アスベスト根絶ネットワークの機関誌アスネット34号に投稿

静岡県のアスベスト対策の現状
県職員住宅の解体をきっかけとして

 

アスベストについて考える静岡県民の会 ヘパフィルター   

 

自宅近くの、鉄筋4階建てなど計15棟の県職員住宅が、5年余りの期間をかけて取り壊しされ、新築 されると聞いたのは、昨年末のことだった。

今年になって、たまたま話をした友人を通じてネットワークと の交流が始まり、その中で、アスベストを巡る日本の現状、問題などを知った。

5月初め、それと前後して相談を持ちかけていた県会議員の白 鳥氏と共に、職員厚生課に対して、事前調査の徹底、アスベスト含有建 材についても負圧除塵装置を使用しできる限り飛散防止を図ること、 アスベスト濃度の測定、説明会の開催、講演会の開催、アスベスト製品 の不使用の6項目を要望した。

これが、県に対して、根本的なアスベスト対策の見直しを求める きっかけとなった。これまでの経過と、今後の見通しなどについて報告する。

  1. 県職員住宅の解体について

    8月5日に職員厚生課と話し合いを行い、次の点について確認した。

    1. 再度事前調査を行っている。吹き付けアスベストは存在せず、 いくつかの場所で、 アスベストを含む建材が見つかっている。 (非含有であることも確認できるリストの提出を求めた。)

    2. 飛散防止対策として、石綿スレートなどのアスベスト建材は、 破砕しないように十分注意して取り外しを行い、搬出する。今後は 取り壊しにかかわる他の課もこのような方法で行ってゆく。 (特に劣化したスレートの場合、アスベストの含有率も高く、 飛散の恐れが大きいので、吹き付けアスベストと同様の対策を 立てて撤去することを求めた。屋内の取り外しの場合、除塵装置等 の使用を求めた。)

    3. 濃度測定は、それぞれの棟で、敷地境界と作業場について、 工事前、工事中、工事後に行う。

    4. 工事については、近くの学校を含め周辺地域に町内会を 通じて文書で知らせる。(アスベスト工事の日をできるだけ 特定し、アスベストが含まれていることとその対策について 明記し、注意を呼びかける内容の文書を、なるべく広い範囲 に流すことを求めた。)

    5. アスベスト建材は、この後ここで建築する建物には使用しない。

    今後、石綿スレート等の建材についての飛散防止対策が、どこまで 地方公共団体に求められるのか、また、法的に定められていない アスベスト建材の飛散防止にかかる費用が、適正な支出といえるかどうか、 どのような財政支出を優先的に考えるのが望ましいのか、その価値観が 問われてゆくことになる。

  2. 環境保全にかかわる問題について

    7月3日、環境保全課に対して、 『静岡県のアスベスト対策についての質問とお願い』を渡し、 それにもとづいて説明を受けた。

    しかし、大気汚染防止法の改正に伴い、4月に、環境庁から、 アスベストの飛散対策の改善を図る必要性あることについて、 調査報告書が出されていたことに気づいたのは、その回答の 後しばらくしてからだった。「なぜ今ごろになってアスベス トを問題にするのか」と答えた、同課の責任を考えたい。 現在、特に、アスベスト製品製造工場等に関する調査結果の資料が、 所有者の私的利益を守るため公表されない点を、環境基本条例の 趣旨等から問題にしている。

    また、石綿スレートを含む建物の解体が今後膨大な量になることから、 大気汚染を防止し、住民の健康を守るために、行政によって、積極的な 飛散防止対策がとられてゆく必要があることを訴えている。

    これに関連して、情報公開の実態や、我々の知る権利はどの程度保証 されるのか、公益に係る情報公開の有料制度が、住民の経済力による 差別にあたらないかなども、問題になってくるだろう。

  3. 吹き付けアスベスト除去について

    これまでの経過の中で、県の職員は、 県下の公的施設において吹き付けアスベストは除去済みであると、繰り返し 公言して来た。確認のため、公文書の開示請求をしたところ、県教育委員会 を含めた関連する7課から、該当する文書なしの回答が出され、吹き付け アスベストが除去されているのか、どのような調査がされたのか、 今のところ確認できない。

    具体的根拠がないにも拘らず、アスベストはすでに使われていないと職員が 公言することによって、アスベスト問題がすでに解決済みであるような錯覚を 住民に与え、それによる被害を防ぐために我々が自衛する機会を奪う結果に なっている責任は無視できない。 これに関連して、県教育委員会に対して 設計図書の公開を求めているが、このような要求によって、今後、何とか再調査 を求める方向に持ってゆきたい。

    静岡市教育委員会では、吹き付け岩綿についても除去リストがあった。 ところが、学校の岩綿除去工事の際、休み中でない時期に工事が行われ、 これについて生徒や関係者に、何も伝えられていなかった。少なくとも、 できる限り被害を防ぐために呼び掛けることは、生徒の健康保護のため、 当然行われなければならないと考える。

    危機管理の問題にも通じるが、犠牲者を一人でも少なくするために、 できる限りの手を打つ、危険を回避するための情報はできる限り与えると いう意識改革こそ、今、最も求めたいので、市の教育委員会に対しても見解 を求めてゆきたい。

  4. そのほかの動き

    静岡労働基準局では、当初、吹き付けアスベスト以外の建材については特別 の法規制はない、罰則についてはわからないと答えたが、確認の後、アスベスト 成型版であっても、破砕する必要のあるものは局所排気装置などの対策が必要で あって、これらについては、6ヶ月以下の懲役、50万円以下の罰金の罰則が あると回答した。

    また、この間、アスベストについての関心を高め、知識を深めるため、 周辺住民にちらしを配ったり、友人などを通じてできる限り働きかけ、一人でも 多くの人にアスベストについて知ってもらおうと努めている。

    さらに、これまでの経過から、白鳥県議は、最近、議会の建設常任委員会で アスベスト対策について質問し、これを全庁的な動きにしてゆきたいとの意向を 明らかにしている。今後、各課に対して、具体的な要求をしてゆくことを予定し ている。

  5. これまでの動きを支えてきたもの

    1. 当初、アスベストについてほとんど知識がなかったことを考えると、 ネットワークから送られてきた様々な情報が、今回の動きを作り出してきたのは 間違いない。

    2. その中で行われた問題の指摘や、どのような動きが可能であるのかについて の助言や示唆が、ナビゲーターの役割を果たし、常に活動の方向が明らかにされていた。

    3. そのようなはっきりとわかる支援のほか、アスベストについての知識も関心も 乏しい、狭い地域社会に生活することで、避けられない孤立感や、社会的に生じて くる軋轢に対して、ネットワークの持つ連帯感が大きな精神的な支援となり、 今までの動きを支える力になった。

    4. 「担当者いじめである」「工期が遅れる」という批判に対して、目に見える数えられる人達の不利益よりも、目に見えないより多くの数えられない人達の利益 を大切にしたいと考えた。これが、自分自身も含め、他の個人的な問題について、あまり関心を持たないで行動するために役立った。


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