ドイツ人のファッションセンス

 

1.ドイツ人の色彩感覚

街を歩いていて、一番目に付く服の色は「赤紫ピンク」である。青みがかったショッキングピンクとでも言えばいいのか、とにかく日本人はまず着ない色。これが一番多い。

二番目は「ローデン」といわれる、南ドイツの民族衣装で男性の上着に使われている茶がかった深緑。目に付くのはこの二色が圧倒的だ。きっとここまで圧倒的に服に使われているということは、ドイツ人はこれらの色がとても好きなのだろう。ちなみに筆者は「赤紫ピンク」のことを「ドイツ色」と呼んでいた。

よく、ファッション雑誌で、ミラノやらパリやらの学生たちが「おしゃれ」の例として写真で載っていたりするが、ドイツの場合はどこを見渡しても「んー、さりげないおしゃれ!」などと思える服装の人は一人もいない。それもそのはず、ミラノやらパリやらでは、黒や茶をうまく使って「オシャレ感」を出しているのが、ドイツでは、メインが上に書いた二色なので、どう考えても「ああいう服装をしてみたい」には、ならないのである。

 

2. ドイツ名物「ナイロンヤッケ」

ドイツ人は、ナイロンなどの化学繊維が大好きである。 少なくとも私にはそう見える。防寒具として、またスプリングコートとし て、必ず一番上に着ているのはナイロン製のジャンパーのようなもの(ドイツ語では「ヤッケ」という)である。同じ化学繊維製でも、黒でまとめるとか、濃いグレーだとかいうのであれば、さほど目立たないのだが、その「ヤッケ」がしかも上に書いた「ドイツ色+真緑」の二色使いだったりするので、「ナイロン感」も全開なのである。

チュービンゲン

二年目に住んでいた街チュービンゲン

3. ジーパンにジャケット

後に述べる理由で、ドイツ人はあまりスーツを着ない。テレビで見ている人でスーツを着ているのは、ニュースキャスターのみである。では、バラエティの司会やクイズ番組の司会は、どういう服装をしているのかというと、必ず「ブルージーンズ+ジャケット」である。どうやらこれが、管理職以外のサラリーマンの仕事着であったり、ちょっと改まった(ホームパーティなど)席での服装のようで、オフィスの開いている時間にオフィス街を歩くと、こういった服装の人が多く見かけられる。

4. スーツを着ると尊敬される?

では、スーツはいつ着るのか。そういう階層の人は、スーツを「着ない」のである。スーツを着るのは、管理職、大学教授、弁護士、といった社会的に高い階層の人々だけである。戦前の日本がそうであった如く、服装で属する階層がわかってしまうのである。だから、スーツを着ている人たちはそれなりに丁重に扱われるし、またそれにふさわしい風格を備えている(もともと高い階層の人なのだから当たり前だが)。一度、筆者の夫が服を買いに行くのに、スーツを着ていったところ、それまで(大抵ジーンズにジャケットまたは皮ジャン)とは打って変わって丁重に迎えられた。それ以来、ドイツの学生と同じようにすっぴん、ジーンズといった服装でどこへでも行っていた筆者も、それなりに服装を整えることを始めた次第である。

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