宗政報告No.7(2003年12月19日)


宗議会同和委員会での教育基本法の取り組み
 12月16・17日と、宗議会同和委員会と宗政調査会同朋社会推進委員会との合同研修として、大阪・住吉区の浅香地区に現地学習に参りました。解放運動のなかで、街づくりを展開している山本義彦さんという大変魅力的な方に出遇えて、有意義な研修でした。


 ところで、教育基本法「改正」について、同和委員会として、教育の現場で、選別と差別が強化される危険性のある「改正」を看過できるものではなく、下記の要望書(案)を全日仏に提出しようという提案を、12月2日に同和委員全員にいたしました。
 そのことについて、16日に協議の時間をもちましたが、同和委員会として提出することには、残念ですが、賛同を得らなかったということです。
 その理由として挙げられたのが、同和委員会として今まで一度もこのことについて話し合われていないということ(だから、いま協議しているのですが)、あるいは、このことが同和委員会の任務と思えないこと等であります。いづれにしろ、出したくないという委員の方が多かったということです。
 それではということではないのですが、基本法「改正」についての議員自身の認識を深める事をめざして、宗議会議員全体を対象として研修会を開催できるように、議長にお骨折りを頂くということで合意致しました。時期は、次回宗調の中日、2月4日あたりになりそうです。
 

      教育基本法「改正」に関わる全日本仏教会に対する要望(案)

 貴会が「宗教教育推進特別委員会」を設置され、教育基本法「改正」に向けての運動を展開されていることに大なる危惧の念を抱いています。
 確かに子供たちをめぐる状況は多くの問題をはらんでいると言えるでしょう。しかし、その原因は、宗教教育が軽視されてきたことによるものではなく、日本の社会自身が抱えているひずみや問題が、最も弱い子供たちのところに吹き出していることによると見るべきでありましょう。それに対する速効の処方箋などあるはずもなく、子供たち一人ひとりと真向かいになり、その声に耳を傾け続け、我々大人が変わる以外にないのであり、基本法「改正」など処方箋になるはずがありません。
 大谷派の「同和」問題に学ぶ議員として、基本法「改正」は、問題解決の処方箋どころか、ますます選別と差別を生み出すおそれを感じざるをえません。
 その一端を指摘すれば、中教審答申の「教育振興基本計画」案にある「国家戦略として人材教育立国を目指す」という表現を上げることが出来ます。これはまた、この度の教育基本法「改正」を推進しようとする人たちのねらいが端的に言い当てられている表現でもあるといえます。これは、子供たちを国の人材としてしか見ない人間観によって貫かれた教育をめざすものであります。本来、教育はどこまでも、一人ひとりの子供のためになされるべきであり、決して国家のために施されるものではないはずであります。
 そして、ここで言う「人材教育立国」を目指す教育とは、言うまでもなくエリート育成教育ということになるのでしょう。そこでは、いよいよ選別と競争を強め、その結果必然的に落ちこぼれを生み出し、ひいては現況よりひどい不登校・いじめ・学級崩壊の状況を生み出すことでしょう。
 貴会の加盟教団は又、「同宗連」の構成教団でもあります。全日本仏教会におかれましては、すべての命の尊厳性に向かい合わんとする「同和」問題に学ぶ視点に立ち、人間の尊厳が顧みられない教育が施される危険性のある教育基本法「改正」に反対され、「宗教教育推進特別委員会」をすみやかに解散し、教育基本法「改正」に向けての運動を即時に断念されるよう強く要望するものであります。
                                                以  上