「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(9)-請求と提供

−静岡県の情報公開条例について考える−



公文書の開示請求をする文書と、提供される資料との違いはどういうものだろう。
例えばこういうことがある。

静岡県では、平成8年に浜岡原発の緊急時に備えて「避難計画マニュアル」を作成しているが、このマニュアルは、現在のところ開示請求しなければ見ることができないとされている。

このマニュアルは、平成8年に400万円あまりの委託費で県が鞄環協に委託したもので、作成部数は「報告書」と「避難経路図」、ともに100部になっている。 委託契約の内容には「緊急時に備え、周辺中住民の放射線被ばく防護のため具体的活動性のある避難計画マニュアルを作成する」とあり、この2月1日には、3年に1度の原子力防災訓練行われたので、その前に何とか 公表資料に加えてほしいという要望をしていたが、その願いは結局は受け入れられなかった。

「避難計画マニュアル」という、住民にとって最も基本的な資料となるこの報告書は、公表される資料には含まれていなかったわけである。

100部という報告書が、周辺の町の担当者や、電力会社や、国や他の原発立地県に配布される一方で、県民サービスセンターや現地の情報コーナーにも置かれることもなく、住民の目の届かないところに追いやられ てしまった。 請求をすれば閲覧などは可能だというが、請求には手間がかかり、閲覧するにも担当者の立会いのもと、コピーするにも、A4の「報告書」とB1 版の「避難経路図」が、どのくらい手数料を支払わなければならないかもわからないことになる。

一方、同じ防災局の所管であっても、地震による被害想定は、克明な地図、死者想定も含め、インターネットで誰でも見ることができるようになっている。

何がこの違いをつくるのだろう。
さらにこのようなこともある。

都道府県の情報公開担当者たちは、年に1回程度、持ちまわりで情報公開研究会を開いている。昨年は富山県で行われ、静岡県の担当者も1泊で参加しているという。 各県から議題を出し合い、条例の運用上の問題や事例報告などを行っているというが、この資料は情報公開で請求する資料になるという。

他の都道府県で開示請求の対象になっていて、異議申立てが出された経過があるようだが(石川県H8、9年)、東京都の情報公開制度懇談会では、議題一覧などが懇談会の資料として提供されている(第4回懇談会H9.12.24)。 今回の条例改正の検討にあたって、懇話会の資料として役に立つものが多くあるのではないかと考えたため、静岡県の情報公開室にも目次などの提供を求めていたが、現段階でまだ提供はされていない。

開示請求をすれば閲覧などができる。
しかしなぜ、情報公開制度の検討をするために公費を使って全国の研究会議に参加した時の資料が、条例改正について検討するための資料として提供されることもなく、個人が高額の費用を負担して、開示請求をしなければ見ることができなくなっているのか、どうしても理解できない。

私たちが簡単に見ることができるものと、費用を負担して出してもらわなければならないものとの区別は、誰がどうつけるのか。それを区別することが可能なのかどうか。

私たちが、できるだけ情報提供で応じるようにするべきだと主張するのは、このような例がいくらでもあることを知っているからだ。 

 (つづく)



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