**回答はこちらです**(1997,10,16)
1996年12月10日
- 静岡県知事 石川 嘉延 様
アスベストについて考える静岡県民の会
- 静岡県のアスベスト対策についての要望
- 私達は、静岡市丸子職員住宅の取り壊し問題をきっかけとして、県の行っているアスベスト対策について関心を持ち、今年4月以降、これまで、関係する各課に対して、アスベストについての対策をお聞きしてきました。
- その結果として、県のアスベスト対策に関して、特に、次のような問題があることがわかってきました。
- 昨年1月に発生した阪神・淡路大震災の後、アスベストによる大気汚染が大きな社会 問題となり、地震の際に発生するアスベストの飛散が、深刻な問題としてとらえられる ようになったのにもかかわらず、静岡県は、これまで、地震対策の一つとしてアスベス ト問題を考えたことがなく、特別の対策もたてていないばかりか、その必要性があると も考えてこなかった。
- 昨年4月から、労働安全衛生法に基づく特定化学物質等障害予防規則等の改正により、 建物の解体の際に、吹き付けアスベストだけでなく、アスベスト含有建材についても、 事前調査や飛散防止対策などが求められるようになったことを、県の関係する各課が知 っていなかったため、それによって、解体作業員や、周辺住民の健康を危険にさらし、 環境に悪影響を与える可能性を生じていた。
- この原因の一つとして、県が、労働省関係の法改正や通達を、具体的に県政に反映さ せてゆくための体制を備えていないことがあげられる。このため、今回のような解体作 業者等の安全対策の問題など、労働者保護の対策が重視されにくい側面がある。
- 県の各課は、これまで、度々、県内の公共施設から吹き付けアスベストはすでに除去 済みであると発言してきたが、県立高校、県営住宅を含む県のすべての施設について、 それを明らかにする書類はなく、現在のところ、吹き付けアスベストが、県の施設の、 どこに、どの程度残されているのか、または、除去済みであるのか、全く確認できない。 特に、県営住宅の場合、多くの住宅で使用されている吹き付けひる石には、製品によ って、20%以上もアスベストを含むものがあったことがわかっているが、そのような 建材が使用されているかどうか、書類上は確認する方法が見つかっていない。
- 解体に際しては、労働安全衛生法や、廃棄物処理法上、アスベスト含有の有無につい て検査する必要が出てくるが、関連する課では、今の時点ですぐに調査する必要はない と答えている。
- 廃棄物対策室では、当初、廃棄物処理法上、吹き付けアスベストの除去などで生じる アスベスト廃棄物は、特別管理産業廃棄物に該当するが、遮断型と、一定面積以上の安 定型、管理型の最終処分場に埋め立てるように定められていると回答した。
- アスベスト廃棄物のような特別管理産業廃棄物を、安定型の処分場に埋め立ててよい とする同室の見解は、1991年の法改正以降、特別管理産業廃棄物について厳重に処 分方法を定め、罰則規定まで設けている同法の最も根幹にあたる部分について、間違っ た理解をしていたことを示し、県全体の廃棄物行政が、これまで適正に行われたかどう かにかかわる極めて重大な問題をはらんでいる。
- この回答は、厚生省に問い合わせた結果、その後訂正されたが、その経過で、アスベ ストの処理に関して厚生省の監修で発行されている『廃石綿等処理マニュアル』につい ても、そのようなマニュアルが出されているという事実についてさえ、全く知らなかっ たことも明らかになった。
- また、その後の話し合いにおいて、最終処分場のリストが作られていないこと、特別 管理産業廃棄物の処分などについて、業者が県の保健所に提出することになっている報 告書を、一度も取りまとめたことがなく、今までいくつの報告書が出されているかとい う点すらも把握していないことがわかった。
- さらに、それに関する話し合いの中で、廃棄物は、処分しようとする人が廃棄物であ ると表示をして初めて廃棄物となるのであって、そのように表示されていないものがど のように扱われても、廃棄物にあたらないので、同室ではそれに対して対処できないと 発言した。
- このような静岡県の固有の状況に加えて、一般的な背景として、アスベストの危険性がすでに世界的にも明らかにされ、1980年代から、各国で使用禁止などの措置が取られてきているにもかかわらず、日本においては、戦後大量に使用されてきたばかりか、今なお、毎年、20万トンにも及ぶ膨大な量のアスベストが使用され続けており、スレートや、木造住宅の屋根材などの建材をはじめ、広範囲に使用され、我々の周囲にあふれているという日本の特殊な状況があります。
- また、そのような状況にも拘らず、県職員も含めて、県民全体に、アスベストについての知識が乏しく、アスベストによって発生する健康被害や環境問題についての関心が極めて低いという実態があります。
- こういった背景も含めて考えてみると、県の現在のような取り組みでは、アスベストによる被害から、我々の健康や環境を守るために十分とは思えないので、今後、このような状況を改善するため、真剣にアスベスト問題に取り組み、現在の時点で、どのような対策が必要であり、また可能であるのか、できる限り検討していただきたいと思います。
- 以上のような理由から、私たちは、静岡県のアスベスト対策について下記の内容について要望し、これに対する知事のご見解を求めます。
記
- 地震防災の観点から、わが県にとって、アスベスト問題が、非常に現実的な、差し迫 った危険性をもった、重要な問題であることを認識し、昨年1月の阪神・淡路大震災の 後で発生したアスベスト問題が、将来静岡県で起こる地震の際に、再び繰り返されない ようにようにするため、現在可能な対策を早急に検討して下さい。
- 解体工事によるアスベストの飛散を防止し、アスベストによる被害から、解体工事を 行う作業員をはじめとする県民全体の健康を守るため、どのような対策が必要であるの か、早急に検討し、有効な対策をたてて下さい。
- 県有施設において、現在、アスベストを含有した吹き付けがどの程度使用されている のか、実態を調査し、その結果を、使用者や他の県民に公表して下さい。
- これらの対策について検討するため、協議機関等を公式に発足させ、組織的に対策を 検討する体制を整えて下さい。
また、アスベストに関する、県民からの疑問や相談を受け付ける窓口を作り、県民に アスベストについての十分な知識を与えるように、できる限り努めて下さい。
- 環境基本条例の趣旨にのっとり、県が所有する施設の建築にあたり、アスベストを含 有する製品を一切使用しない方針を明らかにし、アスベスト含有建材の代替化を促進す るため、県が率先して取り組んで下さい。
- この方法の一つとして、今年完成した県庁別館において、アスベストを含む製品が一 切使用されていないことを、来庁者にもわかるように表示して下さい。
- 以上について、別紙(別紙1、別紙2に、それらの内容を検討した上で、今後、アスベスト問題について、県がどの様に取り組むつもりであるのか、 できるだけ早く明らかにして下さい。
以上
別紙 1
静岡県のアスベスト対策について、検討を求める具体的内容
- 地震対策に関連して
- 東海地震の被害想定で倒壊すると考えられている建築物のうち、吹き付けアスベスト 等(大気汚染防止法の改正により、解体の際、届け出が義務付けられるようになる物) が使用されている建築物が、県下にどの程度あるのか推定し、今後、被害想定の項目に 加えて、その結果を公表して下さい。
- 地震の後の復旧工事で必要となる、倒壊した建物のアスベスト除去方法について検討 し、解体、改修方法についての指針等を作り、あらかじめ解体業者等に知らせておいて 下さい。
- アスベストを使用した建築物の倒壊により、解体、改修工事によって、どのくらいの アスベスト廃棄物が発生するのかを想定し、これらが適正に処理、運搬、処分されるよ うに、あらかじめ処理業者、運搬業者、処分業者等に、廃棄方法について熟知させ、処 分地を確保できるように準備して下さい。
- 静岡県地震対策推進条例第8条の地域防災技能者、同第10条のボランティアコーデ ィネーター、同第32条地震被災建築物応急危険度判定士、同第37条に基づいて調査 等を行う職員等の講習等において、地震の後の解体工事等でアスベストの問題が発生し てくることについて説明し、被害を防ぐための方法を知らせてください。
また、それらの人達に、アスベストが安全に除去され、適正に処理されるように、監 視する役割を与えて下さい。
- 地震に伴うアスベストの飛散によって被害が生じるのを防ぐため、解体業者や、住民 が注意するべき点についてまとめたパンフレットを作成し、市町村や、関連団体、地域 の自主防災組織などに配布し、アスベストの危険性について、県民に積極的に知らせて ゆくようにして下さい。
特に、アスベストを使用した倒壊した建物に、不用意に住民が入ったり、解体現場に 近付いたりすることがないように、県民に注意をするように呼び掛けて下さい。
- 阪神・淡路大震災の後、13万枚以上の防じんマスクが、ボランティアの方達を中心 に配られ、また、静岡県から派遣された職員を含む解体援助活動においても、3千枚の マスクが配られたということです。
現在、県の備蓄品の中には、防じんマスクは全く含まれていません。地震の際発生す る倒壊建築物の解体作業には、防じんマスクは必要不可欠なので、防じんマスクを備蓄 品の一つに加えて下さい。
- 上記の内容が適切に行われるようにするため、県が今年3月に公布した、『静岡県地 震対策推進条例』を、次の点において改正して下さい。
(具体的な内容についてわかりやすくするため、別紙2において、改正の内容の例を示 しますので、参考にして下さい。)
- 吹き付けアスベスト及びアスベスト含有建材を使用した建物の、地震による倒壊と、 その後の解体に伴うアスベストの飛散を防止するため、第16条に定めている「建築 物の落下対象物の安全性の向上」とほぼ内容を同じくする、「アスベストを使用する 建物の安全性の向上」の条項を加えること
- 地震によって生じるアスベスト廃棄物を安全に処理するための体制の整備について の条項を加えること
- 被災建築物の応急危険度判定に、アスベストによって生じる危険も含めるため、同 条例第31条にアスベストの飛散のよって生じる災害を含めること
- 第37条の、資料の提出、報告、調査等の対象に、アスベストを使用する建築物も 含めるように改めること
- 解体工事などによる大気汚染の防止に関連して
- 解体工事によるアスベストの飛散を防止するため、公害防止条例等で、アスベストの 飛散を防止するために守るべき方針を定め、その内容を解体業者や建物の所有者に指導 して下さい。
または、アスベストの飛散を防止するため、解体工事のマニュアルを県独自で策定し、 市町村や民間に対し、それを守るように指導して下さい。
- 県有施設の解体工事に関係する課の職員、及び、県内の解体業者等に対して、アスベ ストについての基礎知識と、昨年4月の労働安全衛生法に関連する規則等の改正事項に ついて説明し、アスベストを含む建材の取り扱いに際し、労働者保護の見地から、どの ような対策が求められているのかについて、十分に周知させて下さい。
- 大気汚染防止法の改正に関連して、同法の改正の目的が達成させるようにするため、 県民に対し、アスベストとは何か、アスベストがどの様な危険性をもっているのか、な ぜ今回アスベストについての規制が強化されるに至ったかなどについて、十分な知識を 与えるための方法を検討して下さい。
これについては、取り敢えず、パンフレットを作成して、広く一般に対して配布する ようにして下さい。
- 環境モニタリングの項目にアスベスト濃度の測定も加え、今後、継続してアスベスト の濃度を測定する体制を作り、その結果を一般に公表するようにして下さい。
- 民間の建築物のアスベスト除去工事は、公益に資するものと考えられるので、財政上 の優遇措置を検討して下さい。
また、不適当な除去工事等によって、環境を汚染し、アスベストによる被害を発生さ せることのないように、除去業者の選定などにあたって、所有者等からの相談に応じる 態勢を整えて下さい。
- 県の解体工事において、アスベストの含有の有無にかかわらず、今後、作業者が防じ んマスクを必ず使用するように、関係各課に連絡して下さい。
- 県営施設のアスベスト含有の吹き付け材の使用状況について
- 県営住宅において、アスベスト含有の吹き付け材が、現在使用されているかどうかお 答え下さい。また、この結果については、居住者にも連絡して下さい。
- 県立学校について、アスベスト含有の吹き付け材が、現在使用されているかどうか、 教育委員会に、調査するように要請して下さい。
- これ以外の県有施設に関し、利用者の安全を守るため、また、将来の改修、解体工事 に伴う届け出の際の必要性から、また、解体に伴う除去工事費の見積もりと将来の改築 計画の参考にするため、県の施設のうち、アスベスト含有の吹き付け材が、現在、どこ に、どの程度使用されているのか、早急に調査し、リストを作って、一般に公開して下 さい。
また、管理者に対して、利用者の安全を確保するため必要な対策について指導して下 さい。
- 代替化の促進に関して
- 環境基本条例の趣旨から、アスベストを含有する建材が、今後、環境の悪化を招き、 我々の健康に対する悪影響を与える可能性があることについて、県民に積極的に知らせ、 代替化を促進するように、市町村や建築関係の団体に指導して下さい。
- 代替製品の普及のため、それらの製品のリストを作成して、民間に対する普及啓発に 努めて下さい。
以上
別紙2
静岡県地震対策推進条例の改正事項について、要望している改正の箇所を説明するための条文例
追加する条文(例)
- (アスベストを使用する建築物の安全性の向上)
第15条の2 アスベスト(吹き付けアスベスト等、及びアスベスト含有の建材等)を使用する建築物の所 有者等(所有者または管理者をいう。)は、地震に対する安全性を確保するため、アスベストの使用箇所 を定期的に点検し、地震によりアスベストが飛散することのないよう努めなければならない。
2 県は、市町村と連帯して、アスベストを使用する建築物の実態を調査するとともに、その地震に対する 安全性の確保について啓発を行うものとする。
3 知事は、アスベストを使用する建築物の地震に対する安全性を確保するため必要があると認めるときは、 当該建築物の所有者等に対し、耐震改修及びアスベストの飛散防止のための対策について指導及び助言を することができる。
4 知事は、緊急輸送路、避難路または避難地等に面するアスベストを使用する建築物について、必要な耐 震改修及び飛散防止のための対策が行われていないと認めるときは、当該建築物の所有者等に対して、必 要な指示をすることができる。
5 県は、アスベストを使用する建築物の安全性を確保するため、必要な財政上の措置を検討することがで きる。
6 知事は市町村と連帯して、地震によって発生するアスベストを使用する建築物の倒壊によって生じる被 害を防止するため、必要な措置を講じるよう努めなければならない。
- (アスベストを含有する有害廃棄物の処理体制)
11条の2 知事は、地震により倒壊したアスベストを使用する建築物等から、アスベストを安全に除去し、 適性に処理し、運搬、処分できるよう体制の整備に努めなければならない。
修正する条文(例)
第31条 知事は…倒壊等によって生じる二次災害(倒壊した建物からのアスベストの飛散によって生じる 災害を含む)を防止するため、… (下線部分を加える。)
第37条 知事は…既存建築物、アスベストを使用する建築物、落下対象物… (下線部分を加える。)
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