1996年7月1日
静岡県生活・文化部環境保全課長 様
丸子職員住宅の取り壊しに伴うアスベストの飛散
について適正な対策を求める住民有志一同
静岡県のアスベスト対策についての質問とお願い
すでにお手紙で申し上げておりますとおり、今回、丸子職員住宅の取り壊しに伴うアスベスト飛散防止対策について、お送りしたような内容の要望を行っておりますが、今までの経過から、県がどのようなアスベスト対策を行っているのか、また、環境問題の一つとしてアスベスト問題をどの様に考えておられるのかについて教えていただきたいので、以下の質問にお答えいただき、併せて、それに関するお願いをお聞き下さい。
なお、質問やお願いの内容が、別の課の担当になっている場合には、担当する課に連絡していただきたいという趣旨でお願いしていますが、それが無理である場合には、どこの課にお願いするべき問題か教えて下さい。
- アスベスト対策についての質問
- 今回問題となっている、丸子職員住宅のアスベストの飛散防止対策について
- これまでの経過について、環境保全課としてはどのように考えていますか。
- 大気汚染防止法の関係で、職員厚生課から問い合わせがあったと思いますが、どの ような説明や指導をされたのですか。
「建物の改修・解体に伴うアスベストによる大気汚染の防止について」環境庁通知 (昭和62年10月26日付)の内容を教えて下さい。
- 4月初めの時点で問い合わせたところ、担当の課から、法規制がないので水をかけ て一括して壊す予定と言われましたが、それは、
環境保全課の行っている大気汚染を 防止するための対策に反するものではありませんか。
- アスベスト根絶ネットワークに対し職員厚生課が6月20日に送った回答によると、 住民からの指摘によって、アスベストに対する
調査をすることにしたと理解できるの ですが、指摘がなければこのような調査は行なわれなかったのですか。
- 今まで、同様の取り壊しにおいて、アスベスト対策のために必要な調査がなされて いないということがありうると考えられますか。
調査されているようであれば、他の建物の取り壊しの例について教えて下さい。
- 静岡労働基準局から、吹き付けアスベスト以外であっても、一部のものは飛散防止 の対策が必要であるという見解を得ています。もし、今回、住民からの指摘がなけれ ば、県が行う事業が、法令に違反して行われていた可能性がある訳ですが、この事に ついてはどのように考えますか。
- 同様に、この事によって、現場の労働者や周辺住民が、アスベストによって被害を 受ける結果になっていたことについてどう考えますか。
- アスベストの危険性に対する認識について
- 県環境保全課はアスベストの危険性について、どの様に考えていますか。
- 県職員のアスベストの危険性についての認識は、環境や、県民の健康を守る上で、 十分なものであると考えますか。
- 県職員に対し、アスベストの危険性や、取り扱いに関する基本的な知識について、 周知徹底するべき立場にあるのは、今のところ環境保全課以外にはないと思うのです が、他でこの問題について担当している部署がありましたら教えて下さい。
- 現在、県が行っているアスベスト対策について
- 大気汚染防止法上、アスベスト製品製造機械は「特定粉じん発生施設」に指定され、 工場施設境界のアスベスト繊維10本/リットルの規制基準が設けられており、汚染 状態を常時監視することになっていると思いますが、それについての調査結果を教え て下さい。
また、調査は、どこが、どのような方法で行っているのか教えて下さい。
- その他のアスベストに関する、調査、研究等の、内容を教えて下さい。
- アスベストの飛散による大気汚染を防止するため、環境保全課で現在行われている 対策にはどのようなものがあるか教えて下さい。
特に、吹き付けアスベストが使用されている建物の解体時に、十分な飛散防止策を して解体されているかどうか、大気汚染を防止する見地から調査したり、必要と考え られる対策を講じるように所有者や事業者に指導したりしていますか。
- 静岡県では、アスベスト水道管の取り換えはどの程度進んでいますか。
- 現在アスベスト水道管がどこで使われ、どこで交換済みであるか教えて下さい。
- アスベストについての廃棄物処理に関して、飛散防止のためどのような対策が取ら れていますか。
それは、県民の健康を守るため十分なものであると考えられますか。
- その他、アスベストによる環境悪化を防止するため、県民に対する広報活動について、どのような形で行われているか教えて下さい。
- 阪神・淡路大震災後、アスベストの飛散が問題となっていることについて
- 静岡県も、地震の後視察に行って調査をされていると思いますが、その際、アスベ ストについても調査しましたか。
- この問題について、どのような関心を持って受け止めていますか。
- その後、アスベストの環境濃度が測定されていますが、その調査の結果についてど のような見解をお持ちですか。
(阪神・淡路大震災に伴う環境モニタリング調査結果について)
- 地震対策に力を入れている静岡県として、アスベストについてのこのような事態を 避けるため、どのような対策を考えていますか。
- 東京都の『東京都アスベスト対策大綱』について
- その内容について、検討したことはありますか。それはいつ行ったのですか。
- 検討した結果と、現在、その内容についてどのような見解を持っているか教えて下 さい。
- 今後、静岡県も、このような内容のアスベスト対策を取り入れてゆく予定はありま すか。
- アスベストという、重大な健康被害が生じる恐れのあるものについて、都道府によ って、大きな対策の差がある理由について考えた場合、
- アスベストの危険性について、東京都と静岡県では大きな認識の差があると思い ますか。
- 静岡県は、東京都よりも、アスベストの濃度が、低いと考えていいのですか。
- 静岡県民も、これと同じ程度の、アスベスト対策を望むことはできると考えますか。
- 東京都は、民間の事業者に対して、アスベスト飛散防止対策に対する資金融資を行 っていると思いますが、このような制度は、静岡県にもありますか。
- その他
- 今後、アスベスト問題に関し、総合的に検討するための委員会や、県民の相談を受け付ける窓口を作る予定はありますか。
- 今年5月に大気汚染防止法が改正され、来年4月から、吹き付けアスベスト等の使用されている建物の解体工事は、都道府県へ届け出が義務付けられるようになると聞いていますが、この事について、県民に、どのような形で知らせてゆくつもりですか。
- アスベスト対策に関するお願い
アスベストは、私たちの健康と、環境に対し、重大な悪影響を与えるものであると考えられるので、今後、それによる健康被害を最小限にくいとめる、できる限りの方法を採って、県民の健康を守る努力をしてほしいと思います。
その対策の一つとして、東京都の『アスベスト対策大綱』に見られるような総合的なアスベスト対策を講じることを、早急に検討して下さい。
このことについて、準備委員会を作る等、できるだけ早く具体的な政策として取り入れられることを期待していますが、当面、それまでの緊急措置として、次の対策を行って下さい。
- 調査研究について
- 平成9年度、衛生環境センターで行われる環境保全に関する調査研究の一つとして、 「アスベストによる大気汚染実態調査」を加え、県下の、工業地域、港湾地域、山間 地、住宅地、幹線道路周辺、建物解体現場、建築廃棄物処分場周辺等、必要と思われ る地域の、アスベスト濃度を測定し、静岡県下のアスベスト汚染がどの程度であるの か実態を把握し、公表して下さい。
- また、静岡県はアスベスト製造工場、事業所が他の都道府県からみても多いこともあるので(1992年3月末、環境庁の調査で、5番目)、今後、アスベスト濃度を 常時計測する体制をつくって下さい。
- 経口摂取によるアスベストの発癌性についても、今後ますます問題になってくることが考えられるので、飲料水中に含まれているアスベストの量を調査し、公表して下 さい。
また、今後継続して調査できるような体制をつくって下さい。
- アスベストの飛散防止対策について
- アスベストの飛散を防止し、それにより生じる環境問題をできるだけ回避するため、 飛散防止の対策を講じる事業者や個人に対し、資金援助、税制面での優遇、補助金の 交付等、何らかの形での財政的援助を行うことを検討して下さい。
- アスベストの飛散防止が、環境と県民の健康を守る上で、必要不可欠であることを、 県民に熟知させるため、飛散防止対策が必要なこと、飛散防止のための方法等につい て、徹底した広報活動を行って下さい。
- さらに、飛散防止対策を行うための具体的な技術指導を、現場の労働者を対象とし て、県内各地で無料で行って下さい。
- 来年度から義務とされる大気汚染防止法の改正による吹き付けアスベストの除去に 関する届け出について、知らないことによる届け出の漏れがないように、十分に周知 徹底を図って下さい。
また、今後、意図的に届け出をしないことに対しては、県民の健康を守る重要な問 題としてとらえ、厳しい対応で臨んで下さい。
- 建築廃棄物処分場から飛散するアスベストの量について調査し、今後、飛散防止のために必要と思われる対策を検討して下さい。
- 今後のアスベストの使用について
環境基本法(第8条の3)や、県環境基本条例(第6条の3)に、「その事業活動によって、環境への負荷の低減に資する原材料を利用するように努めなければならない」旨の規定があるので、これによる結論の一つとして、以下の理由から、今後アスベストは使用しないことを県の環境政策の指針の一つとして取り上げ、県内の市町村や団体等、県民全体に、同様の方針を取ることを呼び掛けて下さい。
- 想定されている東海地震が、阪神・淡路大震災のときと同様な程度の建物破壊を起 こしたとすると、相当量のアスベストが飛散することは明らなので、他県に先駆けて、 早急にアスベストの代替化を進め、地震による環境被害を最低限にするように努める 責任があること。
- アスベスト含有建材を使用した場合、生産、加工、建築、取り壊しの時点で、アスベストが環境に飛散して、環境を汚染することは明らかなこと。
- 静岡労働基準局のアスベスト含有建材についての飛散防止対策に関する見解によれ ば、吹き付けアスベストでなくても、一部のものは、局所排気装置などの飛散防止対 策が必要とされているので、それにしたがって取り壊しをすれば、取り壊す時に余分 に資材が必要になり、ゴミを増やす結果になることは明らかなこと。
(例えば、「エコロジーしずおか」平成8年度夏号の4頁にもゴミの減量化に努め る、買い物時から、ごみになったときのことを考える、とあります。)
- また、アスベストを使用した場合、解体時に余分の経費が、税金から不当に支払わ れることになるが、これも、代替製品を使うことによって避けることができること。
- また、現在、アスベストの危険性について十分明らかにされている以上は、それを わかっていて使用することは、居住者や労働者をはじめとする県民の健康を損なう意図があると考えられうること。
また、将来、この事から生じうる損害賠償等の支払い義務の発生による税金の不当な出費を事前に防止することが可能であること。
- 現在、アスベストの代替化はかなりの程度まで進められており、一部で、発癌性について疑わしいとされているものもあるが、十分な注意をはらって選択すれば、アス ベスト含有建材よりも、はるかに安全な代替製品の利用が可能であること。
- 職員に対する広報活動について
今回、県所有の建物に関し、このような問題が生じてきた背景には、県職員全体が、総じて、アスベストに関して無関心であり、アスベストから生じてくる深刻な環境問題についての認識が足りなかったことがあげられると思います。
このような認識不足により、結果的に、法令に反する施策が行われ、実際に、現場労働者や住民に対して危害を加えてしまう可能性があるので、そのようなことを回避するために、県の職員や、関係市町村の職員に対して、アスベストの危険性について周知徹底を図って下さい。
また、そのために、例として
- アスベスト問題に関して、職員を対象にした講演会や、学習会を開き、十分な知識 持って職務を執行できるように指導して下さい。
- 県職員が利用できる図書館や、情報センターなどに、アスベストに関する書籍、ビ デオ、その他の資料などをおいて職員がいつでも利用できるようにして下さい。
- 県民に対する広報活動について
上で述べたようなアスベストの問題に関する無関心と認識の不足は、一般住民においても同様であって、このことが、アスベストによる健康被害を助長する結果になっていると考えられるので、次のような方法等によって、県民が、アスベストの危険性について知り、アスベストを環境問題の一つとして考える機会を作って下さい。
- 県内のアスベスト製品を販売している業者に対して、その製品がアスベスト製品であることと、アスベストによって肺癌や悪性中皮腫等に罹る可能性があることを表示するように義務づけ、それが実行されるように指導して下さい。
- 大気汚染防止法の改正によって、吹き付けアスベスト等が使用されている建物の解 体について届け出が義務づけられるようになったことについて県民に注意を喚起する ため、県環境保全課が発行している環境情報誌『エコロジーしずおか』平成9年度春 号等で、アスベストについての特集をすることを考えて下さい。
- 『県民だより』に、アスベストに関しての記事を載せ、飛散防止対策が必要なこと や、健康被害を防止するための手段などについて県民に積極的に知らせるように努め て下さい。
- アスベストの危険性について注意を促すためのパンフレットを作成し、求職者に対する情報としてハローワークの窓口におくこと、一般住民に対して、同様のものを作って、市役所、公民館など、目に付くところにおくこと等、県民のアスベストによる 健康被害を最小限にするため、できる限り努力して下さい。
(参考 アメリカ “ASBESTOS IN THE HOME”)
- 今後、県民から、アスベストに関する環境問題について講演会を開く等の計画が出された場合には、講師を派遣するとか、会場を設定する等の援助や協力をして下さい。
- 公的施設における吹き付けアスベストの除去について
- 県職員厚生課から、アスベスト根絶ネットワークに対して出された、平成8年6月20日付の回答によれば、「吹き付けアスベストにつきましては、(中略)公共の建 物(学校、県・市営住宅等)は、撤去済みとなっております。」とありますが、このことについて、見落としや誤りがないかどうか、もう一度確認して下さい。
(この件については、6月28日に、公文書の開示を請求しています。)
- また、市内小中学校の階段の裏等には、何らかの材料が吹き付けられていますが、子供たちの落書きと、ボールをぶつけた跡で、ほとんど削られているような状態になっているところが多く見られます。それが吹き付けアスベストではないとはいえ、何 パーセントかのアスベストを含有している可能性があります。
そのため、特に、吹き付けが行われている場合、その材料中にアスベストが含まれ ていないことを確認して下さい。
- アスベストについて、1、2年前に、県と市の教育委員会に電話で問い合わせたところ、職員から、「小、中学校等には、アスベストはいっさい使われていません。」 という回答を得ました。しかし、吹き付けアスベストという説明もなかったのでこれ は事実に反する説明でした。
また、確認はできないものの、県内、小、中、高等学校で、いまだに、アスベスト を使用した実験用金網が使われているらしいとか、県立高校等で、クロシドライトと いう、大変危険なアスベストが使われているという指摘を一部から聞いています。
これらのことについて各教育委員会に対し、職員が間違った対応をしていることに ついて改善を求め、アスベストが使用されている事実がないかどうか確認するように 指導して下さい。
- アスベストに関する環境教育について
- 子供たちに、アスベストについて正しい知識を持たせ、その危険性について認識さ せるため、またそれによって、将来の健康被害を事前に防止し、職業選択の際の参考 とさせるため、さらに、アスベスト問題を通じて、環境問題を考える機会を与えるた め、アスベストについての子供向けのパンフレットやビデオを作り、環境教育の一環 として、子供たちが、授業の中でアスベストについて学ぶ機会をつくって下さい。
- 上の環境教育が正しく行われるため、また、学校において、子供たちがアスベストによる被害を受けないようにするため、学校職員に対しアスベストについて十分な注 意を払うように促し、アスベストに関わる環境問題について研修を行うように県教育 委員会に働きかけて下さい。
- 国際交流とアスベスト問題について
アスベストの危険性が明らかにされ、欧米各国で、使用が禁止されたり輸入量が激減し、アスベストが使用されなくなっているのにもかかわらず、依然として、日本においては大量に輸入使用され、十分な法規制もされていないことを考えると、今日、アスベスト問題ほど、国際的な視野を必要とする環境問題は他にはないのではないかと考えられます。
そこで、環境基本条例にもあり(第3条の4、第24条)、常日頃から、県民に対して、国際交流を強く呼び掛けているのですから(例えば「県民だより」6月号)、このように、県民の健康に直接に関わる環境問題について、他の先進諸国と著しい差異が生じることのないように、ふだんから、国際的な広い視野で情報収集に努め、十分に県民の健康が保護されるように配慮し、できるかぎり積極的な施策を取り入れてゆくように努力していただきたいと思います。
それについて、次の点について、検討して下さい。
- アスベスト問題に関する他国の政策を知るため、職員を、例えば、アメリカ、スウェーデン、ニュージーランド等に派遣し、アスベストによる健康被害を防ぐためにど の様な対策が取られているかについて情報を収集し、それを、他の職員や県民に発表 して下さい。
- それ以外にも、他の地域のアスベスト対策についての情報の収集に努め、県民にも、 それを知る機会を与えて下さい。
- 国際交流に理解があり、環境問題に関心のある県内在住の外国人を招いて、アスベ スト問題を中心とした環境問題について意見交流をする機会を作り、一般の住民も参加できるようにして下さい。
- その他
- 以上の問題につき、他の地方自治体の取り組みについて調査し、静岡県民が、他の地域の住民と比べ、アスベストによる健康被害を防ぐ上で、不当な不利益を被ることのないように、十分配慮して下さい。
- また、他の地域で行われていない取り組みについても、住民の健康を守るため必要 と認められる対策については、積極的に取り入れるように努め、静岡県の自慢が「富 士山が望め、温暖な気候に恵まれていること」だけでないように、静岡県民として他 に誇れるような、他の自治体に先駆けた環境対策の充実に努めて下さい。
- ここで取り上げた問題について、多くの県民が、説明を聞き、質問をする機会を設けて下さい。
以上
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