故から33ヶ月になりますが、汚染水問題は全く先が見えず、今も毎日大量の汚染水を海に垂れ流し、放射性物質で地球を汚染し続けています。しかし、政府は、福島原発の事故はすでに済んだこととして、原発の再稼働を明言し原発の輸出を誇らしげに発表しています。

 そのような中、521日、福井地裁の大飯原発運転差し止め判決は、原発に不安と疑問を持つ人々の声を代弁するものでありました。そこには、「極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり、その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないと考えている」と、原発そのものが、顛倒、さかさまな地平に立てられているといい、本当に守らねばならないものを見失っているとの指摘であります。

 宗門は、脱原発を表明し、原発に関する公開研修会を実施していますが、今後は、各教区で研修会が開催されていくことが大事であると思われます。また、そのときの学習資料の作成を解放運動推進本部に期待したいものです。

 

4.大谷専修学院、一学舎化について

 

専修学院は、1941年大谷中学から大谷派教師課程として分離し、京都大谷専修学院として設立されたことを嚆矢とします。1962年宗祖700回御遠忌事業として岡崎学舎が、その後志望者増加に対応するため、1980年山科学舎が建てられ、二学舎体制のもと現在に至っています。

@   手法について

ところで、学舎の老朽化、志望者の減少等がすでに問題として指摘されたのは今に始まったことではありません。この度、資金的な目途が立ったということで、今議会に提案されることとなりましたが、問題は、その提案の仕方の拙速さと資金調達のうちの平衡資金の遣われ方であります。

今議会への提案までの経過を少し辿りますと、議会開催までひと月も無い、430日に、この件に関する宗務審議会を開催し、一回きりのその審議会で、専修学院の一学舎化、並びにその建築の必要性ありとの答申を受けます。

そして、513日には、参与会・常務会を開催し、平衡資金から22,500万円を建設資金として融通する了解を取り付けます。そこに、宗門の奨学金制度を支えてきた育英財団の解散に伴う残余財産3億円、寄付金1億円を見込んでの計62,500万円の建設予算で今議会に提案されました。

こうして見ますと、それまでの下準備のための作業はあったのでしょうが、宗務審議会という宗門世論を聞き取る機関を設置してから、提案準備に要した期間が一か月にもなりません。専修学院という宗門にとって極めて肝要な教育機関の問題が、あたかも突然降ってわいたように、バタバタと決められ提案されている、その手法に大きな危惧を覚えます。

この問題は、宗門にとって、今後の教師養成をどのように考えるのかということであり、それはこれからの宗門のかたちを如何に見定めようとするのかということと無関係ではありません。

そのような重大な事柄を、ただ一度の宗務審議会を開いただけで、一学舎化と、その新築の要ありの答申を得ています。そもそも、宗務審議会とは、その事案について、広く宗門の知見を聞き取って、方向を決する資けとしたいという総長の諮問機関です。これでは、内局のやりたいことに正当性を与える追認機関でしかありません。その宗務審議会のこともさることながら、より問題は、専修学院という重要事項についての対応の仕方を見る時、宗門のこれからのことを中期的に、あるいは長期的に憶念し、思量している人達がいるのかという懸念を持たざるを得ません。

この度の提案の手法には、専修学院のこれからを、つまり宗門の教師養成の今後を如何に見通していこうとするのかという十分な検討姿勢を感じることができず、甚だ場当たり的対応しか見られないところに、長期展望で宗門を憶念する人の不在を危惧せざるを得ないものがあります。このことこそが、最も気にかかるところであります。

A   資金調達の方法について

さらに、平衡資金からの融通として22,500万円を建設資金に回しますが、この資金の移転を融通といえるのかどうかということがあります。平衡資金というのは、健全な財政を維持できるように、その年の決算の余剰金のうち半額を平衡資金として保管し、あとの半額を翌年度の歳入として繰り入れる会計手法を言います。様々な要因で大幅な収入不足に陥ったとしても、宗門運営を遅滞なく推し進められるように、出来れば年間予算に相当する80億円程度を平衡資金して保管することを目指してきたということがあるようです。現在は約465千万円が保管されています。

平衡資金を重要な金員と位置付けるところから、その使用については、宗議会・参議会の3分の2以上の賛成を要するという規約をもうけています。ただ、融通の場合には、参与会・常務会の議決だけで可能であるという規定もあります。

ところで、融通とは、金員の貸し借りであります。その場合には、借りる側aと貸す側bが異なった主体であることが前提であることは言うまでもありません。abから借り、借りた金員をbに返却すると言うとき、融通といえるでしょうが、もしabが同じ主体である時には融通ではなく、金員の移転というべきでしょう。平衡資金も専修学院建設特別会計も共に、大谷派会計の一部なのですから、それは平衡資金から専修学院建設特別会計に融通したとは言えません。同じサイフの違うポケットに移しただけです。そして、実質としては、平衡資金から22,500万円を使用することになるのです。この事案は、参与会・常務会で可決すべき内容ではなく、宗議会・参議会両議会に付し、3分の2以上の賛成によって決すべきことであります。

B   採決にあたり

これらの問題があるものですから、採決の時には、私たちの会派としては苦渋の選択をせざるを得ませんでした。

と申しますのも、老朽化した岡崎学舎や最近の入学者数を思います時、この度の提案には、賛成であります。しかし、いま見てきた事からは賛成できるものではありません。そこで、この件に関しましては、採決に当たり3名のものが退席するかたちをとりました。その事で、学舎の新築には賛成であるが、その手法と金員の調達方法に問題があることを明確にしようとしました。何故、3名だけなのかということにつきましては、12名は、問題は感じながらも新築を支持する意思がまさったということです。そのため、この件は61(1名欠席)の全会一致で可決されました。

 

5.教化総合施設について

@   真宗教化センターの主業務について

来年7月からの開所にむけて、準備作業が進められているようですが、真宗教化センターには、寺院と寺院を、組と組を、人と情報で繋いでいくはたらきを期待したいところであります。たとえば、それぞれの寺院で同朋の会を運営していて、会員の固定化、高齢化、あるいはマンネリ化に苦労しているところは多いかと思われますが、それらのことにどのように取り組んでいるかとなると、それぞれの寺院の工夫と努力だけが頼りであるのが現状です。実際、隣寺の同朋の会の実状もわからないのではないでしょうか。そんななか、全国の様々な寺院の同朋の会の取り組みや課題等が共有され、その情報を介して寺院同士の交流がなされる。あるいは、門徒の子女がカルト教団といわれるところに入信したという相談を受け、どうしたらいいか思い悩んでいる時に、すでにその問題に取り組んでいる人をセンターを介して紹介される。また、組事業として人権学習を実施したい時、全国の組で、どなたを講師として、如何なるテーマで、どのような内容で実施され、そこでどのようなことが改めて課題として見えてきたか等々の情報を得ることが出来れば、大いに参考になるでしょう。また、組が抱えている問題を通して、組同士の交流がなされることも期待したい。

教化の現場は、どこまでも寺院であり、組であり、教区であるというところに立ち、その現場をサポートするために何が出来、何をなさねばならないかということを主業務とする真宗教化センターには期待するものがあります。


A   総合資料室

教学研究所・解放運動推進本部・青少幼年センターが所有する約4万点の図書を一括管理し、そのうち貸出し可能な図書を一階総合資料室に並べ貸出業務を行い、その南側に絵本コーナーを設置し、子供たちが絵本に親しむ空間を作りたいということです。

B   多目的ホール他

  2階に研修会・講演会等を催せる約500席の多目的ホール。

1階には各種会議室、広間(仏間)があります。

C   今後の課題

今後、教学研究所が、真宗教化センターと連携を深めて活動していくこととなるでしょうが、その中で、教学研究所として、その独立性をいかに確保していくかということが大きな課題であります。

宗政と教学という関係を見ます時、宗政は教学に軸足を置き展開されるものでありますが、ときには教団組織を第一とし教学を見失うこともないわけではありません。その時、教学は宗政を照らし、ただすものとして機能することが期待されます。教学研究所が、宗政と距離を置く必要があることの所以であります。業務上の連携は否定しませんが、条例上、独立性を明確にできるか問われるところであります。

D   教化総合施設建設

教化総合施設の起工式が201444日に行われ、来年4月の竣工を目指して工事が行われています。場所は、宗務所北側、大谷婦人会館跡地で、鉄骨二階建て延べ約3,600u、外観はガラス張りと瓦ぶき。総予算166,700万円。来年7月には、教化センターとしての機能を始動させたいということです。


6.男女両性で形づくる教団をめざして

  @   組門徒会員の女性枠増設について

同朋公議を宗門運営の基本手法として掲げる宗門ではありますが、僧侶とそうでない者との壁、住職とそうでない者との壁、そして男と女の壁は今も厳然として存在しています。そこで、出来るだけその壁を取り除き、宗門に関わるものが斉しく宗門運営に参画出来る仕組みと方途を確立したいと、私たち、同朋社会をめざす会では考えています。

昨年度、宗務審議会「男女共同参画推進に関する委員会」は、条例制定の必要性を答申しています。その答申を受けて、具体化するため「男女共同参画推進会議」が設置され、そこで提案されたのが、組門徒会員の女性枠の増設であります。

組門徒会員は、寺院・教会の代表として一ヶ寺平均二名が選出されていますが、代表としての選出という事からか、なかなか女性が選ばれてくるということがありません。現在、組門徒会員の女性の占める割合は、5,4%です。そのため、組門徒会を選出母体とする教区門徒会、そしてその教区門徒会を選出母体とする参議会に於ける女性の占める割合は、それぞれ2,1%、4,6%という低いものに止まらざるを得ません。そこで、組門徒会に於ける女性会員の増加を期すべく、現在選出している会員の他に、必ず一名女性を選出していただきたいというものです。3期9年を期限とする時限立法としての提案であります。

実際問題となると、選出したい女性がおられても受けていただけないというようなことも起こったりして、3分の1を女性が占める組門徒会員の構成にどこまで近付けるか、いささか心配ではありますが、少しでも前に進めるには大事な提案であると思われます。

 A   男女平等参画と男女共同参画

男女の壁を越えて共に宗門運営に参画する道を開くことを課題とする表現に、上記の2種類の表し方が宗門にはあります。この課題を推進することを職務とする部署である女性室が、その機関紙「あいあう17号」では、宗門に関わる一人ひとりが、性別による固定的役割分担を超えて対等な立場において参画し、御同朋・御同行として平等なる関係を回復したいという願いから、男女平等参画という表現を大事にしたいということを述べています。

ところが、女性室以外でこの課題が語られるときには、ほとんど共同参画という表現が遣われます。そこで、今議会でそのことを取り上げ質問しました。内局の答弁は、平等を目指すのは当然だが、まずは共同に主眼を置く過渡的表現としての共同参画という宗務審議会答申を引用するのですが、内局としての見解は示しません。あるいは、行政用語としての共同参画という表現とは一線を画す宗門にとっての深い意味のある共同、その例として共同教化が挙げられているが、どのような深い意味があるかは明らかにはされていません。質問主旨は、担当部署が平等参画と提唱しているにも拘わらず、共同参画を使用する理由を問うものです。そのことには答えること無く、共同と平等は通底しているとし、この二つの表現を統一するつもりはないということだけは明確にしました。

ここに、宗門が何のために女性室を設置しているのか、そして、内局のリーダーシップとは何かが、改めて問われている思いを強く持ちます。


1.  宗議会議員選挙の被選挙資格を25才以上のすべての有教師に付与する。

  現行の条例では、有教師が立候補するには、所属寺院・教会の住職・主管者あるいは代務者の同意を必要としています。この同意という要件は、我々の宗門をどのように見るのかということと無関係ではありません。宗門を寺院の存続保持を目的とする同業者の連合体とみるのか、あるいは、教法を根拠とし、同朋の公議公論により運営され同朋社会の顕現を目的とする集まりとみるのか。如何なる宗門を選び取ろうするのかが問われているのではないでしょうか。

2.  坊守の規定を寺族、又は帰敬式を受けた門徒のなかから、住職、総代とともに願いでたものとする。

現行では、坊守は住職の配偶者、もしくは配偶者のいない場合は20歳以上の寺族から選定するとなっています。ところで、家族の形態は様々であり、また、寺族と門徒の壁を越えることが課題とされている中で、坊守自身が自ら選び取ることを明確にすることを願っての発議であります。

 3.  教区会議員選挙の被選挙資格を25歳以上の有教師に、選挙資格をすべての有教師に付与する。

現行の条例では、教区会議員選挙の選挙権・被選挙権は住職・主管者にしかありません。教区会という教区の予算や諸法規を審議する場が、住職のみに任されています。

この件に関しては、今議会にも仙台教区と高田教区から選挙権・被選挙権拡大の請願が出されています。意欲あるより多く方々が教区の議会に参画できる道を開くことは、教区の活性化を図るうえからも肝要であり、同時にまた、同朋公議のうえからも見過ごせない課題であります。

   残念ながら、3議案とも賛成少数で否決されました。


  

16年にわたり宗議会議員としてご苦労されました北海道教区選出の大沢議員が昨年、7月に亡くなられて、はじめての定例議会であります。530日に議場で追悼法要が勤められ、同期であった大阪の林議員が追悼演説をされました。

大沢議員は、選挙制度には早くから取り組まれ、また過疎・過密問題にも大きな関心を寄せておられました。大沢氏の意志を実現すべく着実な歩みをしたいと意を新たにしているところです。

今議会では、代表質問をする機会を得ました。ここには、長くなりますので載せませんが、8月の「真宗」に掲載されますので、ご確認いただければ幸甚であります。


       

集団的自衛権の行使容認に反対する決議

今、日本政府は、憲法を「改正」せずとも、その解釈を変更することで、これまで禁じられてきた集団的自衛権の行使を可能にする動きを加速させております。集団的自衛権の行使が容認されれば、日本人が国外で人命を奪い、奪われるという事態が現実となりかねません。このことは、戦後、日本が堅持してきた戦争放棄の国是を捨て去ることです。

 私たち真宗大谷派宗議会は、この度の集団的自衛権の行使容認への動きに対して、深い悲しみと大きな危惧を覚え、強く反対の意思を表明するものであります。

 戦後50年にあたる1995年、私たちは、過去において、仏法の名を借り戦争に協力してきた自らを問い直し、「人間のいのちを軽んじ、他を抹殺して愧じることのない、すべての戦闘行為を否定し、さらに賜った信心の智慧をもって、宗門が犯した罪責を検証し、これらの惨事を未然に防止する努力を惜しまない」という「不戦の誓い」を表明いたしました。

 私たち念仏者は、地獄・餓鬼・畜生という三悪道に他ならない現実に立ちながら、浄土を願うものです。その私たちに対して、「仏の遊履したまうところ(中略)、国豊かに民安し、兵戈用いることなし」と不殺生を呼びかける教えの言葉は、三悪道たる現実に対する悲痛な叫びであるとともに、非戦への深い願いであります。その願いに応えることは、「人のいのちを奪う戦争を絶対に許さない」と言い切るところからしか始まりません。

 親鸞聖人は、念仏を誹謗する人々に対して、「念仏せんひとびとは、かのさまたげをなさんひとをば、あわれみをなし、不便におもうて、念仏をもねんごろにもうして、さまたげなさんを、たすけさせたまうべし」と述べられております。さまざまな意見、立場の人たちと丁寧に対話していくことをいとわず、私たちは「不戦の誓い」の具現化に努めてまいります。

 

 2014年6月10日          

                          真宗大谷派宗議会