非加熱製剤が外国で禁止されて、危険だということがだんだんわかってきたのに、今禁止するとメーカーが困るから、はっきりとした証拠が出るまでは使っておこうと考えた。アスベストだって同じことなんだ。
それを使うことで、何人か、何百人か、何千人か、何万人か、何十万人かわからないけど、ずっと後で死ぬ人もたくさん出るって言われているのは知っている。
だけど、人間なんてどうせいずれは死ぬんだし、そんなこといちいち気をつけていたらきりがない、だから、まだはっきりわかる前にやめる必要はない、そう思って使ってる。
非加熱製剤から加熱製剤に替わるまでの数年間、その間だけで、何千人もの人がHIVに感染させられた。
その事実を知って、アスベストについて考えた時、みんなはなぜ、こんなことが、また繰り返されようとしているのを許していられるのかな? 全く、同じ事がまた、目の前で起こっているのに、なぜそれを黙って見ていられるのだろう?
みんなはよく言う。「アスベストのことで、よくそんなに一生懸命になれるね」って。でもほんとは、私の方が聞きたい。「みんなはどうして、こんなことを知って、平気でいられるのか」って。
HIVに感染させられた人たちには、みんな家族がいる。その家族の人たちが、どんなに苦しい思いをするだろうと考えただけでも、私にはとてもたまらない。こんなことを、もう二度と繰り返すなんてできない。
HIVのことを絶対に許せないから、私には、アスベストだって許せない。
アスベストはまだ、日本では、毎年20万トンも使われている。みんなの身の回りにあふれているんだ。
そんなに危険なものが、どんどん使われていいのかな? なぜ、何の対策もたてないでいられるんだろう?
静岡市では、吹き付けアスベストの除去工事は済んでいるといわれてた。
それで調べ始めた。みんなが、「アスベストはもう除去済みです」って言ってるのが本当かどうか確かめたかったから。そこで何がわかったか。
アスベストを含む吹き付けは、少なくとも、7市営団地、43棟、850戸以上で、今も残されたままだ。とにかく、囲いこみ工事(吹き付けは残したまま、その下をボードなどで覆ってしまう)は行われている。
それはどの範囲で? そして、どの様にして?
アスベストの問題は、まだなんにも片付いてなどいない。それなのに「もう全く使われていないですよ」なんて言うことが、なぜ許させるのか?
薬害AIDSの問題が起こった時も、「非加熱製剤はそんなに危険ではないですよ」と言っていた多くの医者たちがいたはずだ。
そして、それを信じた大勢の被害者がいたはずだ。