抜け落ちた「監視と参加」−その14−


なぜ政府案なのか−積極的な廃案という選択肢


ある世論調査によれば、衆議院選挙を年内に行うよう望む声が5割を越え、ほとんどの有権者が小渕内閣を短命政権とみているという(ニュースステーション)。このような傾向からすれば、総選挙が行われて、自民党が参院選で見られたような凋落傾向をたどるようなことも十分にありうるわけだから、現段階で、情報公開法政府案の早期成立を望むことは得策とは言えなくなってくる。

場合によっては、自民党の最後の残り滓のような内閣で、民主主義の基礎となる情報公開法を、内容に多くの不満を残したままで成立に漕ぎ着け、後になって後悔するという結果も生じうる。そうすると、廃案もやむなしとする選択の幅は、今までよりもかなり大きくなることになる。これは、多分おおかたの見方だろうし、国会で情報公開法の修正を目指す野党議員も、もちろんこのような情勢を十分考慮に入れて、今後の審議に向けての準備をしていることだろう。

いずれにしても、情報公開法政府案についての対処の仕方を決めて行く上で、今後の政局をどう読むかという点が、非常に重要な決め手になってくる。

それはひとまず置くとして、もし仮に、言われているように大幅な修正が現実にはきわめて難しいとすると、現在の状況下ではあまり簡単に妥協するべきでないと考えられるから、廃案になる可能性は相当大きくなる。どうせ廃案になるのならば、積極的に廃案を求めるという選択肢がなぜ出てこないのかというのが、ここでの疑問である。

私は、民主党をはじめとする野党が、野党4会派案(「行政情報の公開に関する法律案」)を、本気で成立させようと考えているという前提があれば、政府案の積極的な廃案を求めることと、野党案の成立にむけて努力する方向が、今の時点でかなり望ましい方向なのではないかと考えている。

では法案を提出している野党各党が、全力で自分たちの提出した法案の成立に向けて努力しているのかというと、(各議員の個人的な奮闘は特筆するべきであることはもちろんだが、政党としての動きというと)この点がかなりあやふやではないかという気がしている。 「行政情報の公開に関する法律案」は、今年の3月、政府案と期を同じくして国会に提出された。(昨年11月 新進党、民主党、太陽党の3党提出の同法案を引き継いだもの。) 提出したのは、民友連(現民主党)、平和・改革、自由党、無所属の会となっている。

法案の内容をみると、知る権利を認めていることをはじめ、相当広範囲な情報公開を義務づけようとするものである。国民が望むような理想的な情報公開法を作ろうという姿勢があらわれている。しかし、同じ時期に、これほど政府案とかけ離れた法案を提出しておきながら、政府案の審議に応じ、修正を求めていることから察して、当初から、自分たちの提出した法案が日の目を見る可能性はかなり低いとみていたことが伺われる。
(傍目には、全く内容の異なる同じ法案を提出していて、政府案の審議に応じることはどうしても不自然に映ってしまう。)

提出した当初は、成立は望めなかったから現実的な対応をしたということなら、情勢が変化している今となっては、何らかの方向転換が必要になってくるだろう。

ごくわずかの可能性しかないだろうが、この際何とか民主党が中心となって、首相指名で見られたような連帯をして、政府案を積極的に否決し、野党案を参院で可決させる方向には向けないものだろうか。そうすると結果的には双方の法案とも現実的には成立は不可能となるが、今後の政局を望む上で、その方がかえって望ましい方向ではないかという気がする。その方が政府案の問題点が明白になるし、私たちの求めているものがより鮮明になってくる。(対立関係がはっきりしてくれば、国民にアピールする効果も大きくなる。)

ただしこれが可能になるためにはいくつかのハードルがある。
一つは、法案提出した党も含め、野党各党がどこまでこの野党案を実現可能な法案としてとらえているのかという問題がある。また、首班指名でリードしている民主党が、この法案の成立のために他の野党との連帯にどの程度積極的に取り組むのかという点、政府案(元与党案)を支持していた社民党と(解党の動きもあるようだが)新党さきがけの動き(どこまで自分たちの失策を率直に認め、潔くすばやい方向転換ができるかという問題)、それから、この野党案がどの程度国会審議に耐えうるのかという点があると思う。

最後の一つは問題もあると思うが、それにしても理念は私たちの要求に合って いる。だとすれば、前3点について、私たちが各党に働きかけを行うなどの動きをすることによって、そのような流れを押し進める方向もあるのではないか。


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