野口建築事務所
Noguchi Architect & Associates



 弘兼憲史さんの「課長 島耕作」は、単行本にして全30巻以上にわたる、人気長編サラリーマン漫画だ。その第7巻、63章「カーニバルの朝」は、徳島を舞台にしたストーリーである。
 阿波踊りの浴衣にあしらう会社のマークを、本社と販売店とが争うというのが主な筋だ。それにいつものように、男女の愛がからんで話しが進んでいく。
 季節は阿波踊りの練習が始まるころで、徳島の町の風景がいくつか出てくる。徳島空港やJR徳島駅前からみた眉山とワシントンヤシ、そして本番の阿波踊りとその前の練習風景などが描描かれている。
 1989年、17年前の掲載なので、新町川ボードウォークや阿波踊り会館はまだ出来ていない。もし現在の徳島を舞台にするのなら、整備され美しくなった新町川の水際公園、ボードウォークや県庁前のケンチョピア(ヨットハーバー)などが使われるのではと思う。
 新町川を守る会の中村英雄さんの運転する周遊船から、島耕作が阿波踊りの練習風景を見る、うんこれはいける、などと勝手にイメージを膨らませてみたりする。
 さて、徳島市の中心市街地の再生に向けての話題がよく新聞に出ている。新町から映画館がすべてなくなり、ダイエーが閉店したりと寂しいニュースが続くが、その危機感からのことでもあるのだろう。

  現に新町地区(商店街)の主要三地点の通行量はピーク時の1974年の10分の1 以下に落ち込んで いるという。

課長 島耕作 7巻
原作 弘兼 憲史
 人が集まり、にぎわうのはどうしてかと考えてみた。

 △ そこへ行くと他にはないものがある
   (風景や食べ物、情報など)
 △ 気持ちよく、楽しい時間が過ごせる
   (滞在できる)
 △ 得をする
   (安くて良いものが得られる)
 △ 思わぬ出会いがある
   (思い出になる)

  などであろうか。
 丸新百貨店の食堂でライスカレーを食べるのが私の子供の時の楽しみであった。そのころに比べて、街は確かにきれいに魅力的になっていると思うのだが。
 中心市街地は、徳島の顔であり、市民の共通の財産ではないだろうか。まず、私たち市民がそれに気付くこと、その魅力を十分に楽しむことから始めたい。

 建築家 野口政司
 2006年5月17日(水曜日) 徳島新聞夕刊 「ぞめき」より
まちの魅力
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