情報公開法政府案は、社民党を含む与党三党の合意を経て、今年3月27日に国会に提出されている。
三党合意は、国会提出の4日前、3月24日に取りまとめられた。その一ヶ月前の2月25日、与党三党の協議が開始された。その前日、社民党は情報公開法についての党の見解を発表。「目的は国民の知る権利の保障」「特殊法人も対象とし、範囲は政府の出資比率などで判断」をはじめ、11の論点を明らかにしている。(社会新報3月5日号「情報公開法?与党協議へ党見解」より)
そこで示された「11の論点」が、三党合意、国会提出という経過の中でどの様に整理されたのか、政府案の国会提出について、社民党は、村山内閣時代を始め、同党の長きにわたる取り組みの中で実現したものとして、自分達の努力を評価する方向で受け止めたようだ。
しかし、同時に法案に対する不満は消し難く、「知る権利」について、
・・残念ながらこれは明示されていない。この点は、意見具申では「国民による行政の監視・参加の充実に資することを目的とする」とされていたにもかかわらず、法案から「監視」「参加」という言葉が消えてしまっていることとも関連して非常に気になるところだ。行政は、国民が権利を行使して行政を監視したり、行政に参加することがお気に召さないのだろうか、と想像をたくましくしたくもなる。・・・
と述べている。(社会新報5月27日「情報公開法−参加と監視で「分権行政」への転換を」)
上にあげた社会新報主張欄の短い論説の中で、「参加と監視」を5回も使って、「参加と監視」の重要性を強調しながら、特殊法人の法制化に期限を付する等の他、際立った反対をすることもなく、政府案の国会提出に同意したことは、当時の流れからはそれほど意外には受け止められなかったしても、今の時点でみると相当に奇異な印象を与える。
社民党は、最近、与党としてすでに提出している法案以外の審議については他の野党との協力をして行く旨の発言をしていると思う。与党の一員であったときの責任を考えれば、すでに国会に提出することに同意している法案に反対はできない。しかし、野党案と政府案を同時にテーブルに並べたとき、「こちらの法案の方が優れている」と言って政府案を採るとしたら、憲法を政治に生かすという原則を大切に考えている社民党のイメージは地に落ちてしまう。
社民党が、3月23日の三党合意をもとに、政府案を了承したことを妥当とした上で、現時点で、野党案に賛成することができるとすれば、それはどの様な説明の上に可能になるのだろう。与党から離脱し、そのまま「野党らしい野党」を目指すことに矛盾を認めようとしないことにつきまとう無理が、情報公開法案をめぐって一気に吹き出そうとしている。
社民党は今、新たな体制がスタートしたばかりで、情報公開法案についてどの様に対処していくのか聞いても答えられる状態ではないかもしれない、と党の静岡県支部では言っていた。
過去の大きすぎる妥協を責めながら、今またそれ以上の妥協をしてくれと望むことはできないかもしれない。それでも、社民党を含めた全野党の協力の下、野党4会派案の成立に向けて、何とか現実的な一歩を踏み出すことが可能だと信じたい。
参考:
社会新報3月5日号「情報公開法−与党協議へ党見解」
http://www.omnics.co.jp/politics/SDPJ/shinpou/newsfiles/3jyouhou0304.html
社会新報5月27日「情報公開法−参加と監視で「分権行政」への転換を」
http://www.omnics.co.jp/politics/SDPJ/shinpou/syuchou/syuchou0527.html