抜け落ちた「監視と参加」−その6−
センシティブな誤解


行政改革委員会事務局が出している速報(総務庁のホームページ)によれば、平 成8年7月に開かれた行政情報公開部会の第46回審議では、監視と参加につい て次のような意見が出されていた。

「行政の監視・参加の充実」は、このまま本当に法律用語として使えるのかと 申し上げたことがあるが、最終報告の要綱案の表現が若干立案過程で変わるだけ でも、政府が報告の趣旨を歪めたとセンシティブに誤解されそうなところがある ので、できるだけ練った表現にすることや、要綱案に書き込むことをすべきでは ないか。

これ以降、目的についての議論にはは「監視と参加」についてふれられた箇所は なく、そのまま要綱案に入れられて、11月1日の第57回最終会議で行政改革委 員長に提出された。

12月16日、委員会は「情報公開法制の確立に関する意見」を内閣総理大臣に 具申。それが「情報公開法要綱案」及び「情報公開法要綱案の考え方」である。

翌日、総務庁に情報公開法制定準備室が設置され、12月25日、行政改革プロ グラムが閣議決定される。そこで、「情報公開法制の確立に関する意見」を最大 限に尊重し、できる限り早期に法律案をまとめるべく作業を進め、平成9年度内 に所要の法律案の国会提出を図ることが決められた。

その法律案が、今回国会に提出されている情報公開法案である。

要綱案ができるまでの2年間には、14回の本委員会、57回の部会、7回の小 委員会が開かれ、各省庁や地方公共団体など、様々な方面からのヒアリングが行 われた。

途中、平成8年4月24日に出された要綱案の中間報告には、第1条目的(要綱 案の第1条目的と同じ)の後に、「監視と参加」について、わざわざ次のような 説明が書き加えられている。

「国民による行政の監視・参加」とは、国民が行政の諸活動を注視し、行政機 関に説明を求め又はその説明を聞いて行政に関する意見を形成し、行政が適正に 行われることを促すために、その意見を適宜の形で表明するなどのことを意味す る。

最終的に提出された「要綱案の考え方」では、「情報公開法の目的」について、

 このような考え方から、本要綱案では、「国民主権の理念にのっとり、行政文 書の開示を請求する国民の権利につき定めることにより、行政運営の公開性の向 上を図り、もって行政の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにすると ともに、国民による行政の監視・参加の充実に資すること」を掲げることとした ものである。 と説明している。

一方、行政改革委員会設置法(昨年暮れに失効?)第3条 (意見の尊重)に は、「内閣総理大臣は、前条第3項の意見を受けたときは、これを尊重しなけれ ばならない 」と定められていた。

平成8年当時制定されていた全国の情報公開条例のうち、42の県の半数以上の 30の県が条例になかで「県政への県民の参加の促進」にふれているという。 環境基本計画でも、「参加」は4つの柱のうちの一つとなっている。

法律の文言として適切でないと判断することが許されるのであれば、一番はじめ にあげた委員の意見はどうなってしまったのか、疑問(センシティブな誤解?) を感じずにはいられない。
                                     (1998.4.15)

もどる       監視と参加(7)法案提出までの経過に続く



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