宗政報告No.1(2001年10月30日)


臨時宗議会報告 

 2001.10.30
  
 秋も深まり、報恩講の準備等でお忙しい日々をお過ごしの事と存じます。
 世界は殺戮の連鎖を断つ智慧を持たず、不安定要素に包まれ、憎悪のみが肥大化し世界を覆っている感さえあり、心を痛めておられることと思われます。
 扨、先月の宗議会議員選挙では、皆さんのご理解をいただき、宗議会議員として歩ませて頂く事となりました。宗門に尽くさんという意欲だけは、鮮明なのですが、もとより智慧もなく、非力な者であります。このうえは、皆さんのご助言とご指導を支えとして歩んでまいりたいと思っております。何卒、ご支援賜りますようお願い申し上げます。
 


 ≪ 議長に熊谷宗恵師、副議長に藤田智賢師が選出される ≫

 さる10月16・17日の二日間、この度の選挙後最初の臨時宗会が開かれました。宗務総長選出が主な案件です。はじめに、議長、副議長の選挙が行われ、議長には、金沢教区選出の熊谷師、副議長には福井教区の藤田師が、それぞれ選ばれました。選挙結果は次の通りです。
   議長選挙    熊谷 50票 釈氏 11票 白票 2票
   副議長選挙  藤田 44票 藤森 11票 河野 3票 白票 5票  


 ≪ 三浦 崇師が宗務総長に ≫
 
 次に、木越 樹総長が辞任され、翌日、今臨時宗会の主案件である宗務総長選挙が行なわれました。その結果、三浦崇師が選出され、22日に次の各師が参務に任命され、新しく内局が組織されました。
(投票結果) 三浦 43票  新羅 11票  月輪 10票

宗務総長プロフイール:前興法議員団幹事長、参務歴任、三重教区、4期目、58歳

参 務 : 高浜純雄師(山陽教区・再任) 菊池顕正師(熊本教区・再任)
       里雄康意師(大垣教区・再任) 杉浦義孝師(名古屋教区・財務長)
       但馬弘師(大聖寺教区・同和推進本部長)

 ≪ テロと武力行使に反対する決議文提案される ≫

 議会二日目の昼休み中に、興法議員団から急遽、上記決議文を提案したい旨、打診があり、三派で協議を重ねましたが、十分検討がなされないまま、時間切れとなり、本会議に議員提案(資料ー1)されるはこびになりました。
 しかし、その内容たるやあまりにも不十分であると言わざるを得ず、到底賛成できるものではありませんでした。そこで、グループとしての対応としては、早急に小泉総理大臣宛に要望書(資料ー2)を提出することを確認したうえで、本議会での判断は、各議員に委ねる事になりました。結局、11人中、不十分ではあっても、出さないより出したほうが良いと言う判断をした人が8名、賛成をしました。私は、他の2人とともに、採決前に議場を退席。61名、全会一致で採択されました(1名欠席)。
 決議文をご一読いただけば、すぐお気付きになられると思いますが、まず、要望ということを中心の内容にしていながら、どこの、だれに要望するのかが、明記されていない。次に、内容から斟酌すれば、テロ行為とそれに対する武力行使を中止せよということでありますから、テロを行なったものと、武力行使をして
る米英政府に向かって要望していることとなり、特別措置法を作ってでも、アメリカ支援に邁進しようとしている日本政府が全く問題にされていない点。このような内容では、9月21日付けで発信された木越総長の要望書(真宗10月号p7・8参照)からも大きく後退するものであり、いまさら決議する意味を見出せず、到底賛成できるものではありませんでした。皆さんのご意見は如何でしょうか。


 ≪ グ ル ー プ 「恒 沙」 に ≫

 ここで、議会の運営のされ方についてふれてみたいと思います。宗議会議事条規では、65名が一度に審議に加わることは不可能であることからか、65の議席を4つに分けて、4部会とし、それぞれの部会で慎重審議を重ね、本議会に臨む。発言時間、各委員会への所属は部会毎で割り振りされるという、部会政治が謳われています。
 しかし、実際は、部会という名の会派になっていて、会派に属さなければ、部会に属せないということになっています。したがって、無所属では、部会に発言の時間や、委員会枠が割り当てられるため、発言する機会も確保されませんし、委員会にも入れないということになります。おのずと、会派に属さなければ十分な議員活動はおぼつかないという事のようです。
 その会派が、宗議会には三つあり、43名を擁する与党・興法議員団と、11名のグループ「恒沙」そして、10名の真和会がそれです。さらに、選出教区の選挙事情かとも思われますが、無所属の議員が1名(この方はいずれ、興法議員団に入られるということです)。一応、興法議員団は、第一、第二部会になっていますし、グループ「恒沙」は第三部会、そして真和会が第四部会となっていますが、部会は名ばかりです。
 それぞれの会派の宗門ビジョンということから言えば、興法議員団とグループ「恒沙」は、共に同朋社会の顕現を課題とするということでは同じ土俵にいると言えます。真和会は、かつては、大谷家を中心とした教団形成を目指していましたが、今何を課題としておられるかは、よく知るところではありません。
 では、興法議員団とグループ「恒沙」の違い目は何か。それは、会派の運営手法だと言えるでしょう。興法議員団は与党会派として、議員にいろいろな意見はあっても、採決にあたっては、一人の離反者も出さないと言う党議拘束をかける運営手法をとります。そういうあり方を批判しているのが、グループ「恒沙」といえます。
 正直なところ、立候補を決めた時点では、いずれの会派に属するかを決っしかねていました。与党にいなければ、やりたい施策も具体化しないだろうし、情報も入ってこないと、アドバイスして下さる方。あるいは、大所帯では、一人の意見は飲み込まれてしまうと、おっしゃって下さる方。与党に身を置くことの大事さと、そのことで失うであろうことの間で揺れ動いていたと言うのが偽らざるところです。
 選挙後、いよいよ態度決定を迫られる中で、古くからの友人、知人がグループ「恒沙」へのお誘い、お勧めをしてくださったという事もあるのですが、最終的に選んだ一点は、どこまでも自身の意見に正直に宗政に関わりたいということでありました。
 会派による議会運営を批判して、12年前、当教区の松見宣成師を代表とする「地涌会」が立ち上げられ、8年前には「無所属議員団」と名称を変えました。そして、98年6月からグループ「恒沙」と名乗っています。
 会派を批判した者たちが会派を組むとは、笑止だというご批判が聞こえてきそうですが、会派の最も大きい問題は、党議拘束の名の下で、議員一人一人の顔が消されていくことでないでしょうか。会派は、本来、志を同じくするものが互いに研鑽を重ねる場であり、議員のためのものであったはずですが、会派に重きが置かれるとき、議員は会派のためのコマとなるという逆転現象がおきます。
 グループ「恒沙」は、発言の場を確保し、委員会に入る便法として会派を作りますが、意見と採決にあたっての判断は、どこまでも議員一人一人に委ねられます。言わば、一人一党の集合体のような会派といえるでしょう。


 ≪ グループ「恒沙」は11名 ≫

 メンバーは総勢11名で、改選前と変わりません。それぞれ大変個性的で、いずれ劣らぬ興味深い人たちで、かつ議論が大好きといえます。議員というと、何期、何期と議員暦が幅を利かせているものと思っていましたが、久近を問わないところがなんともありがたく、一年生議員であろうと、その意見は十分に取り上げられます。
 代表は、山形教区の新羅興正師、幹事は高田教区の藤島恵師で、基本的に一年任期で、出来るだけ多くのものが担当するようになっているようです。
 いい所に入れていただいたと思っています。


 ≪ 投 票 と な っ た の は 四 教 区 ≫

 この度の宗議会議員選挙におきまして、全国30教区のうち、投票となりましたのは、4教区でした。選挙結果は次の通りです。

三条 教区  安原 晃(当226) 安藤勝壽(当213) 高橋 悉(当144) 栗原啓司(次78)
小松 教区   能邨英士(当103) 大谷制以知(次60)
名古屋教区  松本好行(当265) 栗原 尭(当243) 木全和博(当227)
           壽台順潮(当217) 河野授典(当194) 加藤久晴(次116)
大阪 教区  清 史彦(当249) 林 治(当212) 深田英雄(当185)
         近松譽一(当179) 戸次公正(次165)  
       

《資料ー1》

[国際的テロリズムの行為ならびに報復のための武力行使中止を求める決議文]
 2001年9月11日、アメリカ合衆国における同時多発テロ行為によって多くの人々の尊い命が奪われ、甚大な被害を受けたことに対し、深く哀悼の意を表し関係する人々に衷心よりお見舞い申し上げます。
 人間を踏みにじる非道無惨なこのテロ行為に対し、私たちは強い憤りと深い悲しみを覚えます。いかなる主義主張があろうとも、「いのちの尊厳」を否定する行為は絶対に許されません。
 現在、このテロ行為に対する報復として武力行使がなされていることは誠に残念であります。真宗大谷派宗務総長名をもって、このことを危惧し、武力行使をしないよう強く要望(9月21日内閣総理大臣と米国大統領あての要望書)してきましたが、阻止できなかった無力さを恥じるものであります。
 すべてのテロ行為は、憎むべき卑劣な行為です。しかしながら、その行為に対して武力をもって報復することは、戦争の悲劇を繰り返し、多くの人々のいのちを奪い、あらたに難民を生み出しております。これこそが、人間自身の持つ愚かさであり、悲しさです。正義という名の殺人によって平和を実現しようとする人間の迷妄は破られねばなりません。民族・言語・文化・宗教など様々な違いを認め合い、真実の平和を願い、同朋として出遭う道を模索する以外に、テロリズムを根絶することはできないと確信しております。
 私たち真宗大谷派は、過去の戦争に関与し、多くの国と人々に多大なる苦痛と悲しみを強いた歴史をもっています。生きとし生けるものを平等なるいのちと見出す仏陀の教えをいただきながら、その教えに背いて戦争に協力した罪責は、どれだけ反省しても償うことはできません。私たちは今、戦争の歴史を検証し自らの加害責任を直視し、戦争に二度と加担してはならないとの決意をあらたにしております。
 世界における民族、宗教の相違による問題と経済格差による貧困等の諸問題に対する無知・無関心をあらためて自覚し、全世界の悲しみを真摯に受け止め、あくまでも武力行使に依らない、外交的努力と人道的支援こそ日本国の世界平和に貢献する道であると確信し、宗教者として四海平等の仏陀の精神の具現に向けて一層の精進を誓うものであります。
 私たちは、これ以上犠牲者を生み出すことのない、すべての人々のいのちの尊厳が守られる叡知の結集を願い、テロ行為並びにテロ行為に対する報復としての武力行使を、即刻、中止されることを強く要望し、平和実現への努力を惜しまないことを決議いたします。
2001年10月17日
                  真宗大谷派 宗議会議員一同


《資料ー2》

   [米国によるアフガニスタンへの報復武力行使と
              日本の後方支援の即時停止を求める要望]
 去る9月11日のテロ行為によって命を奪われた人々に対して、深い心の痛みを感じ、謹んで哀悼の意を捧げます。
 米国政府は、テロ撲滅と言う大義のもとに、より大きい国家テロともいうべき戦争を宣言し、日本政府もそれへの加担を実行し始めました。
 しかし、ことは、「なぜ、自爆テロという衝撃的は手段をもってまでもN・Yの国際貿易センターやペンタゴンなどが標的になったのか?」ということへの洞察によって、この事件の奥にある闇に目を向けない限り根本的な解決ははかりえない問題です。
それは、世界における民族、宗教間の問題と、米国へ富が集中する経済構造によって生み出される貧窮の問題に対する無知と無関心であります。この問題の根の深さを思うとき、いかなる理があろうともこれを武力行使・戦争によって解決することは不可能と云わざるをえません。
 私たち真宗大谷派も、過去の侵略戦争を「聖戦」と意義付けて加担してきた罪責の歴史をもっています。それは、「不殺生」「怨みに報いるに怨みをもってしたならばついに息むことはない。怨みをすててこそ息む。これは永遠の真理である。」と言う仏陀の精神に背いてきた歴史でもあります。
 私たちは今こそ、「非戦平和」を心して深く決意するものであります。
 時あたかも、10月16日、日本の国会では「テロ対策3法案」が衆議院で採決されました。これは憲法第9条に違反して日本による後方支援を正当化するものであり弾劾せずにはおれません。
 私たちは、ここに米国による報復戦争と日本政府による戦争加担政策と国会の追認行為を即刻停止されることを強く要望いたします。
                                           2001年10月22日
小泉総理大臣殿
      真宗大谷派宗議会議員有志
新羅興正  寺永 哲  藤内和光  藤森教念  高橋 悉  藤島 恵  森嶋憲秀  篠田 穣  三浦 長  釈氏政昭  長野淳雄