すると子狐紺三郎が云いました。
「鹿の子もよびましょうか。鹿の子はそりゃ笛がうまいんですよ。」
四郎とかん子とは手を叩いてよろこびました。そこで三人は一緒に叫びました。
「堅雪かんこ。凍み雪しんこ、鹿の子ぁ嫁ぃほしいほしい。」すると向こうで、「北風ぴいぴい風三郎、西風どうどう又三郎。」と細い、いい声がしました。
狐の子の紺三郎がいかにもばかにしたように、口を尖らして云いました。
「あれは鹿の子です。あいつは臆病ですからとてもこっちへ来そうにありません。けれどもう一遍叫んでみましょうか。」
そこで三人は又叫びました。
「堅雪かんこ。凍み雪しんこ、しかの子ぁ嫁ぃほしいほしい。」
すると今度はずっと遠くで風の音か笛の声か、又は鹿の子の歌かこんなように聞えました。
「北風ぴいぴい、かんこかんこ
西風どうどう、どっこどっこ。」
狐は又ひげをひねって云いました。
「雪が柔らかになるといけませんからもうお帰りなさい。今度〔こんだ〕月夜に雪が凍ったらきっとおいで下さい。さっきの幻燈をやりますから。」
そこで四郎とかん子とは、
「堅雪かんこ。凍み雪しんこ。」と歌いながら銀の雪を渡っておうちへ帰りました。
「堅雪かんこ。凍み雪しんこ。」
其の二(狐小学校の幻燈会)一幕
****** 雪渡り ******
其の一(小狐の紺三郎)
〜〜四幕〜〜
