1996年7月1日付質問とお願い内容についてのメモ

1996.7.2   


〈質問内容について〉

質問全体は環境保全課が答えられないものも多く、こちらに聞かれても困ると思うことも含まれています。質問の趣旨は、アスベストについての職員の認識が足りないことは環境保全課で広報活動が十分行われていないためであること、アスベストについてもっと根本的な対策をたててやってゆかないと、住民の要望に対応できないと考えてもらうことが狙いです。

あといくつか、どのような対策が実際に行われているのかについては、データなど詳しい内容が知りたいので聞いています。

 

〈お願いについて〉

基本的には、この内容はいずれも本当に今すぐにでも行政に生かしてほしいと切実に願っています。

しかし、現実的には、この中のほんの一つでも実際にやってみようと思ってくれればそれでいいし、たった一つの実現可能な望みといえば、このことがきっかけで、県庁の職員全体が、アスベストについての認識を改め、アスベストについて興味を持ち、この問題が重要な問題であると考えてくれるようになってほしいということなので、実行可能かどうかということにことにはこだわらず、思いつくことは一応すべて書いてみました。

内容はすべて、できるだけ具体的なお願いになるように努めました。

    

〈お願いの内容についての説明、および参考になると思われること〉

1の(1)アスベスト汚染実態調査について

静岡県環境白書平成7年度版269頁に前年度環境衛生センターが行った調査研究が出ています。アスベストについては定期的な環境調査は現在行われていないと思うので、取り敢えずこの中の一つとして、来年度の予算を取ってやってみてほしいということです。

参考

1981年 環境庁による調査結果  (『ノーモアアスベスト』35頁)

 港湾地域   0.6本/リットル   住宅地域     1.2本/リットル 

 解体ビル周辺 2.4本/リットル   廃棄物処理場周辺 4.3本/リットル 

 建設工事周辺 6.5本/リットル  

            1985年        1991年      1993年

 幹線道路周辺 1.0本/リットル     0.61      0.43

 住宅地域   1.2本/リットル      0.34      0.14

 商工業地域  1.2本/リットル      0.67      0.17

(これらは、「阪神・淡路大震災に伴う第2次大気環境モニタリング調査等の実施結果について」平成7年4月環境庁大気規制課の調査による詳しい調査場所調査方法など不明)

 

1の(2)アスベスト製造工場について

アスベスト製造工場は全国338の内、大阪49、福岡24、愛知21、神奈川21についで、5番目 17工場(兵庫、茨城と同じ)

知事は汚染状態を常時監視する義務を負い、立ち入り検査の権限が与えられている。 

東京都の大綱解説書によると、敷地境界線上におけるアスベスト濃度は、一般環境と同じとなっているので、静岡県もそのようになっていると考えたいが、92年には112の内7か所で規制基準を超過していたので改善指導したということなので、気になるところです。(『ノーモアアスベスト』54頁、調査方法については176頁 26頁)

アスベスト繊維 10本/リットル という基準については

 アメリカ環境保護庁による低濃度被爆による死亡推定 

     (0.01本/立法センチ、1週40時間)

     日本の労働環境基準値(2本/立法センチ)の200分の1

 生まれたばかりの子供が、男女100万人づつ、1年間だけこの条件で暮らすと仮定

  男の子 2人から21人が肺癌で死に、8人から80人が悪性中皮腫で死ぬ

  女の子 0.7人から7人が肺癌で死に、10人から104人が悪性中皮腫で死ぬ

 20歳のサラリーマン 男女100万人が20年間このような暴露を受けると仮定

  男性 42人から424人 肺癌 32人から318人 悪性中皮腫

  女性 13人から130人 肺癌 47人から469人 悪性中皮腫 で死亡

                       (『静かな時限爆弾』160頁)

日本の労働安全基準は、労働者が作業現場で1日8時間、1週間に5日間働いた場合に、じん肺の一種であるアスベスト肺の発生を1%以下に抑えるための基準

   (肺癌や悪性中皮腫はアスベスト肺よりも低い暴露量で発生すると見られる)

 

1の(3)水道水のアスベスト汚染について

アメリカ最大汚染レベルは10ミクロン以上のアスベスト繊維濃度700万本/リットル?

東京都の検査 10ミリミクロン以上のものは発見されなかった(1989年当時)

埼玉県宮代町 2350本/リットル   (ASNET 33号)

       4700本/リットル

経口摂取したアスベストはたちまち排出されると考えられているが疑問

   アメリカ、カナダの例  食道、胃、すい臓癌が多い

 

上下水道 アスベストを17パーセントほど含んだセメントパイプが使われている。

厚生省は全国で64、000キロ使われているアスベスト水道管の交換工事に助成金を出し、交換工事を推進している。

取換え費用は、埼玉県宮代町の例で、

   92年度   4775メートル     4億9886万円

   93年度   5777メートル     7億3350万円

   94年度   6759メートル     6億9523万円

 

2の(1)飛散防止のための経済的補助について 

東京都の助成制度 

  公立私立学校、市立福祉施設に対する吹き付けアスベストの除去のための費用助成

  アスベスト製造工場公害防止のための資金援助

  解体工事等を実施する時の資金融資について、制定当時、具体的に検討中

       (現在融資制度がどうなっているのかについては未確認)

1975年法改正以前

  建築基準法に基づく施行令 第108条

   防火構造の一つとして、「厚さ1.2cm以上の石膏ボード張りの上に亜鉛鉄板まTは石綿スレートを張った物」と規定 

  施行令に基づく告示でも

   耐火構造の一つに「鉄骨を厚さ6cm以上の吹き付け石綿(かさ比重0.3以上のものに限る)でおおったもの」と指定している

このように法令で求められている工事を行って、その取り扱いがその後厳しくなったとした場合、除去工事にかかる費用を、個人ですべて負担しなければならないというのは、特別の定めがなくてもおかしい気がする。

 

2の(3)工事事業者に対する無料講習

吹き付けアスベスト除去工事などでずさんな工事が行われることにより、除去前よりも汚染がひどい状況になったり、それによる労働者の被害が心配される。

実際に工事をする人が、アスベストの危険性について、じゅうぶん知らされた上で、正しい工事方法を学んで工事を行うことはどうしても必要になる。

現在の県下の工事事業者や労働者がどのような技術と経験を持っているかなどは不明
吹き付け除去工事の際どのような工事が行われたかなども不明

    (情報公開で、そのことが明らかになることも考えられます。)

 

2の(5)廃棄物処理の関係

アスベストを特別管理産業廃棄物に指定するべきだと思うが、実際に、廃棄場所や廃棄方法の実態について知らないので、これ以上のことは現時点では言えない。

また、現時点で実行可能で、廃棄場所の住民に迷惑がかからないような対策はどういう物があるのかという点が難しく、これ以上ふれると、飛散防止対策をいくら厳密にしてもどうせ廃棄物になってから飛散は避けられないのだから意味がないのでは、といった議論を招きかねないので、不注意に触れることができないという気がする。

いずれにしても、今後避けられない問題だと思うので、調査だけは要求するようにして、実態を知って、今後の課題ということにします。

 

3 アスベストの代替化について

東京都は、「都、自らが実行可能なノン・アスベスト化への事業を率先して実施することによりその先導的な役割を果たしていく」と宣言しているだけでなく、国に働きかけること、都民に働きかけること、業界に代替品の開発、使用を要請すること等を行っている。

その他、文部省も新築、改修時にアスベストを使っていない。

大成建設もアスベスト製品は使用しないといっている。

このような事例があるので、県が、このような指針を出して、県内の各方面に働きかけてゆくことは、現時点で十分可能ではないかと思います。

特に、地震防災関係で、そのような要求が出てくるとやりやすいのではないでしょうか。

これに関係して、防塵マスクのことは、

 地震の後、どのような経緯で必要になってくるか、どのようなマスクが有用か、どのく らいの量が必要か、入手配布方法で困難だったことは何か、子供のマスクはどの程度使 用されたのか、どのような改善が望まれるか、マスクによりどの程度アスベストの吸入 が防げるのか、価格、製造会社その他について調べてから地震防災課に要求するか、そ れが難しければ、調べることも含めてお願いするようにしたいと思います。

 (連絡先 被災地のアスベスト対策を考えるネットワーク 津田頼子様、震災マスクプロジェクト、アスベスト根絶ネットワーク)

 

3の(5)損害賠償による税金からの支出のこと

公務員の不法行為などで、損害賠償が出された時、額が少なければ返還請求ができるのでしょうが、HIV訴訟等でみられるような公害訴訟では、膨大な額の賠償金を税金で負担しなければならなくなり、それをどうして住民が負担しなければならなくなるのかという点が全く納得できません。

担当者達や組織全体で行われている犯罪行為に対し、監視することもできず、もし、わかったとしてもやめさせることもできず、責任だけを取らなければならないということは、全く不合理だと思います。かといって支払いを拒否すれば被害者が困りますから、十分以上に賠償金は支払うべきであると思います。

そうすると、こんなことをさせないようにするにはどうしたらいいのかと思うわけですが、差止め請求をするくらいしか考えられませんが、実際は難しいでしょうから、公務員の良識にまかせる意外にはなくなってしまいます。

アスベストを使うことで、将来県が賠償請求を受けるだろうと考えているわけではありませんが、余りにもひどいので、この際八つ当たりかもしれないけど、その事をどうしても言っておきたかったので書いてしまいました。

 

4の(1)職員に対する教育

要望書にもあるように、皆が合同で参加できるようなアスベストに関する連続講座のようなものを開いて欲しいというのは、当初からの願いです。

県の職員、特に環境保全課の職員だけでも、大気汚染防止法の改正で吹き付けアスベストについて届け出制になることもあるので、専門家を招いた学習会などを開くことが必要ではないかと思います。

 (できれば、これだけ頑張っているのですから、くじにはずれても今回だけは特別に私 も参加させてほしいと思います。それか、疑問点がいっぱいある人順に受け付けてもら ったらいいかもしれません。)

 

5の(1) アスベストについての警告の表示のこと

特化則でアスベストを5%(19954月1日からは1%)をこえて含有する製品の梱包、容器にその旨を表示するように規定している

   一枚一枚表示することは義務づけられていない。

石綿協会 1989年7月生産分から5%をこえてアスベストを含有する個々の製品に 「a]マークを押印、刻印している  

個人的には、このマークの意味を知っている人がどのくらいいるか、このマークを見たことがある人がどのくらいいるか、また、何の意味かわからないマークが、どこか片隅についていたところで、誰か気にする人がいるかどうか等疑問に感じます。

例えば、水道水に多量のアスベストが含まれていて、それを使って密閉した部屋で加湿器を使用すると、部屋にアスベスト繊維をまき散らすことになるという例さえもある

アスベスト建材を室内で加工したりすると、本人だけでなく、家族も被害を受ける

アスベストが危険であって、吸い込まないようにしなければならないと知っているだけで防げる被害はいっぱいあるので、表示する義務は、PL法の観点からいっても、十分出てくると思う。

 (参考 『静かな時限爆弾』 170頁 「身近かなアスベスト」以下)

 

5の(4)パンフレットの作成のこと

 アスベスト根絶ネットワーク編著『アスベストなんていらない』の中の広瀬弘忠氏の講演の中で出てくるもの(43頁)

 「アスベストが、家庭の中でどういうふうに使われているか、というようなパンフレットもつくって、一般的な啓蒙をはかっているわけです。例えば、´ASBESTOS  IN THE HOME´というような小さなパンフレットですけれども、これを一般家庭に配っている。家庭内のどんなところにアスベストが使われているか、家庭内のアスベストにどのように対処したらよいかといったことをやさしくていねいに図解しているわけです。こういう風にアスベストの問題が一般の人に関心を持たれるように、また一般の市民がアスベストの被害を受けないように、行政が非常に大きな配慮をしている。」とあります。

現在、このパンフレットはまだ入手できないでいますが、このようなパンフレットがあるということだけでも、行政機関に知ってもらいたいし、公的機関であればなおさら、このような危険について住民に知らせ、危険を回避するためできる限るの方法を、官民一体となって考えてゆく義務があると思います。

そして、一般住民も、このような権利に対する侵害については、断固として許さないというべきだと思います。普段はこのように思っていても、なかなかいう機会が与えられないのですが、今回たまたまチャンスが巡ってきたので、できるだけそのように考え方を改めていってほしいということを要求してみました。

付け加えれば、これは、現在問題になっている原子力発電所の増設問題に地元の小さな範囲の市町村だけでなく県民全体の同意を求めるべきことや、地震防災訓練に放射能もれを想定した避難訓練をするべきであること、ヨード剤を備蓄すべきこと等の要求とも基本的には同じことを要求していることだと考えています。

その意味では、医療問題等様々な市民運動の中で求めていることと根本的には全く同一の意識改革を求めているものなので、私自身としては、アスベストの問題を通じて、そのような活動をされている人達の流れに少しでも参加できることを嬉しく思っています。

 参考までに、同講演の冒頭で、東海大地震と同じ位の死者がアメリカではアスベストによって毎年でている計算になることから、日本が地震に対してかけている費用と、アメリカがアスベストに対してかけている費用と比較して話されているところがあります。

 

6の(1) 吹き付けアスベストの処理のこと

1996年6月28日公文書の開示請求

「静岡県内の公的施設における吹き付けアスベストの処理状況(処理工事の前に行われた調査と工事の内容)」 

括弧内は、「あまりにも漠然としていて、何を調べていいかわからないし、このような資料はないだろう」と言われたので、もしなければこのようなものでもわかるのではないかということで付け加えて書いたものです。

職員厚生課はこのようなことを書いたことをきっと後悔していると思います。

東京都の吹き付けアスベスト処理状況  95年3月15日現在17%が未処理

  (ASNET 33号 18頁  『ノーモア』 24頁)

 

6の(2)吹き付け材料の調査

吹き付けアスベストは1975年に原則的に禁止されたが、1976年以降もロックウール吹き付けに5%のアスベストを混ぜた例がある。

 

7の(1)教育用ビデオのこと

市内公立中学校では、「ごみを少なくしよう」という内容のビデオを授業中に生徒に見せたりしています。(内容は、物凄く変わった女の人が出てきて、やたらと節約して資源を守るために努力している姿を描いたホラー物のようです。アスベストのビデオができても、四六時中防塵マスクをして、壁を一々調べ回っている変なおばさんが登場しないことを祈ります。)

 

8 国際交流のこと

はっきりいって、私はこのような偉そうなことをいえる立場にはないので、この部分は何度か訂正しようと試みたのですが、何度読んでみても、その通りだなと思うだけでどこを訂正していいのかわかりませんでした。おかしいのは言っている人がそういう資格があるかどうかという問題だけのようなので、これは誰か他の人が言ったと想定して書くことにしました。

 

9 静岡県の自慢

首都機能の移転が関心事となっている今の県の状態を考えてみると、このようなことで、少しでも静岡のイメージがよくなるものならばと、藁をもつかむ思いで、東京都の大綱よりも立派な物を作ろうなんて考えてくれるようなことはないでしょうか。


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