「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(10)-県民参加と審議の現実

−静岡県の情報公開条例について考える−



2月21日に行われた静岡県の第6回情報公開懇話会は、公聴会などで出された県民の意見に対する懇話会の見解をまとめる日になっていた。

このとき取り上げた項目は6点。
県議会、名称、個人情報保護制度、オンブズパーソン制度、会議の公開、運営協議会の6つの問題について、会長の宮下氏が自分自身の見解を述べ、それに対する委員の意見を聞く形ですすめられた。
しかし、次々と述べられる宮下氏の見解に対して、委員からは最後の一つを除き意見らしい意見は出されず、ほとんどの問題が、他の委員の同意を求める形で終わってしまった。大まかに言えば、県民から提起されていた問題は、ほとんどが会長の一言で片付けられてしまう結果になってしまったわけである。

この審議を見る限り、この審議の前にすでに見解は固まっていたようだ。審議過程を公開しているとはいっても、意見はすでに別の場所で作られていたのだろう。
もともと、形だけの審議なのだという暗黙の了解の上で、この懇話会は始まっていた。そうでなければ、ここで選出されている10人の委員で、わずか5回や6回の議論を経るだけで提言を出すなどという取り組み自体が不可能な取り組みだったはずだ。それは誰の目からもはじめから明らかなことだった。
それはわかっていても、県民が意見陳述までして提出していた意見について、懇話会で審議らしい審議がほとんどなされなかったことについての失望は大きかった。

求めに応じて県民から意見が出されているのだから、そのときの委員の考え方とは異なる場合でも、意見が出されたという事実を尊重して、少なくとも、どのような方向でならばそれを実現することが可能なのか、検討という言葉に値するだけの議論はすべきだった。
これでは意見提出に何の意味があったのか、県民参加というスローガンを掲げ、県民からの意見を募集するという手続にどれだけの価値があったのか、疑問が残るだけだ。

一方、この日、傍聴に訪れた県民はわずか1、2名。
県にとっても県民にとっても厳しい県民参加の現実をつきつけられて、この日の審議はともかくも予定通り終了したのであった。

(この日の資料やここでの一致点をもとに検討された「提言の素案」は、県のホームページに出ています。) http://www.pref.shizuoka.jp/~soumu/sm-07/konwa/061.pdf

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参考:第6回懇話会の審議の概略

この日の前半の審議の中で取り上げられた項目は、県議会の問題、名称の問題、個人情報保護制度の問題、オンブズパーソン制度の問題、会議の公開の問題、運営協議会の6点。

これらについての簡単な結論は次の通り。

    ・県議会の問題は議会の自主的な判断に任せる。
    ・名称の問題は最後に決める。
    ・個人情報保護制度の問題は、別途、個人情報の保護のあり方について検討して行くべき。
    ・オンブズパーソン制度の問題は、苦情処理機関だから情報公開に限定されるべきではなく、別途必要があれば独自に検討されるべき(この懇話会で議論されるべきではない)。

    ・会議の公開については、政策形成の過程を明らかにする重要な要であり、この懇話会で取り上げてつけたし的に議論するべきではない。リアルタイムでの情報は制度の中ではなじまないという考え方になる。
    (稲葉委員より、「行政全体の中で取り組む大きなもの、真剣に取り組むべきものである」という補足的な意見があった。)

    ・運営協議会の設置については、審査会に建議機能を持たせるという意見でまとまっていると考えたい。運営の中で出てくる問題については審査会に建議機能を持たせ、その手続は公開するとし、運営協議会はこの制度の対象からははずすでよいのではないか。
    *これに対しては、松本委員より反対の意見が出された。 この意見の概略は「審議時間が足りないことから、時間的にデメリットがあり実際の中では無理。公募なども、理想のように見えるがしっかりと考えてやって行かなければならないのではないか。」というもの。
    しかし、このような委員会を常時情報公開室で運営していくのはたいへんであることや、役割が不明確、中味のない議論をする協議会を作ってしまうことになるのではないか、条例の改正など大きな問題になったときには別途設置すればいい、などの意見が出だされて、最終的には、とりあえず宮下会長の提案が残された形になった。

(以上概略。詳細は後日県から発表される議事録でご確認下さい。) --

 (つづく)



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