「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方〜意見陳述〜

−静岡県の情報公開条例について考える−

意見陳述要旨

1 答申の出し方について

    ・情報公開条例という名称に変え、幅広い情報提供施策について定める条例に一新すべきこと
    ・答申には、新条例の位置付けを明確に打ち出すべきこと
    ・県政全体の中でどのような役割を果たす条例となるべきかを明確に位置付けること
    ・公平性や透明性、地方分権の推進、県民参加をもとにした「開かれた県政」の実現にむけて、どのように説明責任を果たし、どのような形で県民と交流をしていくのかという問題として重視すべきこと
    ・静岡県地方分権推進計画の内容を反映させるべきこと
    ・静岡県新世紀創造計画の中に位置付けること
    ・NPO活動への支援や高度情報化の推進との関連を明確にすること
    ・今後の改正についての検討や運用を県全体で進めて行けるような方向付けを与えること

2 改正内容について

    (1) 手数料について

    ・閲覧手数料は無料とし、その他の手数料の低減化を打ち出すこと
    ・県民サービスセンターのコピー料金程度とすること
    ・手数料について早期の改正を打ち出すこと

    (2) 審査会について

    ア 第三者性の問題
    ・公平性と第三者性を重視すること
    ・不適正な任用が続いていた経緯を重視し、「県の利害関係者を含まない」という規定を盛り込むこと

    イ 公開・非公開の問題
    ・審査会を非公開とする条文は入れないこと
    ・審議を公開する方向を検討すること

    ウ 建議機能について ・審査会に独立した建議機能を与えないこと
    ・審査会は審査会の問題を客観的には検討できないし、審議の遅延につながること
    ・独立した建議機関を設け、苦情処理や制度の検討を行わせること
    ・建議機関には公募委員を入れ、会議を公開とすること

    (3) 情報公開の総合的推進について

    ア 情報提供施策の充実について
    ・情報公開の総合的推進の条文を入れ、情報提供施策の充実に重点を置くこと
    ・広く一般に提供すべき情報は情報提供で応ずるべきこと
    ・公文書開示制度を使わなくても情報提供ができるようにすること
    ・貸し出しなどの気軽な情報交換ができるような柔軟な制度とすること

    イ 請求手続の簡便化について
    ・職員の負担をできるだけ少なくするように手続の簡便化を図るべきこと
    ・十分な閲覧ができるような体制を整えること
    ・周辺環境の整備を行うこと

    (4) 会議の公開について

    ・会議の公開を明文に規定すること
    ・審議会等の状況を公表すべきこと
    ・審議会の公開と県民の参加に取り組む方向を打ち出すこと

  以上



 意見陳述内容

 アスベストについて考える会と申します。
 本日は、意見陳述の機会を設けていただきましてありがとうございます。
 私は、懇話会の答申において、新条例を県政全体の中でどのように位置付けるのかという問題と、条例の改正の内容について、手数料、審査会の問題、情報提供制度全体の問題、及び会議の公開の問題の4点について意見を述べたいと思います。

 まず、現行の「静岡県公文書の開示に関する条例」は、今後、情報公開条例という名称に変更して、現行のように、単に公文書を請求する制度を定めているだけの条例ではなく、インターネットによる情報提供、審議会の公開、その他、政策の意思形成過程の公開など、幅広い情報公開に関する条例として一新されるべきであると考えています。

 提言の作成にあたりましては、この点を踏まえた上で、新しい条例が、県政全体においてどのような位置を占めることになるのかという点を明確に打ち出していただきたいと思います。
 情報公開条例は、県民に県政についての情報をどのように提供しながら、公平性や透明性を確保しつつ行政を進めて行くかについて県の基本的な在り方を定めるものです。

 今後県が、地方分権の推進の立場にたって県政を運営するにあたり、県民参加をもとにした「開かれた県政」を実現するために、どのように説明責任を果たし、どのような形で県民と交流をしていくのか、新しい情報公開条例はその基本的な方向を定めるものとなると考えられるので、そのような位置付けが、県にとっても県民にとっても十分に理解することができるように、それによって、県や県民が一体となってこの条例の改正や制度の運営にあたることができるように配慮していただきたいと思います。

 特に意見でもお送りしていますように、静岡県の地方分権推進計画の中でも、情報公開と県民参加は非常に重要な位置付けを与えられております。

 また、静岡県新世紀創造計画では、「計画推進のために」で「積極的な県民参加」をうたい、「県づくりを進めるにあたって、県民の意向を県政に積極的に反映していくためには、県民の主体的な参加が不可欠で」あるとし、「県政の広報はもとより、県が有する情報の積極的な提供に努めながら、常に県民の声に耳を傾けるとともに」「さまざまな参加の機会を設けて多用な県民参加を推進し、県民の意識や暮らしに根ざす施策を展開していきます。」としています。

 これらの計画を推進するにあたって、この条例の改正と今後の運用が非常に大きな役割を占めるのだという視点を重視し、また、県が現在力を入れている、NPO活動への支援や高度情報化の推進とも直接的な関連性を持つものであるという点を明確に示してください。

 提言は条例の改正内容に影響を与えるだけでなく、今後改正手続を進める上で、県全体の体制に大きな影響を与えるものと思います。
 この条例についての各部署の受け止め方は、現在は、単に、請求があれば自分たちも文書を公開していかなければならないというような漠然とした関連性があるという受け止め方しかされていないので、そのような受け止め方ではなく、条例自体が自分たちの施策と直接関連性を持っているのだという受け止められ方に変わっていくことができるようにしていただきたいと思います。

 続いて、条例の改正内容について4点述べます。
 一つめは手数料についてです。

 前回の懇話会では閲覧手数料は廃止する方向が明確にされたものと思いますが、コピー代などの他の手数料については、できる限り低額にするという方向は示されなかったという印象を受けました。
 大量請求の場合などいろいろ難しい問題があることは十分承知しておりますが、静岡県の場合には、今のところそのような事例はなく、権利の濫用と思われるような請求も見出せません。また、公益目的の請求がほとんどとみられるといった状況を踏まえて、できる限り低額であることとし、できれば「県民サービスセンターのコピー料金程度」という形で提示していただきたいと思います。

 また改正にあたりましては、現行の手数料制度が全国的に見て改善の必要性が高くなっているという現状を踏まえて、できる限り早急に手数料だけは低額に変える必要があるという内容を、提言の中に盛り込んでいただけるようにお願いいたします。

 2点目に審査会の問題として3つあげます。

 情報公開審査会は、審議期間が長くなっている点が問題とされていますが、それ以上に第三者性と公平性をどのように確保するのかという問題があります。
 発足当時から昨年9月まで、審査会の会長を勤められていた牧田委員は、同時に、静岡県の顧問弁護士を兼任され、いくつかの裁判の訴訟代理人を担当されていたと聞いています。
 私たちはこのような委員の選任方法は、審査会の第三者性と公平性を確保する上で非常に大きな問題があるということを主張してきましたが、現時点に至るまで、県の見解として不適切な選任であったという見解は示されておりません。

 10月に委員が交替した理由は、10年を目途にという内規に基づいて変更されたということでした。しかし、実際には、内規として示されているものの中には、他の審議会の委員を兼任する場合でも、原則として3つ以内という内規もあるわけですが、この懇話会の委員の中でもそれ以上兼任されている方もおられるなど、委員の選任は全体としても非常に不透明でわかり難くなっています。

 特に審査会については、知事の諮問機関とはいっても、不利益処分の救済機関という非常に重要な役割を持っており、審査会の第三者性と公平性は公文書開示制度の中核を担うものです。
 規定の中に、知識や経験を有するものというような規定は入れることは考えておられるかと思いますが、とくにそれに加えて、「県の利害関係者を含まない」という規定を盛り込んでいただくようにしてください。

 次に、審査会は現在非公開で、議事録も非公開とされています。

 法律や他の条例でも非公開を条文で定めている例があるので、静岡県でもそのような規定を入れて行くことが検討されているかと思いますが、特に静岡県に限って、そのような規定を置くことには反対します。

 静岡県の場合、審査会の委員の選任の考え方に問題があることは先に述べたとおりですが、場合によっては昼食を食べながら審議をすることがあるという説明を受けており、そのようなことから考えて、非公開として審議全体に全く県民の目が届かなくなってしまうのは非常に問題があるので、非公開という規定を入れることは適切ではないと思います。
 聞くところによると、港区などでは、意見陳述などをはじめとして審査会の審議自体も公開することがあると聞いており、他の自治体でも議事録は支障がない部分に限り公開対象となっていたり、情報公開請求があれば公開対象となっている場合もあるようです。このような方法によって、審査会の審議を何らかの形で公開することができるような方法を導入するべきです。 

 3点目に、前回の懇話会では、情報公開制度について検討したり、運用にあたっての相談や苦情処理等のため、審査会に建議機能を与えるという案が出されていました。しかし、私たちは、審査会にそのような役割を新たに付与することには反対しています。

 そのような役割は、別の独立した機関に委ねるべきであると思います。
 前回の懇話会でも、もと審査会の委員がお二人加わっておられるということもあってか、議論自体がほとんど深まらなかったように思いました。やはり遠慮もありますし、批判的な意見は出し難いということがあると思います。また、審査会は、審査会自体の問題について客観的に議論することはあまり期待することはできません。
 さらに、審査会の審議は現在でも滞っており、建議内容まで審議するとなればもっと審議が遅れることが考えられます。

 静岡県の場合には、委員の選任をはじめ、審査会のあり方自体に問題があることも十分考えられるので、審査会にそのような現在以上の建議機能を新たに与えるべきではなく、建議のための独立した機関をつくって、苦情処理や制度の検討などを行わせるようにすべきです。そしてその機関は公募した委員を含む委員によって構成されることとし、審議は原則として公開とし、透明性を確保するようにするべきであると思います。

 3つめに、情報公開制度の全体の問題として3点を挙げます。
 第一に情報公開の総合的推進の条文を入れて、情報提供施策の充実に重点をおくことです。

 国の情報公開制度でも「特別の理由による減免」を認めており、この場合の判断基準として「一般に周知させることが適当と認められる場合」をあげ、例として「人の生命等を保護するため公にすることが必要である情報」や「公益上の理由による裁量的開示により開示しようとする場合」をあげています。
 東京都では、何回も請求があった文書についてはできるだけ公表するように努めるという規定が置かていますが、はじめての請求であっても、報告書や簡単な資料のようなものや多くの人に関係があると認められる文書など、一定の場合には、公文書開示制度を使わなくても提供できるようなシステムを作っておくことが必要であると思います。
 静岡県の場合には、このような方向性をより強く打ち出した上で、一般に公開するべきと考えられる場合には、開示制度を利用しないで情報提供されることが適切であると定めたり、公益目的の請求と認められる場合には、できるだけ情報提供により行うといった内容の規定を設けていただきたいと思います。

 それによって、広く公表すべきと考えられるようなケースでは、そのまま県民サービスセンターでコピーできるようにしたり、報告書などの気軽な情報交換ができるような柔軟な制度とすることをお願いいたします。

 次に手続の簡便化の問題があります。
 請求手続が面倒であると利用する側が面倒であるだけでなく、職員の負担も増えてしまいます。

 請求の際の立会いに大勢の担当者が同席したり、受付印を押すだけのためにわざわざ職場に戻らなければならなかったり、細かな内部の手続のために無駄な手間暇を要するのは適切ではないと思います。
 とくに閲覧の場合、現在では担当部署の職員が閲覧中同席しており、ほとんど自由に閲覧をすることができなくなっています。
 今後は、開示中の文書は情報公開室で管理して開示においては担当者が同席しなくてもすむようにしたり、情報公開室で自由に閲覧ができるようにして、担当者は立ち会わないなど、請求された文書を自由に閲覧する場所や時間を与えるようにしてほしいと思います。
 このようなことを中心に、運用における手続を簡略化して、できるだけ簡単に事務処理ができ、自由な閲覧ができるような運用が可能となるように、周辺環境の整備をすることを明記してください。

 最後に審議機会等の会議の公開について述べます。

 静岡県の場合、現在170程度ある審議会のうち、会議を公開しているのはわずか数件であるといわれています。  先日、人事給与室でお話をうかがいましたが、同室で把握している審議会等の数は100程度で、各部署の権限で作っている審議会等においては、設置されているものがあってもわからない場合があり、審議会等の総数や委員の実数等も十分把握されていないということでした。

 審議会等の会議の公開は、意思形成過程の公開そのものであり、県民の参加を推進する上で非常に重要な意味を持ち、他の自治体でも条例に入れて重視しているところでもありますので、ぜひとも、会議の公開を条文に明記し、それによって、審議会等の情報が県民にわかりやすい形で提供され、県民参加の実現に寄与することができるようにしていただきたいと思います。

 以上です。


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