"ごめん、昨日は帰りが遅くて" なんて言い訳を考えつつ、出社途中にデパートに寄ってクッキーを買う。 ばつの悪そうな顔で "コレ下さい" と言うと、店員の女の子は "当日に買うなんてダメな人ね" という顔で対応してくれた。 オフィスへ向かう。バッグの中に愛を詰めて。 席に着くと、先輩はもう仕事に就いていた。 ディスプレイを見る真剣な眼差し。 今手渡すのは止めておこう。 渡すチャンスなら、後でいくらでもあるさ。 昼休み、皆が食事に出ている。 チャンス到来。後は勇気を出して… "さあ、これでも喰らえ! 喰らいやがれ!!" とは言わなかったが、それ以上の表情だったと思う。 フリーズする先輩にしたり顔の私。 満足とは、こういう事をいうのだろうか。 先輩: 嫁さんに渡しておけばいいんですか? 広樹: できればご夫婦お揃いの時に。 先輩: 何か仕込んであるんですか? 広樹: …。 こうして、つつがなく初めての男と男のホワイトデーは完了した。 仕込みが功を奏していればいいが。 太平洋が青く美しいといいが。 ※Sさん夫妻、一度ならず二度までもネタにしちゃってすいません。 |
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