この文書は、異議申立てに対して、静岡県環境部が審査会に対して一部開示となった理由を説明したものです。
公文書の一部開示決定に係る理由説明書
1 異議申立ての対象となった公文書の件名
平成9年度に実施したアスベスト関係事業所の立入り検査結果
2 対象公文書の内容または性質
(1)大気汚染防止法の目的と事業所の立入り検査について
大気汚染法の目的は、事業所における事業活動、建築物の解体等に伴うばい煙、粉じんの排出等の規制等により、大気の汚染に関し、国民の健康を保護するとともに生活環境を保全し、並びに人の健康に被害が生じた場合の事業者の損害賠償責任を定めることにより被害者の保護を図ることにある。
立入り検査は法の目的達成のため法第26条により、「都道府県知事は法の施行に必要な限度において特定粉じん発生施設の状況その他必要な事項の報告を求め、又はその職員に特定粉じん排出者の工場に立ち入り、特定粉じん発生施設に係る建築物その他の物件を検査させることができる。」とされている。
なお、アスベストは石綿とも言われ、法では石綿が「特定粉じん」として規定されており、特定粉じんを発生、排出する施設を「特定粉じん発生施設」と規定している。
立入検査の主な目的は特定粉じん発生施設を設置する事業所における特定粉じんの大気中の濃度が敷地境界基準に適合しているかいなかを判断することにある。
敷地境界基準に適合しないと認めるときは、当該特定粉じん排出者に対し期限を定めて、特定粉じん発生施設の構造、使用の方法、飛散防止の方法の改善を命ずること又は特定粉じん発生施設の使用の停止を命ずることができる。
(2)立入検査の方法
立入検査の実施は出先機関である環境衛生科学研究所が実施しており、アスベストを実際に捕集し測定を行う立入検査と、事業所が実施している自主測定結果等を書類で確認する書類検査による立入検査とを併せて実施している。
(3)対象公文書の内容
対象公文書は特定粉じん発生施設を有する事業所に対して、県が立入検査を実施した結果であり、立入検査年月日、立入検査員氏名、立入検査対象事業所名、アスベスト測定結果等が記載されている。
3 非開示とした部分
公文書一部開示決定では「事業所等の個人情報」としているが、具体的には次の部分
(1)立入検査した事業所名、所在地、電話番号、ばい煙番号、工場番号、事業所担当者の氏名と印影
(2)粉じんの処理業者名
(3)アスベスト測定業者
(説明1)ばい煙番号と工場番号について
ばい煙番号及び工場番号は県において大気汚染防止法に基づき、ばい煙発生施設等を設置する場合はあらかじめ知事に届け出ることになっており、県はこの届出された事業所毎に番号を付し、管理している。
ばい煙番号及び工場番号が判れば事業所名が判ることになる。
なお、ばい煙番号及び工場番号は管理上の区分けであり、いずれも同じ意味を持つ。
(説明2)粉じんの処理業者とアスベストの測定業者について
事業所においては、アスベストを製造する際に発生するアスベストを周辺環境へ飛散させないため処理施設(主としてバグフィルターと呼ばれる集じん機)で処理を行い排出している。
また、アスベスト発生施設を設置する事業所においてはアスベストの大気中の濃度が敷地境界基準に適合していることを確認する意味で、法により年2回以上の自主測定の義務は課されている。
粉じんの処理業者とは上記の処理施設で捕集したアスベストを最終的に処理する業者で産業廃棄物処理事業者のことである。
なお、事業所自ら焼却等の処理を行っている場合もある。
アスベストの測定業者とは事業所の自主測定を請け負って、アスベストの採取・分析を行う業者のことである。
4 非開示として理由
(1)条例第9条第3号(事業活動情報)該当性
「立入検査した事業所名」、「所在地」、「電話番号」、「ばい煙番号」、「工場番号」、「粉じんの処理業者名」及び「アスベストの測定業者名」は次の理由で条例第9条第3号に該当する。
条例第9条第3号は、「事業に関する情報であって開示することにより、競争上又は事業運営上の地位その他の社会的な地位が損なわれると認められる」情報については、「ア 人の生命、身体又は健康を事業活動によって生ずる危害から保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、「イ 人の生活を違法又は不当な事業活動によって生ずる支障から保護するため、開示することが必要であると認められる情報」、「ウ ア又はイに掲げる情報に準ずる情報であって、開示することが公益上必要であると認められるもの」に該当する者を除き、開示しないことができる旨を定めている。
「立入検査した事業所名」、「所在地」、「電話番号」、「ばい煙番号」、「工場番号」、「粉じんの処理業者名」及び「アスベストの測定業者名」を開示すると事業所名が特定されることになるが、対象公文書である「立入検査結果」は分析値等必要な事項しか記載されていないため、事業所名が明らかになると、当該事業者が発癌性のあるアスベスト製品を製造し又は排出していることのみが強調されるおそれがある。
これらの、事業所においては、法の規定を順守している状況にもかかわらず、県民に「有害な物質を取り扱っている事業所である。」ということのみの不十分な認識を与える可能性があり、風評による工場の立退き運動や因果関係のない疾病に対する補償請求などが起こりかねず、条例9条第3号本文の「法人の事業運営上の地位その他社会的地位が損なわれると認められるもの」に該当する。
なお、対象公文書に記載されている事業所においては、法に定める排出基準値を十分に下回っており、現に人の生命等に危害を与えてはおらず、かつ将来においてもその恐れも予測されないため、条例第9条第3号のただし書アの「人の生命、身体又は健康を事業活動によって生ずる危害から保護するため、開示することが必要であると認められる情報」には該当しない。
また、立入検査結果からも違法行為等がなく、条例第9条第3号のただし書イの「人の生活を違法又は不当な事業活動によって生ずる支障から保護するため、開示することが必要であると認められる情報」には該当せず、条例第9条第3号のただし書ウにも該当しないことは明らかである。
(2)条例第9条第2号(個人情報)該当性
本件処分においては、本号該当性の記載が漏れているが、「事業所担当者の氏名及び印影」は次の理由で条例第9条第2号に該当する。
条例第9条第2号は、「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、又は識別され得る」情報については、同号ただし書の「ア 法令等の定めるところにより、何人でも閲覧できる情報」、「イ 公表を目的として実施機関が作成し、又は取得した情報」、「ウ 法令等に基づく許可、免許、届出等の際に実施機関が作成し、又は取得した情報で、開示しないことが公益上必要であると認められるもの」に該当するものを除き、開示しないことができる旨を定めているが、「事業所担当者の氏名及び印影」は「個人に関する情報であって、特定の個人が識別され、、又は識別され得るもの」に該当し、ただし書のいずれにも該当しないことは明らかである。
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