(河原)
兄君さま
「あ、またいつもの桜吹雪……。ということは……。
春歌
「兄君さま!
「なんて奇遇なんでしょう。いつものお稽古帰りにお会いできるなんて……。
兄君さま
「はは、そうだね……。
(……とか言いつつ、待ちかまえてなかった?
春歌
「あら、兄君さま! おぐしが乱れてらっしゃいますわ!
兄君さま
「ああ、これ……。ちょっと風が強かったからね。
春歌
「まあ、なんてコトでしょう……。……もし春歌が一緒についてあげられたら、こんなコト絶対させませんのに!
「さっ、兄君さま、春歌が直してさしあげますわっ♥ 昨今の殿方は身だしなみなども、大切だそうですよ♥
兄君さま
「そ、そうだね……。
春歌
「でも……ワタクシは……。兄君さまがどんなお姿でありましょうとも……。
「ええ、たとえ地獄から這い出してきた亡者のごときお姿でもっ! 兄君さまをお慕いする気持ちは変わりませんわっ♥
兄君さま
「そ、そう……。
(いったいどんな表現なんだ……。まぁ、悪い気はしないけど……。
春歌
「さ、直りました。……いつもの凛々しい兄君さまですわ♥ やはり兄君さまはこうでなくては……。
「あ、いけない。もうこんな時間……。これから踊りの稽古がありますの。……本当に残念ですわ。
「……申し訳ありませんが兄君さま。これで失礼させていただきますわ♥
「くれぐれも身だしなみにお気をつけ下さいましね。……それでは、ご機嫌よう、兄君さま♥♥
兄君さま
「やれやれ、行っちゃった……。ほんと、オーバーな子だよなぁ。……まぁ、そこが可愛いんだけど……。
兄君さま。
本日は大変に失礼いたしました。
充分にお世話もできぬまま、あんな風に兄君さまを残して去らねばならないのは痛恨の極みでした。
でも……。
あんな所で予期せぬ邂逅を果たせたことは、春歌にとって思わぬ僥倖でございました。
日々のお稽古で疲れた心身も、兄君さまのお優しい笑顔で癒された気持ちです♥
それにしても兄君さま……。
今日あらためて兄君さまのお姿を拝見して、春歌の心は千々に乱れております。
おぐしの乱れた兄君さまのお姿……。
兄君さまの暮らしぶりが、春歌はとても心配です。
少しでも多く、兄君さまのお世話をして差し上げたい……。
そう思うと、居ても立ってもいられません。
もしよろしければ……ワタクシの家に遊びに来て下さいませんでしょうか?
……一日だけでも構いません。
春歌にお世話をさせてくださいまし。
それこそが春歌にとって無上の喜びであると、どうかご了察くださいませ。
それでは……。
明日の夕方、河原でお待ちしておりますわね♥
かしこ
≪選択肢≫
・もちろん行くよ。春歌の部屋楽しみだな
・明日か……どうしようかな……
・ちょっと心配しすぎじゃないかな?
(河原)
≪Scene 1:河原≫
兄君さま
「えーと……。待ち合わせはここでいいんだよな……。
「あ、いつもの桜吹雪……。来た来た。
春歌
「兄君さま! お会いしとうございましたわ♥
兄君さま
「……オーバーだなぁ。昨日も会ったばかりじゃない。
春歌
「はい、そうですけど。でもワタクシ、今日のこと、とっても楽しみでしたのよ。
「兄君さまがおウチに来て下さる……。春歌とひとつ屋根の下で一夜を過ごして下さると考えただけで、胸の鼓動がほら、こんなに……♥♥
兄君さま
「そ、そう……。
(ほんとにオーバーだなぁ……。
「と、とにかく行こうか。
春歌
「はい、参りましょう! ご案内いたしますわ♥♥♥
≪Scene 2:住宅地≫
春歌
「こちらがワタクシのおウチですの♥ 狭いところですけど、どうぞごゆるりとおくつろぎ下さいませ♥
「……殿方をお招きしたの、初めてですのよ♥ 兄君さまはワタクシの……最初のお客さまですわ♥ うふふ……♥♥♥
兄君さま
「ははは、ありがと……。
(春歌宅)
≪Scene 1:食事≫
春歌
「それでは兄君さま……。ワタクシ、今日のために腕によりをかけてお料理、用意しましたのよ。
「存分にお召し上がりくださいね♥♥
兄君さま
「あ、ありがと……。
(うーん、これは……なんというか……まるで世話女房みたいなぁ……。
春歌
「お味の方はいかがですか、兄君さま?
兄君さま
「う、うん……。おいしいよ。
春歌
「良かった……♥ 昨日から徹夜した甲斐がありましたわ♥♥♥
兄君さま
「そ、そうなんだ……。
春歌
「兄君さまに気に入っていただけなかったらどうしようかと……。そればかり心配してましたの♥
春歌
「さ、お代わりをどうぞ。……どんどん召し上がって下さいましね♥♥♥
兄君さま
「う、うん。……ありがとう。
(うーん……。なんて言うか……。春歌の愛情だけでお腹いっぱい……だよなぁ。
≪Scene 2:和室≫
兄君さま
「ふー、食った食った。満腹だよ〜。
春歌
「うふふ、兄君さまったら。たんと召し上がりましたね♥♥♥ それでは、お食事の後に……。
兄君さま
「え……?
春歌
「今日はワタクシ、兄君さまをお迎えする用意、ちゃんとしておきましたの。どうぞ、こちらへ……。
「兄君さま……♥ こんなところで、はしたないと思われるかも知れませんが……♥♥♥
「春歌は本気ですわ……。どうぞ、服をお脱ぎになって……♥
(え……ええっ!? そ、それって……!?
春歌
「こちらに横になって下さいまし。さあ……♥
兄君さま
「あっちっちっち〜!
春歌
「うふふ……。兄君さまったら……♥ ご辛抱なさいまし。お灸は健康にようございますのよ。
「これ、こうやって体のツボを熱すれば、心身健やかに病魔も寄せつけませんわ♥ ドイツにいた頃、お祖母様に教わったんですのよ。
(な……何かと思ったら……。こういうことかぁぁぁぁぁ……。
兄君さま
「あー、熱かった……。まだ背中がヒリヒリするよ。
春歌
「うふふ……。これで兄君さまのお体は万全ですわ。ワタクシが一念を込めたお灸で、当分の間は健やかにいられること請け合いですわよ♥
兄君さま
「う、うん。ありがと……。
(うーん……風邪ひかないのはいいけど、あんな熱い思いはしたくないなぁ……。
春歌
「あ、あの……。兄君さまには……ワタクシとおそろいの、とっておきの夜着も御用意いたしました♥
「それで……。兄君さま……。ワタクシ、お隣に休ませていただいても……よろしいですか?
兄君さま
「ええっ!? それってつまり……。一緒に寝ようってこと……!?
春歌
「は、はい……。きゃっ♥♥♥ 恥ずかしいですわ〜♥ 婦女子の口からそんなこと、とても言えませんわ♥
(言ってるってば……。それにしてもどうしよう……。
兄君さま
「うん、いいよ。……一緒に寝ようか。
春歌
「本当ですか!? ……嬉しゅうございますわ♥♥
「そ、それでは……。ワタクシ、お床の用意をしますわね……。
≪Scene 3:就寝≫
春歌
「今宵はワタクシ、安心して眠れそうですわ。……兄君さまのお優しい香りに包まれて……。なんだか夢見心地ですわ……♥♥♥
兄君さま
「そ、そう……。
(うーん……。僕の方は不眠症になりそうだ……。
兄君さま
「そ、それはちょっと……。やっぱり良くないよ。
春歌
「……そうでございますか。
「……はい、そうですよね。男女七歳にして同衾せずと申しますもの。いかな血を分けた兄妹とはいえ……。
「ワタクシが間違っておりました。……でも……。
「どうかワタクシのこと、はしたない子などと思わないで下さいましね。
兄君さま
「うん……。もちろんだよ。
春歌
「良かった……。
「それでは兄君さま……。あの、お風呂が沸いておりますが、お入りいただけますか?
兄君さま
「うん、ありがとう。いただくよ。
春歌
「はい! それではご用意いたしますわ♥
≪Scene 3:お風呂場≫
兄君さま
「ふぅ〜。いい湯だ……。
春歌
「兄君さま、お湯加減はいかがですか?
兄君さま
「うん、いい湯だよ。
春歌
「それはようございました。……それではワタクシ、お背中、お流しいたしますわ♥
兄君さま
「わっ! って春歌!?
春歌
「どうぞ、お上がりになって。心をこめて、丹念にお流ししますわ♥♥ それはもう、隅から隅まで♥♥♥
兄君さま
「あ、あのねぇ……。
≪Scene 4:和室≫
兄君さま
「ふぅ〜。すっかりのぼせたぁ……。
春歌
「あら、兄君さま。なんだかお顔が赤いみたいですわ。
兄君さま
「い、いや、これは……。何でもないよ。ちょっとお湯に浸かりすぎて……。
春歌
「そうですか。それならよろしいのですが。……それでは兄君さま。お休みなさいませ♥
兄君さま
「やれやれ。嬉しいけど、疲れるよなぁ。……今日はもう寝よう。
(春歌宅)
≪Scene 1:朝食の支度≫
兄君さま
「う、ううん……。おや、この音は……?
(ん、それに何だかいい匂いがするぞ……?
春歌
「あ、兄君さま。お目覚めですか?
春歌
「もうすぐお食事の用意、出来ますからね。……うーん、いいお味ですわ♥♥♥
(朝から春歌の手料理……。なんだか幸せだなぁ……。
≪Scene 2:和室≫
兄君さま
「うーん、食った食った……。朝からつい食べすぎちゃったよ。
(しかし、味噌汁の具にソーセージなんて普通入れないよなぁ……。……やっぱりドイツ育ちだから、かな?
春歌
「楽しい時間って、あっという間に過ぎ去るものでございますね……。
「あの……兄君さま……。そろそろお時間ではありませんの?
兄君さま
「あ……? いけね、本当だ!
春歌
「兄君さま……。昨日は本当にありがとうございました。春歌はゆうべのこと、一生の想い出にいたしますわ♥
「それでは兄君さま♥♥ 行ってらっしゃいませ♥♥♥
(若草学院)
兄君さま
「ん、この音色……それに桜吹雪……。ということは……。
女の子
「きゃぁぁぁぁぁぁっ! お、お化けぇぇぇぇぇぇっ!
兄君さま
「え!? お化けだって……? ま、まさか千影が……!?
春歌
「兄君さま♥ ご機嫌よう♥
兄君さま
「……あれ、春歌なの?
春歌
「はい。……どうかいたしまして?
兄君さま
「えーっと……。いまそこで、誰か悲鳴あげて逃げて行かなかった?
春歌
「はい……♥ あのう、そのう……。ワタクシ、実は今日、お能の稽古の帰りなんですの……。
「それで……ワタクシ……。お面、外し忘れてましたの……。一刻も早く、兄君さまにお会いしたくって……♥
兄君さま
「そ、そうなんだ……。……ははははは。
春歌
「まぁ、兄君さまったら……♥ うふふふ……♥
(春歌って意外にそそっかしいんだなぁ。……それにしても……。いったいどんなお面をかぶってたんだろう……?
春歌
「……そうですわ♥ ワタクシの能、兄君さまもぜひ一度、ご覧になってくださいませ♥
「ワタクシ、さっきのお面をかぶって、とっても上手に演じられますのよ♥
兄君さま
「そ、そうなんだ……。
春歌
「……あ、いけない。もうこんな時間ですわ。次のお稽古に行かなくては。
「それでは兄君さま。春歌はこれで失礼いたしますわ。この次はゆっくりお世話いたしますわね♥
兄君さま
「……やれやれ。でも春歌の能って、いったいどんなことやるんだろう…。見たいような見たくないような……。
(お菓子店)
(さて、これからどこに行こう……。
兄君さま
「この桜吹雪は……。
春歌
「兄君さま。ご機嫌うるわしゅう存じますわ……。
兄君さま
「……どうしたの? なんだか元気ないみたいだけど。
春歌
「はい……。その……ワタクシ……。
「本日の稽古で失敗をしてしまいまして……。
「お花なのですけど、作品のことで他のお弟子さんといさかいを起こしてしまって……。それで、ついつい手が出てしまいまして……。
「お花の先生にひどく怒られてしまいました。心の修行が足りないせいだと……。
「そんな乱暴すぎるようでは、とても立派なヤマトナデシコになれませんよって……。
「兄君さま……。春歌は乱暴すぎますか……?
「乱暴すぎる女の子は、お嫌いですか?
兄君さま
「うん、まぁね……。
春歌
「……やっぱり……。私、兄君さまにご迷惑をおかけしているのですね……。
「かくなる上はワタクシ、この場で自害して……。
兄君さま
「わー、そこまでしなくっても……。ウソウソ、ウソだから! 迷惑なんかしてないって!
春歌
「……本当ですか?
兄君さま
「う、うん。もちろんだよ。
春歌
「……ぽっ♥ 兄君さまにそう言っていただけると、とってもうれしいですわ♥♥
「ワタクシ、なんだか元気が出てまいりました! これからナギナタの道場に行ってまいります!
「……これからも全力をあげて兄君さまをお護りいたしますわ!
(……やれやれ。疲れるなぁ。なんだか失敗したよーな気がする……。
兄君さま
「……そんなことないよ。春歌がいてくれるおかげで、僕はすごく助かってるんだ。
春歌
「……本当でございますか?
兄君さま
「……う、うん。もちろんだよ。
春歌
「……ぽっ♥ 兄君さまにそう言っていただけると、とってもうれしいですわ♥♥
「ワタクシ、なんだか元気が出てまいりました! これからナギナタの道場に行ってまいります!
「……これからも全力をあげて兄君さまをお護りいたしますわ!
(……やれやれ。疲れるなぁ。なんだか失敗したよーな気がする……。
(河原)
≪Scene 1:大広間≫
春歌
「兄君さま、お待ち申し上げておりました♥
兄君さま
「やあ春歌。お出迎えありがとね。
「……春歌、今日はひな祭りだけど、いつもと同じ服、だね……?
春歌
「はい、桃のお節句にちなんで、桃色のお振り袖を着ようかとも思ったのですが。
「すぐに脱げませんゆえ、普段通りの格好です。お気に召しませんか……?
兄君さま
「いやいやいや、いいんだよ。そのままでいいんだ。
(しかし、すぐに脱げないからって…………どういうことだろ?
春歌
「兄君さま、それでは亞里亞ちゃんのお部屋にご案内しますね♥
兄君さま
「亞里亞の部屋? ちょっと待って、いくら広い部屋と言っても、亞里亞の部屋でパーティーは狭くないかい?
春歌
「いいえ、違いますわ。兄君さま専用の控え室です♥
兄君さま
「僕の、控え室? 春歌たちとは別なの?
春歌
「ご、ご一緒がよろしいのですか? それは、あの、ええと…………やはりいけませんわ、ぽっ……♥
兄君さま
「……なに、照れてるんだい?
春歌
「と、とにかく、ワタクシたちとは別のお部屋でないとダメです!
「亞里亞ちゃんには許しをいただいておりますので、どうぞお入り下さいませ……♥
兄君さま
「どうしたの、春歌?
春歌
「ぽぽぽっ、失礼します……♥
兄君さま
「………………。
(よくわかんないけど、亞里亞の部屋に行くとするか……。
≪Scene 2:室内プール≫
鈴凛
「春歌ちゃん、ホントにつけないの?
春歌
「え、ええ。せっかくですけど、遠慮しておきます。
鈴凛
「予備にもうひとり分持ってきたのにな。鈴凛特製のダイビング装備システム、『ブクブク伝説3号くん』。
春歌
「なんだか溺れそうな名前ですけど……。
鈴凛
「なんか言った?
春歌
「いいえ、なにも♥
兄君さま
「やあ、鈴凛はここにいたのか。……えと、こちらの方は……誰?
鈴凛
「なに言っちゃってんの、アニキ。春歌ちゃんに決まってるでしょ。
兄君さま
「いっ!?
春歌
「兄君さま、こんなはしたないカッコウで本当に申し訳ございません……ぽっ♥
兄君さま
「い、いや、そんなことは……。
(わぁ、春歌だったのかぁ。さすがに水着姿は予想外だったなぁ……。
(たまには、こういうのもいいな。うん、いい! 来てよかった……。
鈴凛
「ちょっと、アニキ! なに春歌ちゃんの方ばっかり見てるのよ。アタシのコレにも注目して。
兄君さま
「ああ、ごめん鈴凛。ええと……ただのダイビング装備一式だろ?
鈴凛
「ちっちっち。それは甘いなぁ♥ この『ブクブク伝説3号くん』を、ただの装備と一緒にしてもらっちゃぁ困るの。
「水中連続行動可能時間、約3週間! 限界耐水圧、平方センチあたり5トン! 補助エンジン出力850馬力!
「……とまぁ、そんじょそこらの深海探査艇よりもハルカに高性能なワケ♥ ムダっていうウワサもあるけど。
春歌
「呼びました?
鈴凛
「ううん、ぜんぜん。
兄君さま
「ふぅん、よくわかんないけどスゴイんだろうな。ハルカに高性能って言うんだから……。
春歌
「呼びました?
兄君さま
「いや、べつに。
鈴凛
「どう、アニキ。予備があるから、着てみない?
兄君さま
「え、いいの?
鈴凛
「もっちろん♥ それじゃ、こっちに来て♥
春歌
「……兄君さま、大丈夫ですか……?
兄君さま
「うん、着心地もいいし、なかなかよくできてるよ。だけど……。
「その鈴凛が着てるヤツと、全然カタチが違うのはどうして? これ、まるでヨロイだよ。
鈴凛
「アハハ、小さな部品を買う予算が、1着分しかなくって♥
「でも、性能は変わらないから安心して♥ ハルカな海底の旅だってできちゃんだからさっ♥
春歌
「呼びました?
鈴凛
「ううん、ちっとも。
春歌
「空耳がひどいですわね……?
鈴凛
「さあアニキ! いざ行かん、海底散歩へ!
「……プールだけど♥
兄君さま
「よーし、そんじゃ潜るよ〜!
(水音)
鈴凛
「………………。
春歌
「………………。
鈴凛
「………………。
春歌
「……ねぇ、鈴凛ちゃん。
鈴凛
「ん?
春歌
「兄君さま、浮かんできませんわね?
鈴凛
「プールの底を歩いてるのよ。
春歌
「……いえ、潜った場所でそのままジッとされていますが……?
鈴凛
「アニキも横着だなぁ♥ 歩けばいいのに。
春歌
「………………。
鈴凛
「………………。
春歌
「……あの、こういうことを申し上げてはなんなのですが。
鈴凛
「……なに?
春歌
「………………。あの、兄君さまはもしかしたら……。
「……溺れて、ませんか?
鈴凛
「あっはぁ、ゴメンねアニキ! まさか水漏れするとは思わなくってさぁ!
兄君さま
「ゴ、ゴメンじゃないよ鈴凛……。
「水に入った途端、スーツのありとあらゆるところから浸水してきて……。
「……さすがにダメかと思った。
鈴凛
「うーん、設計にミスはなかったと思うんだけどなぁ……。
「よーし、それじゃ早速改良にかからなきゃ。そのためにもアニキ……。……おこづかいちょーだい♥
兄君さま
「あのなぁ……。
鈴凛
「お願いお願い! ハルカに防水性能を高めた、『ブクブク伝説EX1号くん』作るから!
春歌
「呼びました?
鈴凛
「ううん、まったく。
兄君さま。
春光天地に満つるの候となりました。
兄君さまにあらせられましては、ご健勝のことと存じます。
今日のひな祭り、とても楽しゅうございました。
普段お会いしない皆さま方とご一緒に兄君さまを囲んでいると、
ふつふつと温かい気持ちに包まれて参ります。
でも……出来ることならワタクシ……。
兄君さまと二人だけでお会いしとうございます。
こんな春歌をはしたない娘とお思いでしょうか。
……でも、ワタクシをこんな風にしてしまったのは、兄君さまですのよ……。罪な御方ですわ♥
それではワタクシ、明日の午後、いつもの喫茶店で待っております。
どうかよろしくお願いいたしますわ。
かしこ
≪選択肢≫
・もちろん、絶対に行くからね
・ヒマだったら行くよ
・あんまり気が進まないなぁ……
(喫茶店)
兄君さま
「ええっと……。あれ、まだ春歌は来てないのか。そろそろ時間のハズだけど……。
「……おかしいなぁ? いつも春歌、時間には正確なのに……。ひょっとして何かあったんだろうか……?
「あ、やっと来たみたいだな。
春歌
「兄君さま〜♥ 申し訳ありませんわ〜!
「兄君さまをこんなお待たせするなんて……。ワタクシ、なんて事をしてしまったのでしょう! この罪、万死に値しますわ!
「ワタクシ、この命を花と散らして謝罪いたします。どうか兄君さま、お許し下さいませ……。
兄君さま
「あ、いやいや……。そんなことまでしなくてもいいよ。気にしてないから。
春歌
「兄君さま……。なんてお優しいお言葉……。ああ……春歌は嬉しゅうございます……。
(うーん、たかが数分遅刻したぐらいで……。ほんとにオーバーな子だなぁ。……悪い気はしないけど。
春歌
「……これというのも、あの悪代官がいけないんですわ。
兄君さま
「あ、悪代官?
春歌
「はい、回船問屋と密約し、年貢をつり上げ悪行三昧。たまたま悪事を聞いてしまった腰元を監禁し、狼藉に及んでしまったのですわ!
「あの可憐な腰元の娘さんが悪代官の屋敷で追いつめられ、帯を掴まれて、こうクルクルと回されて……。
「ああっ、口惜しい! ワタクシが居合わせればそんな所業、決して許しはしませぬものを!
兄君さま
「……それって、ひょっとしてテレビの時代劇?
春歌
「あ、はい……。そうなんですわ。……ワタクシ、ついつい見入ってしまいまして。
「でも……本当はワタクシ、あの腰元の方がちょっぴりうらやましかったんですの。
兄君さま
「ええっ!?
春歌
「悪代官に追いつめられ、乱暴狼藉を受けようとした、まさにその時、正義のお侍さまが颯爽と現れて、助けて下さるのですわよ。
「ワタクシが窮地に追いやられた時も、もしかしたら兄君さまが……♥
「ああ……兄君さま……ワタクシ、その日をお待ちしておりますわ♥
兄君さま
「あははは……。
(今の時代にそんな状況あるわけないって……。
兄君さま。
日増しに春めいてまいりましたね。
本日はワタクシごときのために、お時間をいただきまして
本当にありがとうございました。
これで春歌は思い残すことはございません。
兄君さまの盾となり、いつでも命を捨てる覚悟でございます。
ですから兄君さま……。
またお会いして下さいましね♥
かしこ
≪選択肢≫
・ありがとう、心強いよ
・そこまでしてくれなくても……
・あまりテレビばかり見てちゃダメだよ