COP3と原発−これは京都会議が残した政策−原発20基のからくりを許したもの−の注です。

地球温暖化問題への国内対策に関する
関係審議会合同会議(合同会議)




    合同会議委員名簿
    会議の経過
    主な意見
    原発関連
    報告書の意味づけ
    そのあとの流れ




「地球温暖化問題の国内対策に関する関係審議会合同会議」
9の審議会の代表者18名からなる。委員構成は次の通り。

地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議 委員名簿

    荒木 浩   電気事業連合会会長   総合エネルギー調査会
    今井 敬  (社)日本鉄鋼連盟会長  産業構造審議会
    茅 陽一   慶応義塾大学教授 総合エネルギー調査会
    久米 豊  (社)日本自動車工業会最高顧問  道路審議会
    河野 光雄  内外情報研究会会長  産業構造審議会
    小林陽太郎  富士ゼロックス(株)代表取締役会長  経済審議会
    近藤 次郎  日本学術会議前会長  中央環境審議会
    佐和 隆光  京都大学経済研究所教授 国民生活審議会
    椎名 武雄  日本アイ・ビー・エム(株)会長  電気通信審議会
    篠原 滋子 (株)現代情報研究所所長 電気通信審議会
    鶴田 卓彦 (株)日本経済新聞社代表取締役社長 建築審議会
    豊田章一郎 (社)経済団体連合会会長 運輸政策審議会
    中村 英夫  運輸政策研究所所長・武蔵工業大学教授 運輸政策審議会、道路審議会
    松尾 陽   明治大学教授  建築審議会
    水口 弘一 (株)野村総合研究所顧問  経済審議会
    森嶌 昭夫  上智大学教授  中央環境審議会
    吉岡 初子  主婦連合会事務局長  国民生活審議会
    鷲尾 悦也  日本労働組合総連合会会長   経済審議会




会議の経過−首相官邸ホームページ「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議議事要旨」(内閣内政審議室:速報のため事後修正の可能性あり)による−

*第1回 平成9年8月27日(水)午後2時から4時

    最初に、橋本内閣総理大臣が挨拶。次に、古川内閣官房副長官より「地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議を巡る現状と課題」について説明。その後、近藤次郎委員が議長に、茅陽一委員が議長代理に選任される。 近藤議長の挨拶。 引き続き自由討議。

    議 題 (1)気候変動枠組条約第3回締約国会議に至る経緯と現状
    (2)我が国のCO2排出量の現状と見通し
    (3)我が国の長期エネルギー需給見通しとその実施状況
    (4)産業、民生、運輸各部門におけるCO2排出及びエネルギー消費の現状と要因分析を踏まえた政策課題


*第2回 平成9年9月26日(金)午前10時〜12時

    「産業部門における今後の省エネルギー対策のあり方」について稲川通商産業省資源エネルギー庁長官から、「運輸部門における今後の省エネルギー対策等温暖化対策のあり方」について並木通商産業省環境立地局長、土井運輸省運輸政策局長、佐藤建設省道路局長、山本警察庁交通局長及び高原郵政省大臣官房審議官から説明がある。引き続き、自由討議。
    議 題
    (1)産業部門における今後の省エネルギー対策のあり方
    (2)運輸部門における今後の省エネルギー対策等温暖化対策のあり方
    (3)地球温暖化問題に関する世論調査について
    (4)地球温暖化問題への国内対策に関する関係審議会合同会議ヒアリングの開催について


*第3回 平成9年10月13日(月)午前9時30分〜12時

    議事に先立って「数値目標に関する日本政府提案」について田邊外務省地球環境問題担当大使から説明。
    引き続き、「民生部門における今後の省エネルギー対策を中心とした温暖化対策のあり方」について稲川通商産業省資源エネルギー庁長官及び小川建設省住宅局長から、「国の率先実行計画の推進」について田中環境庁企画調整局長から、 「エネルギー需要抑制対策と国民の新たなライフスタイル」について井出経済企画庁国民生活局長から、「地球温暖化に関する広報等の予定」について上村内閣広報官から順次説明。そのあと討議。
    次に、「経済的手法による温室効果ガス排出抑制対策」について田中環境庁企画調整局長及び並木通商産業省環境立地局長から説明を行い、討議。
     次に、「温室効果ガス排出抑制対策」について稲川通商産業省資源エネルギー庁長官及び田中環境庁企画調整局長から説明の上、討議。

    議 題
    (1)民生部門における今後の省エネルギー対策を中心とした温暖化対策のあり方について
    (2)エネルギー需要抑制対策と国民の新たなライフスタイルについて
    (3)「地球温暖化」に関する広報等の予定について
    (4)経済的手法による温室効果ガス排出抑制対策について
    (5)温室効果ガス排出抑制対策について(自由討議)


平成9年10月27日(月)午後2時から5時 ヒアリング(東京)
平成9年10月30日(木)午後2時から5時 ヒアリング(大阪)

*第4回 平成9年11月7日(金)午前9時15分〜11時45分
    まず、議事に入る前に、上村内閣広報官から地球温暖化防止に関するバンフレットについて、田邊外務省地球環境問題担当大使からAGBM8の概要について説明。引き続き、議事に入り、近藤議長から10月27日に東京で、10月30日に大阪で開催された合同会議ヒアリングの結果について説明。その後、報告書骨子案に沿って、報告書とりまとめに向けての審議が行われた。

    議題
    (1)地球温暖化問題への国内対策に関する合同会議ヒアリング結果について
    (2)地球温暖化問題への国内対策に関する合同会議骨子案について

*第5回 平成9年11月13日(木)午前9時30分〜11時30分
    議題 地球温暖化問題への国内対策に関する合同会議骨子案について

平成9年11月14日(金)総理大臣へ報告書提出



主な意見−首相官邸のホームページより関連する意見を抜粋−

<原発関連>

    ○現状を考えるに、2010年までに原子力2500万KWが実現できるとは現場にいて自信がない。自治体や住民、マスコミから、原子力推進についてのコンセンサスづくりをやっていただかないと進まない。例えば、AGBM8で原子力の話を持ち出したら、途上国から反発が起き、恥を掻いたという記事があった。そういう状態では2500万KWは無理。建設的な批判は受けるが、原子力を育てるということがないと、CO2対策はできない。特に自治体には電源立地に対する理解がほしい。原子力のコンセンサスづくりに大きく踏み込むことを書いてほしい。

    ○なかなか難しいところ。原発は今すぐ立地が決まっても2010年までに送電できるかどうかも難しい。しかし、原子力に対することは書いておく必要がある。

    ○今の案のままではさらっと書きすぎ。

    ○新エネルギーと原子力の導入の推進については、原子力に依存せざるを得ないということを国民に理解してもらうことが必要。経済的繁栄、活力の維持が当然と言いながらライフスタイルを見直せでは国民にとっては何だという感じになる。現状を示して理解してほしいという姿勢を文章で表すべき。

    ○原子力についての表現がきつい。国民はなかなか納得しないのではないか。量的には少なくても風力、太陽光など新エネルギーがあり、生活水準を下げてもよいから原子力を低めにしてくれというジャーナリスティックな議論もある。また、「見通し」は、今この数字を信じないと大変なことになるという意識を国民が持つべき真剣なものと考えるべき。見通しの持つ重みを受け止めるべき。

    ○ジャーナリズムでは別の場面では豊かな生活というように、原子力との選択に関して本当に国民が気分を変えて生活水準を下げることになるかどうか。経済的繁栄はした方がよいので、何とかできるならそうしたいということ。国民はギリギリの選択を求められているというメッセージが伝わることが重要。

    ○事故があったりして、国民に原発アレルギーがある。原発を作る地域には大変厳しい抵抗がある。原発をつくるかわりに生活水準を下げるという選択肢もある。こうした選択肢を提示し、国民に問い掛けることも必要ではないか。そのためには、情報提供、省エネのための活動によるムード作りが重要。

    ○考え方として原子力は温暖化防止のためにどうしても進めるべきと書くのは無理がある。原子力が現実に温暖化防止に資するという役割を十分国民に認識してもらうという形で書いてはどうか。

    ○原子力はうまく書かないと誤解を招く。報告書自体が全否定されてしまう可能性もある。


<報告書の意味づけ>

    ○合同会議により各審議会の様々な意見が統一されたことに大きな意味があり、各審議会に持ち帰った際に本合同会議の結論を尊重する形で行ってほしい。・・・本合同会議として、報告書に明記してあること以上に規制的手法を採らないことを確認してはどうか。
    なお、炭素税については、合同会議としては、我が国の対策として現段階では採るべきではない、との結論であると解釈している。

    ○本合同会議は基本的方向付けを議論したのであって、個々の問題について各審議会に縛りが掛かるという決定はしていない。基本的方向付けとしては当然考慮に入れなければならないが、報告書に書かれていることを踏み越えてはいけないとの解釈には反対。

    ○本合同会議は9つの審議会の議論を否定するものではない。炭素税について各審議会がこれ以上議論しないことを決めたという解釈はしない。各審議会はそれぞれの立場で省庁の行政について注文をつけるもの。

    ○・・・新エネルギーの導入は容易ではなく、原子力については苦労が予測される。項目を起こすことは今更できないが、もう少し強く書き込んではどうか。

    (この後、茅議長代理から「今回は供給問題については触れていないが、これは今後重要な施策の一つであるということを、基本的考え方に書き込む」旨の発言があった。)

    ○供給サイドの話はしっかり書き込むべき。総合エネルギー調査会でも来年から議論するとすれば、原子力のウェイトを国民に分かってもらうような手法を含めて議論していくことが必要となる。
最後に、近藤議長は「・・・報告書の内容については、政府の今後の国際交渉の手足を縛らないよう注意したつもりであるが、各省庁は本報告書の内容を重く受け止め、本提案に沿って実効性のある対策を講じてくれるものと信じている。・・・」と締めくくった。

報告書の末尾には、「本合同会議での審議を経て、我々は、異なる審議会に属するものの、地球温暖化問題に関する認識と解決に向けた強い決意を共有するものであり、今後、それぞれの審議会において、2010年及びそれ以降に向けた政策の具体化に着手するものとする。」と書かれている。

<そのあとの流れ>

12月3日づけの朝日新聞の朝刊には、原発「高出力運転を」電力会社が許可を要請−温暖化防止に絡め−と題する記事が載った。京都会議を機に、電力会社は、原発の増設や既存の原発の設備利用率を高める必要があると訴えており、「高出力運転」は、その一環として、発電コストを下げ、CO2の排出を抑えて、温暖化防止に貢献することができるので許可してほしいと求めているものだという。通産省では、住民の合意を得るために「説明の方法や実施の時期などを」検討中とのこと。

11月14日、おりしも報告書の提出と同じ日に行われた衆院環境委員会では、参考人として意見を述べることになった、経団連地球環境部会長加納時男氏が、この合同会議の報告をあげて、原子力増強論を主張したという。

京都会議の後初めて開かれた第6回関係審議会合同会議(平成10年3月30日)の議事要旨によれば、「地球温暖化対策はグローバルな問題であり、有害公害とは異質で局所的な規制になじまない。実際、これまでの原子力への対応を見ても、都道府県で計画を変更となると容易なことではない。都道府県との関係で難しい問題が生じる。対策全体は環境基本法で対応し、個別のテーマは個別の法律で律すべき。原子力がなければCO2は2割増える。日本の数値目標の達成は原子力立地が予定どおり進むかどうかにかかっている。国が前に出て問題を解決していただくことが必要 」という意見も出されていたという。


本文:原発20基の増設を許したものにもどる
注2:「石油代替エネルギーの供給目標」
注3:(参考)気候フォーラムの財務報告


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