最近、気取ることに対してひどく気恥ずかしく思っている。 といってもフランス貴族の私が気取らないというのは、 今後の社交界に暗い影を落とすのではないかとの危惧はあるのだが。 特に強く思うのは、"パスタ" だ。 なんだかこ洒落ていて、今ひとつ馴染めない。 そして実はいまいち意味が良く分っていない。 そこで、パスタを調べてみる事にした。 小麦粉をこねて作る、イタリアの麺類の総称。 さらに理解から遠のいた気分だ。 これはスパゲッティではないのか? スパゲッティと呼んではイカンのか? 我が家では代々この料理を "素裸月亭" と呼び、 月に一度、家族でトマトを投げつけあいながら 裸で食する決まりになっているというのに (無論笑顔でだ!)。 それがパスタだったなんて。 空いた口が塞がらない。 "素裸月亭" で輝いていた、父の笑顔が、曇っていくような気がした。 スパゲッティも調べてみた。こうだ。 イタリアの、細くて長く、管状でない麺。 spaghetti は細いひもの意。 ダメだ。 俺には違いが分らない。 麺ってみんな細い紐みたいなもんだろう? パスタとスパゲッティの間に、一体どんな差異があるというのか。 もう、いい。 俺はスパゲッティでいく。 そうと決めた。 どんなこ洒落た料理屋に行こうとも、俺はこう言う。 "おやじ、スパゲッティだ。スパゲッティを呉れ。" ("ゲッ" の発音及びアクセントは特に注意する事) そうだ。これだ。 これで、いいんだ。 |
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