2004年11月18日、午後。 私は諸般の事情と諸般の情事で、トイレに入っていた。 入っていた、と言うからには、そう、大の方だ。 一頻(ひとしき)り思いの丈を白いキャンバスにぶつけ、 息をついた。 そしてロールの音をタイルで反響させ、 それら全てを水で流した。 トイレから出た後、ふと時間が気になったので、 携帯を取り出すと、着信を示すランプが点滅している。 そこでフリップをあけてみるとどうだろう、 なんと、伝言メッセージを録音しているではないか。 録音時間は、31秒。 どう考えても、キャンバスに抽象画を描いていた時から 録音しているのは動かし難い事実の様だ。 そこで気になるのは、伝言メッセージの録音時の、携帯の処理だ。 少なくとも、録音しているメッセージを着信側は聞くことができる。 しかし、送信側はマイクが拾う音を聞くことが出来るのだろうか? もし、もしもだ、送信側がマイクの拾う音を聞くことが出来るとしたら… 私の様を足す様、 ロールを回す音、 水を流す音 用を足し終えた時の鼻歌、 それら全てを、聞かれた事になる。 いや、例えマイクがその音を拾っていなくても、 聞かれた事に、なるんじゃないか? 聞かれたと同じなのではないか? ああ、やはり携帯など買うべきではなかったんだ。 買うべきでは。 そうすれば、こんな喪失感を味あわずに済んだものを。 |
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