抜け落ちた「監視と参加」−その19−
野党修正案と与党回答
1998年9月29日、衆議院会館で行われた情報公開法を求める緊急集会で示された、同日公表された、野党修正案に対する与党自民党の回答は以下のような内容でした。
9.29情報公開法の制定を求める緊急集会資料より
(野党修正要求と、*それに対する回答)
1 目的
*(政府案どおりとする。)
(1)「知る権利」の明記
*「知る権利」は、憲法解釈の問題で、内容が確定していないので、法律に規定
することは困難。
(2)「監視と参加」の明記
*政府案は、行政改革委員会意見の趣旨を的確に表す表現としたもの。
*政府案では、憲法上の理念である「国民主権の理念にのっとった」制度である
こと及び政府の説明責任を明記しており、開示請求権が重要な権利であることは明
らかにされている。
2 対象機関
「特殊法人」を対象に追加
*附則修正:「本法公布後2年を目途として、法制上の措置を講ずるものとす
る。」
*特殊法人は、公団・事業団、NTT等の特殊会社、共済組合、NHKなど
様々。開示請求権の対象とすべきかどうかは、個別法人ごとに吟味が必要。法案成
立後、速やかに正式の検討機関を立ち上げ、法制化に向けた専門的な検討を行う。
3〜7 不開示情報
*附帯決議:「開示・不開示の審査基準の策定・公表、不開示決定の際の理由の
明記等の措置を講ずる。」
3 個人情報
「公務員」の氏名の公開
*公務員には多種多様な職種があり、氏名の公開は公務員の私生活等に影響を及
ぼしかねないことから、一律に公開することは不適当。慣行として公にされている
情報に当たるものは開示される。なお、必要があれば、国会答弁等で、氏名が開示
される公務員の範囲を更に明らかにする。
4 法人情報
「非公開特約」の削除
*任意で非公開扱いを条件に情報を提供している場合、法人等の信頼は基本的に
保護すべき(アメリカの情報自由法でも、判例により保護)。ただし、非公開の条
件は、常識的に見て合理的な場合に限定している。
5 防衛・外交情報
(1)「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」の削除
*これらの情報の取扱いについては、国の安全等の利益に重大な影響を及ぼすお
それがあり、高度の政治的判断、専門的技術的判断を要するので、行政機関の長の
第一次判断を尊重すべき。諸外国の例でも、特に慎重な取扱い。なお、各大臣の判
断も、審査会や裁判所により事後的なチェックを受けるので、公正な判断は担保さ
れる。
(2)「20年経過後の公開(不開示情報からの除外)」の追加
*また、開示・不開示の判断は、請求の都度行うべきであり、20年経過しても
支障がある場合は、不開示とすべき。
6 捜査・秩序維持情報
「行政機関の長が認めることにつき相当の理由がある」の削除
*5(1)に同じ
7 意思形成過程情報
「意思形成過程情報」の削除
*諸外国や条例でも、通例保護。不開示とする範囲は、法律上、公開すると、不
当に、国民に混乱を生じさせたり、特定の人に利益を与える場合など明確になって
おり、行政機関が濫用するおそれはない。
8 手数料
*附帯決議:「実費の範囲内でできる限り利用しやすい金額とする。ただし、本
制度が濫用されないよう十分配慮する。」
*国会答弁:手数料の金額を定める際の考え方を明らかにする。
(1)「開示請求に係る手数料」の削除
*開示請求の処理に要する費用については、実費の範囲内で請求者にも公平な負
担を求めるべき。また、濫用防止の観点からも、請求手数料を無料にするのは困
難。ただし、できる限り利用しやすい金額となるよう、配慮。
(2)「公益目的」による減免規定の追加
*公益減免については、請求時に請求目的をチェックしたり、開示後にその使わ
れ方のチェックをすることは困難であり、公益減免の規定を設けることは困難。な
お、当該請求に係る公文書の公開について、特に公益性の高い必要性を認め、何人
にも広く情報提供する場合には、減免される。
9 訴訟の管轄
「地方管轄」の特例の追加
*附帯決議:「地方の機関が保有する文書等については、できる限り地方で訴え
の提起ができるようにするため、各行政機関の長の開示・不開示の決定の権限の地
方支分部局の長等への委任を推進する。」
*訴訟管轄については、地方にある文書について、できる限り地方で訴えられる
よう、地方支分部局の長等への権限の委任を推進する旨を附帯決議とすることが適
当。
10 行政文書の管理
「行政文書管理法」の制定の明記
*(政府案どおりとする。)
*政府案では、法律上、基本的な骨格が定められており、また、文書管理に関す
る政令と各省庁の定めは一般に公開されることから、適正な文書管理は確保され
る。
11 一定期間後の見直し
3年後を目途とした見直し条項の追加
*附則修正:「施行後5年を目途として、本法の施行状況について検討を加え、
その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」
*法施行の3年後では、審査会の答申や判決例の積み重ねに乏しく、実情に基づ
いた適切な見直しが期待しがたいことから、5年が適当。
12 情報公開法の不適用
「刑事記録」への情報公開法適用除外規定の削除
*(政府案どおりとする。)
*「刑事記録」の取扱いは、刑事司法手続きの一環として、刑事訴訟法等により
規律されることが適当。同法において、開示・不開示の要件や手続きが完結的に定
められていることから、情報公開法の適用除外とされているところ。なお、刑事記
録には多数の関係者の名誉やプライバシーが含まれ、情報公開法を適用しても、不
開示情報に該当するものが大部分。
(なお、この資料は、与党による文書での回答が表に記載されているものです。)
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