俺は突如目を覚ました。時間は多分、3:00頃だと思う。 時計は見なかったが、辺りの暗さや静けさから、きっとそれ位だろうと思った。 俺は目を覚ました理由を考えた。別にトイレに行きたかった訳ではなさそうだ。 では何故? と、体の各所の感覚をスキャンしていると、どうやら鼻がむず痒い 事に気付いた。 未明の部屋に一人きり、誰の目もありはしない。 俺は何の躊躇も無く、左手の人差し指を左の鼻の穴に挿入した。 痒いところまで指を這わせ、かりっと掻いた。 ああ、堪らない。至福の一時。俺はしばらく鼻の穴をまさぐり、 思うままにこの快楽を享受していた。 すると指先に、引っ掛かる様な手応えがあった。 どうやら寝ている間に、鼻糞が形成されていたらしい。 成る程、鼻糞に鼻毛が絡み、それが痒かったのか、俺はとっさにそう判断し、 その痒さの元凶と思しき鼻糞を取りに掛かった。 鼻の穴の中で格闘する事しばし、俺は上手い事指先に鼻糞を引っ掛けた。 そして人差し指と親指でやさしくそいつを摘み、そして引っ張った。 こうして俺は、見事鼻糞を取り出す事に成功した。 だが、おかしい。 既に鼻糞は鼻の穴の外に出ているというのに、まだ鼻糞と鼻の穴が繋がっている、 そんな感覚がある。どうやら、鼻糞に絡め取られた鼻毛が、鼻糞と鼻の穴の 橋渡しになっているらしい。 その時俺には、崖から落ちそうになっている人の手を握り、必死に引き上げようと している様なそんな絵図が、鼻糞と鼻毛にオーバーラップして見えた。 だがともかく俺は、鼻毛の絡まったままの鼻糞を、引き離しに掛かった。 鼻の穴から 5mmは引き離したろうか、だがまだ鼻毛は繋がっている。 鼻の穴から 10mmは引き離したろうか、だがまだ鼻毛は繋がっている。 そして鼻の穴から 15mmは引き離したところで鼻毛は力尽き、鼻毛を その手 (毛) から離してした。 鼻毛、もういい。手を離してくれ。その時、よくは分からないがこんな三文芝居が頭を過ぎった。 しかしどうした事だ、こんな 15mmもの鼻毛が生えていたとは。 確かに最近疲れているとはいえ、ここまで身だしなみにルーズになっていたとは。 朝目が覚めたら切るとしよう、そう思いつつもう一度寝る事にした。 だが、寝付けない。 あの鼻毛が、妙にそよそよとそよぎ、むず痒くて眠れない。 鼻糞の死を嘆いて、鼻毛が俺の鼻の中で泣いているから。 ※My Guitar Lies Bleeding in My Arms/BON JOVI |
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