さる5月29日から6月11日までを会期として、第42回宗議会が開催されました。今宗会は、宗祖の「ご遠忌」をどのようにお迎えするのかを決める重要な議会でありました。
ところで、どのような「ご遠忌」をお迎えするのかという事に先立って、確かめておきたいことが3点ほどありました。
それは、同朋会運動50年、そしてその後をいかに見据えて「ご遠忌」をお迎えしようとするのか。また、さきの蓮師500回ご遠忌の総括をどのようにするのか。そして、三浦内局から熊谷内局に代わって「ご遠忌」をお迎えする上で、何がどう変わったのかの3点です。
同朋会運動50年、その後の運動については、同朋会運動推進委員会及び、中央同朋会議に検討を依頼する。蓮師500回ご遠忌総括は、すでに課題ごとに3回座談会を持った。それをもって総括とする。内局が代わったが、「ご遠忌」をお迎えるにあたっては何ら異なるところはない、というのが当局答弁です。
≪ 蓮師500回ご遠忌総括 ≫
その一々について述べてみたいのですが紙面の関係上、ここでは、蓮師500回ご遠忌総括についてだけふれてみます。同朋会運動が始まると、「親鸞に帰れ」を標榜し、それまで教化の中心にすえられていた蓮如をあたかも隠すようにして運動を展開し、同朋会運動の中では、蓮如が中心に位置づけられたことは一度もありませんでした。そういう中で、ご遠忌をお勤めしました。そのご遠忌が蓮如を讃仰することになったのでしょうか。讃仰には、深くその人を知り、そこから教えを受けるという意味がありますが、さきのご遠忌は蓮如を讃仰することとなり得たのでしょうか。そのことこそが総括される中心であるはずです。試みに、いくつかの点について問いを立ててみましょう。 ご遠忌を通して、蓮如に教えられ、導かれて歩み出すという運動展開がなされたでしょうか。真宗再興の人と言うが、その課題を共有して、いま、再興の方向を見いだし得たといえるでしょうか。あるいは、テーマ「バラバラでいっしょーちがいを認める世界の発見」は、宗門があきらかにしようとする世界を社会に充分発信・伝達し得たでしょうか。また、そのテーマが、同時に宗門の組織・機構を貫くものとして位置づけられていたでしょうか。等々…… 残念ながら、そのどれを取り上げても、かけ声だけ、あるいは、課題にすらなっていなかったのではないでしょうか。ご遠忌を通して、何かが生み出されたり、どこかが大きく変革されるということがなかったのは、蓮師のご遠忌を通して、蓮如から深く教えられるということが私の上に成り立たなかったためであり、蓮如に聞こうとしなかったからに他ならないのでしょう。つまり、蓮師のご遠忌は蓮如を充分讃仰しえず、記念行事として終えてしまったということであります。この厳しい自己反省の上に立って、宗祖の「ご遠忌」をお迎えすべきなのでしょう。そのことをおざなりにするとき、宗祖の「ご遠忌」とは何であったかと後で問う時、両堂の修復だけということになりかねないという思いを強く持つからです。
≪ 「ご遠忌」総予算292億円 うち教区御依頼198億円 ≫
「ご遠忌」総計画の予算総額は292億円です。支出の主なものの内訳は、「ご遠忌」法要や讃仰期間中の法要などの法要費12億8千万円、板東本の修復及び復刻、並びに聖教編纂等の事業費9億1千万円、御影堂修復110億円、阿弥陀堂及び御影堂門修復80億円、同朋会館新築資金18億円、大谷祖廟整備費3億6千万円、広告代理店を使っての広報費15億円、記念品費10億3千万円、そして教化交付金(教化とは付いていますが、交付金となんらかわりません)5億9千万円です。 一方、収入の部としては、教区御依頼198億円、特別賦課金39億6千万円、 平衡資金等の回付受金44億7千万円、冥加金3億2千万円、そして国庫補助金5億4千万円があげられています。 ※特別賦課金:2003年度の寺院・僧侶賦課金を基準にして、その50%が特別賦課金として、2003〜2009年度の7ヶ年。2010・2011年度には、その100%が御香儀として見込まれている。
≪ 御依頼は新割当基準で ≫
総長はその演説で、198億円の教区御依頼を新割当基準に基づいて行いたい旨を表明されました。 全国30教区に御依頼されるその基準が、公表されず、根拠が示されなかったことから不信感や不公平感を生んでいた中、一昨年、「御依頼に関する委員会」が立ち上げられ検討がなされました。その中間報告が、昨年5月に出され、仙台では9月18日、委員長の木全師がみえて説明会が持たれました。随分教区の皆さんの関心が高く、多くの出席を得、その場で不公平な基準は断固受け入れられないと言う厳しい意見が多く出されました。さらに、公平を確保するための基準作りに不公平極まりない要素を導入していることに強い疑念を持つ旨、教区として木全委員長宛に「提言書」として提出。しかし、昨年末の最終報告では、なんら現場の声を聞き入れることなく、中間報告と同様の報告がなされました。 そして、4月22日には熊谷総長が来仙して新基準に対する理解を求められましたが、かえって厳しい状況を認識して帰られることになりました。さらに、5月22日、新基準は受け入れられないという強い意思を「声明文」として、正副議長が総長に直接手交されました。 新基準によると、仙台教区は36%弱の増額となります。この新基準によって経常費はもちろん、ご遠忌御依頼もなされます。なぜ、こんな増額になったかということです。それは、新基準算出の要素となったのが、人口と教区均等割です。人口については、仙台教区は人口の多い都市をいくつか抱えているということ。そして、均等割は全くの不公平要素です。つまり、2002年度でいえば、全御依頼約54億円のうちの一割にあたる5億4千万を30教区で均等に割り、1800万円を等しく負担するというものです。700ヶ寺ある教区も、仙台のように100ヶ寺そこそこの教区も均等に1800万円を負担するということです。公平を期すために設けようとした新基準に、不公平要素を導入したことを、教区会・教区門徒会は、「要望書」「声明文」で強く指摘してきました。
≪ 総括質問で均等割の妥当性をただす
≫
今議会では、「ご遠忌」について審議をする「特別委員会」に属しました。その最終日に総括質問の時間が設定されているのですが、そこで均等割を導入する事の妥当性について、内局を糾問いたしました。しかし、明確な答弁がないまま、限られた時間内に「ご遠忌」の名称についても確かめることがありましたので(後ほどふれます)、打ち切らざるを得ませんでした。 そこで、問いただそうとしたのは、均等割を導入する理由として、「教区を設置し維持していく責任として」ということがあげられていることについてであります。つまり、この文言を見る限り、教区人が教区を設置し維持しているのであるから、教区に大小あろうと等しく負担しなさいということのようです。しかし、宗憲および、条例をみるかぎり、教区を設置しているのは内局、維持運営しているのは教務所長であると読めます。教務所長といっても内局が任命するのですから内局の権能になります。そうしますと、教区を設置、維持しているのは内局と言うことになるわけです。その時その責任も当然内局に帰属すべきで、責任だけ教区にかかるのは論理的でないという質問をいたしました。 それに対しての内局の答弁は、内局といっても宗門人すべての代表にすぎず、したがって責任はすべての宗門人にあるということになり、教区の場合は教区人にあるという宗憲等を全く無視した感想を聞かされることになりました。改めてただしても、同様の答弁の域を出ず、納得のいく説明が得られなかったという確認をして打ち切らざるを得なかったのは残念です。 なお、新基準に対して教区としていかに対応するかについては、この26日の教区総会及び、7月の教区会・教区門徒会で決められることになるでしょう。
≪ 「ご遠忌」の名称について ≫
「ご遠忌基本計画策定委員会」は、その最終報告で法要名称について「宗祖親鸞聖人750回ご遠忌法要」とすることを決め、同時に「忌」の持っている問題性について付言しています。 「忌」は死者をケガレと見ることと深く関わる語です。一方、真宗の法事の原点は、親鸞聖人の33回忌にあたる年に覚如が「報恩講私記」を著し、法事は報恩講として勤めることを明らかにしたところにあるといえます。つまり、亡き人を諸仏として見出すことを願いとするのが真宗の法事・仏事であるといえ、「忌」とは相容れるものでないはずです。しかし、いつの間にか、そのちがいが不鮮明になり、「忌」と変わらなくなっている状況が、いま、「真宗仏事の回復」という提起を生み出していると言えます。たとえば、「忌中」「年忌」「祥月命日」等の表現の持つ問題性の指摘です。 ところで、「ご遠忌」という言葉は、それを他の言葉で言い換えることが困難であるほど馴染んでいますが、当派で初めて使われたのは、なんと1961年、宗祖700回ご遠忌のときであります。たとえば、350回法要などは、「ご開山さま350年忌」としておりました。「ご遠忌」という表現が、わずか40年ほどで、これほど定着しているというところに、「法要の名称」の持っている影響力の大きさをうかがい知ることが出来ないでしょうか。 いま、「法要の名称」にそれほどの大きな意義を見いだせるとすれば、「忌」に問題があるという認識を持ちながら、この時点でそれを正式名称として決定することにはどうしても賛成できません。たとえ御正当に法要を勤めたとしても、あと8年あります。テーマについては2005年までに設定したいということのようですので、名称もそのころまでに決定すればいいはずです。 もっとも、総計画を示し、募財を始めるのに名称が未定と言えない事情は理解できますが、「ご遠忌」を一応使用するとして、再度検討を加えるべきです。 先程も少しふれましたが、「蓮師500回ご遠忌」が充分総括されていたら、「ご遠忌」問題はある一定の方向をその時点で見出し得たでしょう。総括がないところで宗祖の法要をお迎えしようとしている弊でもあります。 たとえば、もし、「宗祖親鸞聖人750回大法会」というような名称を掲げることができたとすれば、あと10年もすれば「大法会」と言う表現が定着しているでしょうし、また3回忌、7回忌と言っていた表現が、3年法会、7年法会という名称に変えられていく可能性すらそこにみることができるといえます。 そのことを、総括質問で尋ねましたが、その答弁は「参考にさせていただく」というすでに決定事項であるというものでした。
≪ 「ご遠忌」法要は何時勤め、いつからいつまでが「ご遠忌」期間なのか?≫
「ご遠忌」法要は、御正当の2011年に勤め、御影堂の修復工事の始まる来年度から「ご遠忌」法要が勤まる年度の終わりまでをもって「ご遠忌」期間とするということです。つまり、2003年7月1日から2012年6月30日までをその期間とし、阿弥陀堂と御影堂門の修復は、その期間に入らないようです。 法要を2011年に勤めるということは、御影堂工事と阿弥陀堂工事を中断するということになります。一連の工事として施工する場合には、共用できる素屋根もあるでしょうし、法要のために植木等を現況復帰させることもないでしょう。一連でする場合と間に法要を勤めて中断する場合の経費の差額を、業者に委託して正式に試算していないということです。つまり、2011年に勤めることを前提にしていたということなのでしょうか。 なぜ、そんなに2011年にこだわるのかと言うことですが、お西をはじめ他派がその年に勤め、「親鸞イアー」といった盛り上がりがあるだろうと期待されるということのようです。しかし、当派としては、両堂等の修復工事が完遂してから法要を勤める方がよっぽどすっきりしていますし、経費的にも随分と削減になると考えられます。みなさんは、どう思われるでしょうか。
≪ ご真影の動座 ≫
来年度から御影堂の工事が始まりますので、今年の報恩講が済んだ翌日、11月29日に、ご真影の阿弥陀堂への動座が行われます。 阿弥陀堂を一般寺院の本堂形式とし、祖師前にあたるところにお厨子を組んでご真影を安置。御代前には蓮如上人。南余間に聖徳太子・法然上人・六高僧。北余間に歴代門首。 工事期間中は、御影堂で勤まっていた法要をすべて阿弥陀堂で勤めるということのようです。
≪ 教行信証「板東本」修復・復刻 ≫
宗祖の讃仰事業として教行信証「板東本」の修復および、カラーコロタイプ版復刻本作成を考えているようです。 「板東本」修復に対して400万円の補助金が出ます。なお、その余の国庫補助についてふれますと、御影堂は登録文化財にあたり、その場合、調査・設計・監理経費の半額が補助としてでます。そこで、御影堂修復工事の調査・設計・監理費8億5千万円の半額と耐震調査費2億2千万円の半額、合せて5億3千5百万円。それに、「板東本」の補助金を加えた5億3千9百万円が国庫補助金の総額です。 因みに、お西は重要文化財にあたり、その場合修復費の半額が出るようです。 なお、復刻本は、1000部作成し500部を頒布する予定。頒布価格は60万円を考えているそうです。
≪ 宗務改革推進委員会 ≫
「御依頼に関する委員会」から中間報告が出されたとき、全国から多くの要望書・提言書が出されました。その内容は大きく二つに集約できます。一つは、新基準は公平・公正が十分確保されてはいず、早急に門徒戸数調査をし、それに基づいて御依頼の基準を作成すべきであるというもの。いまひとつは、同時に宗門の行財政改革を推進すべきであるというもの。 この要望に応えるかたちで発足したのが、この宗務改革推進委員会であると言えます。期限を1年と限って、宗務総長が委員長をつとめて、門徒戸数調査と教区並びに組の再編成の2点に絞って、いわばその「ものさし」づくりの委員会と言えます。改革せねばならない点が多くある中、その余のことが示されず2点のみというのは、心許ない感じですが、これを改革の第一歩として取り組もうとしていることは了としたいと思います。期待をもって注視していきたいものです。
≪ 特別研究員制度 ≫
これは、大いに期待したい制度であります。宗門の果たすべき任務として人を生み出すということがあげられますが、この制度は宗門の課題を荷負う人を生み出す可能性が大きいと思われます。 教研が担当し、20代・30代の有教師を対象として、2年間、宿泊所も提供してみっちり研修・学習を積んで頂く。研修補助として、一人に月15万円を支給。宿泊所の関係で10名以内を考えているようですが、年間2000万円の予算を計上しています。公募ということになるでしょうが、意欲のある方は大いに応募してもらいたいものです。
≪ 瓦懇志 ≫
2001年度までに、瓦懇志として納められた総額は12億円で、そのうち、所属寺院が明確な懇志は9億7千3百万円、所属寺院が不明な懇志は2億2千万円、そして企業からの懇志が7百万円であります。 今後は瓦懇志という名称は使わず、お遠忌懇志としたいそうである。 瓦懇志・ご遠忌懇志を1万円以上納めて頂いた方には、瓦記名をするようであります。一枚の瓦に18名連記で、7万枚(御影堂の新しく葺き替える枚数)を考えているということです。 なお、すでに瓦懇志として納めて頂いた分については、2003年度のご遠忌御依頼の一部としてみるということのようです。
≪ 広報活動 ≫
宗門内外に「ご遠忌」の趣旨と願いを発信し、共に参加し共に創り上げていく「ご遠忌」を目指すべきでありましょうが、そのとき大変大きな役割を担うのが広報活動であります。 今回は、大手広告代理店との連携を試みるようであります。広報業務についての専門知識や手法を蓄積している広告代理店との連携は、今まで宗派として力を入れてこなかった部門を補完してあまりあるでしょう。また、今後の宗門の広報活動にも大きく影響を与えるものと期待できるでしょうし、教化伝道の新しい可能性を模索できるといえます。ただ、広報経費15億円が妥当かどうかについては問題を残しそうです。 また、何を伝えるのかということについては、十分な事前研修と確認を広告代理店との間で重ねる必要は言うまでもないことでしょうが。
≪ アニメ「蓮如物語」和解 ≫
映像メディアを利用しての教化の必要性が今後高まるであろうと見られる中、アニメ「蓮如物語」が蓮師500回ご遠忌事業として作られました。教区内では2700人ほどの方がご覧になっています。その後、収益金の分配を巡って制作会社松プロダクションと係争中であったことはご存じかと思いますが、このたび和解にいたりました。 入場料収入が6億6千4百万円(約54万枚)あり、そこから東映の宣伝経費・映画館施設利用経費等を差し引いた1億4千7百万円の収益を、松プロと当派で折半にするという契約になっていました。その支払いを松プロが渋っていたため係争となりましたが、2千3百万円を当派に支払うことで和解したわけです。 もっとも、アニメ制作費は、当派が負担したのですから、収益金と言えるかどうかということもあります。
≪ 議員提案の決議文、2件採択 ≫
@「有事関連三法の成立に抗議し、『日本国憲法』の平和主義の原則に立ち戻ることを 求める決議」 A「議会の不戦決議の内実化を願い、時代社会の様々な問題に対応できる宗務機構の 早期具体化を求める決議」
上記2決議を採択しました。@は、衆・参議院議長・小泉内閣総理大臣宛。 有事関連三法を成立させ、いままた会期を40日延長して、「イラク復興支援特措法」の成立と「テロ対策特措法」の延長を目論んでいます。いよいよ「日本国憲法」の戦争放棄の平和主義を骨抜きにし、国際紛争の解決に武力による威嚇とその行使を当然とする国に変質しようとしている事に厳しく抗議し、日本国憲法の精神に立ち戻ることを強く要請するものです。 Aは、宗務当局に対して、現代社会の様々な課題に対し敏感に反応し内外に向かって的確に問題提起する事を含め、諸課題に即応しうる方途をすみやかに講じる事を求めるものです。
「ご遠忌」法要については、いつ勤めるのか、どのように勤めるのか等一切未定です。どうぞ、皆さんのお智慧を出し合っていただいて、これからの宗門のかたちが映し出されるようなご法要をお勤めしたいものです。
|