さあ台輔、戻りましょう     NEXT(運命)へ

蒼い目がを見つめていた。
蒼い目はに危険だと告げた、行ってはならぬと・・・。



風に逆らいながら歩いていたは、ふと足下を見下ろすと、そこに地は無かった。
ふわりと身体が宙を舞うように落ちていく、その言い知れぬ浮遊感はどこまでも続くように思えた。

誰かが呼んでいる。

『目覚めの時が近づいている』
恐怖を感じながらもそれに抗えず、心のどこかで待ち望んでいたように血が騒ぐ。
『汝の血を・・・』
己は知っている、この声をどこかで聞いている、それは遠い記憶。

思い出せない、懐かしいのにとても怖い。
引き寄せられていく見えない力に従い、身を委ねる。

目の前に黒く蠢く大きな何かが現れた。
『汝の気を・・・』
闇のようだった、闇が蠢きながらを包み込もうと腕を広げて待ち構えている。
『汝の力を・・・』
突如闇の中心から目も眩む強烈な閃光が放たれ、の身体を貫いた。

「嫌ーーーーーっ!」

びくっと痙攣し、目を開けた。
身体が酷く怠くて暫くは動けなかった。
夢だと認識しても鼓動は早いまま落ち着く気配は無い、汗で夜着はじっとりと湿り、喉が渇いて呼吸さえ億劫に感じる。
ふと違和感を感じ胸元の痣に触れてみると、そこだけ熱を持ち、まるで生き物が埋まっているかのように脈打っていた。

悪夢に魘され目が覚めても尚、不安と倦怠感が後を引き、寝れぬまま朝を迎えてしまう日も少なくなかった。










その日は陽子に依頼された仕事をこなすため堯天に降りていた。

賢くすばしっこく、なかなか尻尾を掴ませない夜盗の根城を何とか探り当て、陽子に報告すべく王宮に戻ろうとしていた時のこと。
こちらを窺う気配、・・・瑛泉ではない。
昨日から時折感じて気にはなっていた、夜盗の一味かと思っていたがどうやら違うようだ。
殺気は感じないがどうにも気になる、このまま王宮まで付けられても困ると思い、捕まえることにした。

狭い路地に誘い込み、角を曲がったところで立ち止まると気配を消して待つ。
突然の気配が消えて撒かれたかと慌てた男が走り出し、角から飛び出してきた。
ひょいと足を出してやると面白いほど簡単に引っ掛かった。
「単純ね・・・」
ぼそりと呟き、派手に転けた男の胸ぐらを掴む。

男は突然のことに目を白黒させ、目の前のを見ると漸く何が起きたか解せたようだった。
「わっ!?な、何をする!?」
酷く動揺している。
百戦錬磨の傭兵を尾行するなど、余程腕に自信がある輩なのかと思いきや、この男、意外に小心者らしい。

動揺しジタバタと暴れる男に呆れながら、にっこりと極上の微笑みを見せると男の顔からさっと血の気が引いた。
「何をしてたのか聞きたいのは私の方なんだけど」
「い、いや・・・何も・・・してない」
「ふ〜ん、何も・・・ねぇ。昨日からやたらと貴方を見かけるんだけど偶然かな〜」
「ぐ・・・偶然だよ。・・・勘違いだ!」

途端にの口調がきつくなる。
「そんな見え透いた嘘を信じるとでも思ってるの?何故私をつける、誰に頼まれた」
「・・・し、知らない、何のことだ」
するりと剣を抜き、鼻先にちらつかせると男は「ひっ」と声を上げ身じろいだ。

「死にたくなかったら正直に言いなさい。何が目的で誰に頼まれたの」
「・・・こ、こ、殺せばいいだろ。俺一人くらい居なくなったって他の奴がまたすぐにお前を捜し出すさ!」
小心者の割には存外主への忠誠心は篤いらしい。

はふと何か思いついたように懐から小瓶を取り出した。
多少不安はあるが試してみる価値はあるだろうと、男の鼻をつまんで無理矢理小瓶の中の液体を流し込み、手でその口を塞いだ。
男は呼吸できない苦しさに手足をばたつかせていたが、やがてごくりと喉が波打ったので手を離してやる。
「な、何を飲ませやがった!?」
聞かれたので親切に答えてやった。
「情熱の薬よ♪」


待つこと暫し・・・
「・・・・・」
何の変化もない・・・
「ねえ、何か感じない?」
「何にも・・・」
「気持ち悪いとか痛いとか、どっか身体が変だとか」
「別に・・・出来ればここから逃げたいな」
「・・・・・」

更に待つこと暫し・・・
そろそろ剣を持つ手も疲れてきた。
(効かないじゃない。やっぱり虎嘯か誰かで試しておくんだったな・・・)
はぁ〜と溜息をつき諦めかけた時、男の肩が震えだした。
顔を覗き込むと涙を流して泣いている、これにはさすがのも狼狽えた。
(な、何!?)

男は暫く啜り泣いた後、顔を上げを見つめてきた、かと思うと次の瞬間ガバッと徐に抱きつかれ危うく剣で刺しそうになる。
「きゃっ!」
何とか刺さずに済んだものの、男の首から血が滲み出す。
「ちょ、ちょっと、離してよ。どうしたの!?」
「・・・・・俺と。・・・俺の嫁さんになってくれ!」
「はあ???」

「うち貧乏で、田舎で親が病気で寝込んでて、帰る度に嫁さん連れてこいって煩くて・・・貴方みたいな美人だったらいいななんて・・・・・・・・」
火がついたようにべらべらと喋り出した男を何とか引き剥がし、ふぅ〜と溜息をつく。
(どうしよう、止まらなくなってる。。。)
は眩暈をおぼえ、額に手を当て溜息を零す。

男は尚も喋り続ける。
「・・・・・したんだ。それで何か儲かる仕事がないかって探してたら成輯様が雇ってくれるって言うし報酬も」
「えっ!?ちょっと待って!」

突然が大きな声を出したので、男はびくっとして口を噤んだ。
その顔は叱られた子供のように怯え、また泣き出しそうだった。
「あ、ごめんね。怒った訳じゃないのよ。うんとね、ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
男は上目遣いにを見ながらこくりと頷いた。
「誰が貴方を雇ったの?」
「・・・成輯様」
聞いたことがない名だった。

「その人は何をしてる人?」
「わからない、でもって人を捜してるから見つけてこいって言われて、成輯様の大切な人だって言ってた。見つけたら住んでるところを教えろって、そうしたら報酬はたっぷりくれるって言われて・・・」
「そう・・・それでその成輯様って人はどこにいるの?」
「・・・さあ、わからない。明日宿街を彷徨いてれば使いの人が声をかけてくれるって言ってた」
「じゃあ、貴方は成輯様に会った訳じゃないのね?」
「会ってない」
(だめだ。。。この男は何も知らない。私、何か恨みを買うようなことしたっけ。。。単なる嫌がらせかな)

心当たりがない、というより心当たりがありすぎて見当もつかない。
明日この男を尾行したいが、これから王宮に帰らなければいけない。

「いい子だから大きく息を吸って」
男は首を傾げながらも言われた通りに息を吸う。
「はい、ゆっくり吐いて」
男が息を吐き終わったところを見計らって鳩尾に一発くれてやり昏倒させた。
「私ってお人好しね、こんな男に気を遣うことなかったかな」
一応痛みを最小限にしてやろうと思ったのだが、薬でおかしくなってる男には必要なかったか、と今更ながらに気づく。
大きな溜息を一つ零し、その場を後にした。



久しぶりに酒場にでも行ってみようか、とは王宮とは反対の方向へ歩き出した。
店へ入り、空いている席を探す。
入ってきたを見た入り口近くの客がなにやらヒソヒソと話している。
カウンターの奥に空いている席を見つけ、腰掛けた。
店内の客の数人から視線を感じ、やはりヒソヒソ話を始める。

祐恵はいつものように声を掛けてこなかった。
笑いを必死に堪えている様子での前にいつもの酒を置く。

「・・・ねえ祐恵、何だか凄く居心地悪いんだけど・・・」
は自分に向けられる視線に戸惑いながら困ったように苦笑する。

祐恵は相変わらず口元を笑みで引きつらせながらをまじまじと眺めた。
「この辺りじゃはちょっとした有名人だからな」
今更・・・とは肩を竦めてみせる。
「それは光栄ね。これ以上有名になっても困るんだけど・・・これでも最近は大人しくしてるのよ。それとも私の偽物が暴れ回ってるとか?」
何とも居心地が悪い。
口元を引きつらせながらも身に覚えのないは真剣に聞いたのだが、祐恵は堪らずといった感じで声をあげて笑い出した。
「お前さんは大人しくしてても目立つからな。それで?やっと傭兵業から足を洗う気になったのかい?」
「・・・へ?何の事?」

全く心当たりが無いと心底不思議そうに首を傾げるを見て、祐恵は少し目を丸くしながら「おや」と言う。
「当の本人は何も御存知ないようだな。っていう美人で腕利きの傭兵を探してる御仁がいるらしいぞ」
「ふ〜ん、私の首に賞金でも賭かってるの?」
「ああ、賭かってるとも。何でもその御仁の記憶を失った大切な妻が家出をしたという話だぞ」
「へえ、それでどうして私がお尋ね者になっちゃうわけ?」
「その大切な妻というのが、お前さんなんだとさ」
「はぁ!?」
タイミング悪く口に含んだ酒に、げほっと噎せる。

祐恵は滅多に見れないの動揺振りを見て楽しそうに笑った、だが次の瞬間スッと笑みを消し、に顔を近づけ周りに聞こえないように声を殺す。
「心当たりは?」
「あるわけないでしょ!」
「やっぱりな、そんなことだろうと思ったよ。お前さんを知ってる連中はそんな話本気にしてねえさ。それにどうやらお前さんを消すために探しているわけでも無さそうだし、捕まえて来いというわけでも無いらしいな。いや、消す気が無いから逆に厄介だとも言える。一応用心しておいた方がいいぞ」
「・・・そうね。それでその御仁とやらって何者なの?」
「さあな、直接会ったってやつはいないらしい。名前は確か・・・成輯とか言ってたな」

成輯・・・先程の男もそう言っていた、一体何者なのだろう。
相手に殺気が無ければ人の多い街中で気配を感じ取るのは困難だ、先程の男は周りに人が少なかったし素人のようだったから視線を感じることが出来ただけだ。
それにしても誰かに娶られた覚えなど全く無い、やはり人違いだろうか。

店を出ると案の定数人の男が後を付けてきた、どうせ賞金目当てだろう。
人気のない道を選びながらさっさと捲いてしまう、完全に気配が消えたのを確かめてから王宮へと戻っていった。










それから約三ヶ月が過ぎ、忙しい毎日を送っているうちに妙な噂のことも尾行の男のことも忘れかけていた。

いつものように仕事を終え自室に戻ると、一通の書簡が届いていた。
差出人の名は記されていない。
誰にも素性を明かしていないため、外部から書簡が届くなど有り得ないことなのだが・・・。
怪訝に思いながらも開いてみる。

『薬屋の娘を預かっている。明日楊州州境にて待て』

の顔が一瞬にして蒼白になった。
(まさか!・・・琳明が?)
信じられない、信じたくない、・・・だが確かめなければならない。
忘れかけていたあの夜の記憶が蘇る、男は確か成輯様と言っていた。
(もしかして成輯という男が琳明を・・・?)
はすぐさま内殿へと戻った。



「主上、にございます。よろしいでしょうか」
程なくして中から「どうぞ」と入室を許可する声が聞こえた。

陽子はを見て少し驚いたようだった。
「どうした、顔色が悪いぞ」
そう言われは気まずそうに俯く。
「夜分に申し訳ございません。突然で申し訳ないのですが、明日休暇を頂きたくお許しを請いに参りました」
の表情も声もいつもより少し固く感じられ、陽子は訝しむ。
「・・・・・それは構わないが・・・から休暇の申し出があるなんて珍しいな。何かあったのか?」
「友人が臥せっていると報せがありましたので」
ああ、と陽子は納得した。
友人が心配だからか、と陽子は解釈した。
「そうか、わかった。女官長には私の方から話しておく」
「有り難うございます。では失礼させて頂きます」





自室へ戻るとすぐに王宮を出て琳明の店へ急いだ。
浩瀚に言うべきか悩んだが、書簡が事実を告げているという証拠は無い、店に琳明の姿があることを願った。
店に着く頃にはすっかり夜も更けていたが、店の奥にある住居からは灯りが漏れていた。

裏口に廻り、扉を叩くと琳明の弟が出てきて、の姿を見ると目を見張った。
「・・・さん!どうして・・・あ、すみません。とにかくどうぞお入りください」
は黙って頷き、中へ入った。
居間では琳明の両親が狼狽の表情を露わにしながらに視線を向けてきた。
はその状況と琳明がその場に居ないことを確認し、書簡に書いてあったことが事実だと悟る。

「琳明は?」
が恐る恐る問うと、聡明な弟はが訪ねてきた訳を悟ったように「はい」と頷き、事情を説明し始めた。

「姉は昨日薬の材料を買い付けに出かけたのですが、それきり戻ってこないのです。今日も心当たりを探してみましたが行方は知れぬままです。・・・さんは何故姉のことを?」
聞かれては何と答えれば良いのか逡巡したが、やがて深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。琳明は私のせいで何者かに連れ去られたようです」
それを聞いて両親も弟も驚愕していた。

琳明は当然が何者でどこに住んでいるのかも知らない。
傭兵だと思っているだろう、否もしかしたら気づいているのかも・・・。
どうしているだろうか、無事でいてくれればいい。
恐怖に震え泣いているだろう、酷いことをされていなければいいが・・・。
(ごめんね琳明、私のせいで・・・。必ず助けるから待っていて)

「必ず無事に連れて帰ると約束します。ですからどうか琳明を信じて待っていてください」
慰めも言い訳も言う資格など無い、今のにはそれしか言うことが出来なかった。

は責められ問い詰められるだろうと覚悟していたが、それは無かった。
悲痛な面持ちで、それでも三人は黙って頷いてくれた。
内心ほっとしたが、逆にその優しさが痛かった。
自分のせいなのに、優しくされる資格など無いのに、それでも信じてくれるというのか。
心臓を締め付けられる思いがした、唇を噛み締め泣きたくなるのを必死で堪えた。

は不審者を見なかったか、何か変わったことが無かったかを聞いてみたが、三人は首を横に振るだけであった。
その後琳明の房間も調べたが、やはり手がかりになりそうなものは何一つ無かった。
目的が自分であることはわかっている、だが相手が誰なのか全く見当も付かない。



堯天のある瑛州から楊州へは麦州と紀州の州境を通らなければ行けない。
開門と同時に瑛州から紀州に入り、閉門までに楊州に着かなければいけない。
は手がかりを探すのを諦め、店を出ると夜道を紀州に向けて歩き出した。

街道を無視し、出来るだけ近道をしながら紀州を抜けて閉門間際に漸く楊州へと入る。
息を吐いて立ち止まると、一日歩き通しだったため、さすがに足が重たく感じた。




閉門後、暫くして門の周りから人影が無くなると一台の荷馬車が近づいてきた。

荷馬車から一人の男が降り立ち、「様ですね」と確認してきたので素直に「はい」と頷いた。
「成輯様よりお連れするように申し使っております。御友人は邸におられます、くれぐれも妙な事は考えられませぬように。申し訳ございませんが剣をお預かりさせて頂きます」
当然そう言われるとわかっていたので大人しく剣を渡す。
「他にもお持ちかと存じますが」
やはりそう来るか、と内心で舌打ちしながら短刀を渡した。
「ではどうぞお乗りください」
男の慇懃な態度が気になったが黙って荷馬車に乗った。

車内に灯りはなく当然窓も無い、外の様子は窺えなかった。
暫く走っていた馬車が止まり、降りると目の前には古びた邸が建っていた。

低く狭い門を少し身を屈めながら潜り、邸内へと入ると房室へ案内される。
房室の扉を開け「成輯様、様をお連れ致しました」と中へ声を掛けると、に「どうぞお入りください」と入るよう促す。
房室へ足を踏み入れると同時に後ろで扉が閉められた。






薄暗い房室に入ると、そこに居たのは一年前に死んだはずの兄、露斉だった。
「・・・っ!?」
は二度と会うことはないと思っていた兄を目の前にして、驚愕のあまりに言葉を失っていた。

「信じられないという顔をしているな、それとも往生際が悪いと呆れているのか」
露斉は不敵な笑みを浮かべていた。
「・・・・・自害したのでは、無かったのですか」
「あの時私の顔を知っているのはお前だけだった、お前は私の死体を見たのか?」
言われてははっとした。
確かに自分は露斉の死体を確認していない、自害した人物が自分が露斉であると認め、特徴も似ていたので誰もが疑わなかった。

「それにしてもお前にはうまく騙されてしまったな。まさか既に王宮に入っていたとはな」
露斉はくくく、と喉で笑う。
「私は二度も死んだことになるな。今は成輯と名乗っている。誰も私が生きているなどと思うまい。おかげで自由に動ける。楊州は隠れるには最高の場所だな、考えの甘い御優しい主上のおかげで巧から逃げてきたと言ったら造作なく受け入れられてしまったよ」
皮肉を込めた物言いに、その薄く笑みを浮かべた冷酷な目に、ぞくりと悪寒が走った。

「琳明はどこに居るのです」
「あの娘なら無事だ、安心しろ。大事な人質だからな、無体なことはせぬよ。あの娘が居る限り、お前は私に逆らえまい」
「琳明に会わせてください」
「それは出来ぬ」
「琳明が無事だと確認できなければ貴方には従えません」
「私を脅迫するつもりか?あんな小娘はすぐにでも握り潰せる。どうだ、試してみるか?」
「・・・卑怯者」
憎々しげに吐き捨てた。

「ふふふ、卑怯者か。最高の褒め言葉だな。私に逆らえばあの娘がどうなるか、聡明なお前ならば分かるだろう?」
露斉はの腰に腕を廻し、顎を捉え顔を近づけてくる。
「私はまだ諦められない。玉座も、お前のことも」
そう囁き、唇を重ねてくる。
「んっ!」
の身体がびくりと反応すると、腰に廻された腕が逃すまいと締め付けてくる。

虫酸が走った、だが最早逆らうことは出来なかった。
「やはり素直なお前は最高に良い女だ。知っていたか?私はお前のことを妹として見たことは一度も無かった。お前は、私のものだ」
露斉は満足げに笑みを浮かべた。



は露斉の妻として房室を与えられ、不自由のないよう丁重に待遇された。
常時見張りが付いていたものの、邸の守兵はせいぜい三十名程度と思われ、一人で抜け出そうと思えば容易く出来ただろう、だが琳明を人質に取られている以上大人しく従うしかない。
露斉はそんなを側に侍らせ、至極満足そうだった。

琳明はどこかの房室に監禁されているようだが会うことは許されず、居場所もわからないままだ。
下手な真似をすれば琳明が危うくなる。
焦燥感だけが積もるが今はどうすることも出来ない。
食事も与え、傷一つ付けていないと言う露斉の言葉をただ信じるしかなかった。