「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(8)-数がわからない

−静岡県の情報公開条例について考える−


意見陳述では「会議の公開」も条文に入れるように求めた。それにはこ のような背景がある。

1994年に発行された「新聞記者を考える(*)」の中に出てくる、1990年 代はじめ頃の静岡県の審議会(法律や条例に基づいて設置されたもの) の数は、63となっている。 現時点で、静岡県の人事給与室が把握している審議会等の数は100程度 ということである。

県のホームページで公開されている審議会等の議事録は、2年ほど前に 県の情報公開室が行った調査をもとにして、以後、連絡があるごとに適 宜変更を加えたものということだが、その数は約175程度になってい る。 このうち、法令や条例に基づくものを数えてみると全部で94くらいあ る。残りの80くらいが要綱や規程などによって作られているもののよう だ。

しかし、この数には、昨年12月につくられた行政評価委員会などのよう に、含まれていないものがある。この委員会は、人事給与室で把握され ている審議会等の数にも含まれていないという。 これ以外にも、短期間のみ設置されたりする場合など、内部の判断だけ で設置されているものがあり、こういうものも含めた審議会等の総数は よくわかっていないということだ。

それでは、県民の立場で、審議会や委員会などの委員となって県の政策 に参加している人は、いったいどのくらいいるのだろう?

人事給与室で把握している審議会等の委員の延べ人数は、現在のところ 1,460人程度で、あて職を除くと979人となるが、兼任を数えない委員の 実数は今のところ把握していないという。 人事給与室で、内規として用いている任用基準には、重複任用の制限 (あて職を除き1人3件以内)があるというが、条例改正について審議し ている情報公開懇話会の委員の中にも、7件、8件という審議会等の委員 を兼ねている人がいることからみて、どの程度の人が、どの程度の審議 会等の委員を兼任しているのかはよくわからない。したがって、何人く らいの人が委員として県政に参加しているのかは見当がつかないのだ。

結局のところ、審議会等の数も、参加している委員の数も、現時点では 誰もわからないということになってしまうようである。 今後、県民参加の推進という名目でこのような審議会形式の機関が増え てくるようなことがあれば、ごく一部の、委員として選ばれた限られた 県民を除いて、政策の形成過程は、県民にとってますますわからないも のになってしまう。

では、これらの審議会等のうち、公開を認めているものはどのくらいあ るのだろう? 情報公開室の説明によれば、静岡県の審議会のうち、現在のところ、審 議の公開を定めているのは、情報公開懇話会を含めて3つくらいである とされている。 しかし、先に例にあげた静岡県行政評価委員会でも、事前に公開とはし ていなかったものの、傍聴希望者が1名いたため、委員7名の承認を得て その場で傍聴を認めたという。

一方、昨年暮に開催された2000年問題の対策会議は、県民への適切な情 報の提供を目的の一つとした、かなり大がかりな会合であったが、傍聴 を希望したところ認められなかった。

だとすれば、公開、非公開の区別はどのような基準に基づいているのだ ろうか?

各審議会等の担当者のその時々の判断によって、公開されたり、非公開 になったりする。結局のところ、審議会等の数も、参加している委員の 数も、公開になっている審議会等の数も、そして、それがどうしてそう なっているかという基準すらも、何もかもわからないということがわか ってくるのである。

これではいくら個々の文書を公開することにしても、全体的な意思決定 の流れは不透明のままだ。「開かれた県政」という情報公開条例の主要 な目的は、これでは達成することは無理なのである。

(つづく)

  *「新聞記者を考える」-新聞労連編 
  (「新聞人の各種審議会への参加について」天野勝文)

−−−−−−−−−− 参考:

昨年4月に、中央省庁等改革推進本部が「中央省庁等改革の推進に関す る方針」を決定。
「審議会等の整理合理化に関する基本的計画」の中では、審議会等の整 理合理化をはじめ公聴会を重視し、いたずらに審議会等を設置すること を避けること、委員の選任について、@府省出身者の抑制、A高齢者を 原則として委員に選任しない。B兼職の総数は原則として最高3とする こと(特段の事情がある場合でも4を上限とする) 、再任は妨げないが 一の審議会等の委員に10年を超える期間継続して任命しないこと、委員 に占める女性の比率をおよそ10年以内に30%に高めるよう努めることな どを決めている。



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