1998年2月4日
名古屋市長 様
アスベストについて考える会
私たちは、アスベストに代表される我が国の環境行政の遅れが、どのような理由によってもたらされているのかという点に着目しながら、様々な環境問題についても関心を持って活動している市民団体です。
藤前干潟の埋め立て問題に関しましても、このような観点にたって、これまでも強い関心を持ちつつ、貴市の対応に注目してきました。
シギ・チドリの飛来地として、我が国でも最大級の湿地である藤前干潟は、私たちに与えられている貴重な自然の財産であって、この埋め立て計画が、ただ単に名古屋市民だけの問題ではないことはいうまでもありません。
多くの生物をはぐくみ、市民にも愛されている藤前干潟が、適切とは思えない環境アセスメントに基づき、大勢の人の反対を押し切って、こともあろうにゴミで潰されようとしているのは、どのようなことがあっても許されるものではないと私たちは考えています。
この藤前干潟の埋め立て問題は、表向きは、ゴミ問題という、私たちの生活に直結する問題を解決するための、やむを得ない措置のように見えます。
しかし、代替地の候補としてあげられている緑地がゴルフ場とされる計画があることなどから、私たちは、この問題は、結局は、港湾開発のために干潟の埋め立てをすすめようとする開発行為の一つとして受け止めています。
このように、開発のために貴重な自然を潰そうとする行政のあり方は、ビンと缶の分別すら満足にされないまま、ゴミ問題に対して、ほとんど有効な対策もたてないできた、貴市の、環境意識の低さを如実に示すものであって、自然環境の保護に対する認識の希薄さを反映しているものと考えます。
貴市の、このような、環境保護についての理解を欠いた、開発優先の方針によって、私たちの共通する貴重な自然である藤前干潟が潰されようとしていることに、私たちは強い怒りを感じるものです。
全国でも有数の渡り鳥の中継地である藤前干潟は、私たち日本人の共通の財産であるとともに、また、世界を飛び交っている渡り鳥の共通の住みかであって、世界中の人々にとってかけがえのない自然の一つであることは、今や世界の常識になっています。
私たちは、このような大切な干潟が、ただ、たまたま名古屋市にあったからという理由で、市の放漫な環境行政の犠牲になっていいものとはとうてい考えられません。
環境庁でも、このような考えから、藤前干潟を鳥獣保護区に指定して、将来は、ラムサール条約の登録地としようという意向があるように聞いています。
私たちは、今回の藤前干潟の埋め立て問題に象徴されるように、私たちの共通の財産を、地域の独断で壊してしまうことのないように、みんなのものとして守ることができるような対策が、ぜひとも必要であると考えます。
貴市は、このような国内外の流れを理解し、開発一辺倒の考え方の転換を図り、より根本的なゴミ問題の解決に向けて努力するべきです。
そして、藤前干潟の重要性を認めるとともに、世界中の人たちに、みんなの宝物を自分たちだけの利益のために潰さないことを約束して下さい。
以上