青白い大きな十五夜のお月様が静かに氷(ひ)の上山(かみやま)から登りました。 雪はチカチカ青く光り、そして今日も寒水石(かんすいせき)のように堅く凍りました。 四郎は狐の紺三郎との約束を思い出して、妹のかん子にそっと云いました。


「今夜狐の幻燈会なんだね。行こうか。」


 するとかん子は、「行きましょう。行きましょう。狐こんこん狐の子、こんこん狐の紺三郎。」とはねあがって高く叫んでしまいました。すると二番目の兄さんの二郎が、
「お前たちは狐のところへ遊びに行くのかい。僕も行きたいな。」と云いました。 四郎は困ってしまって肩をすくめて云いました。


「大兄さん。だって、狐の幻燈会は十一歳までですよ、入場券に書いてあるんだもの。」

 二郎が云いました。


「どれちょっとお見せ、
ははあ、学校生徒の父兄にあらずして十二歳以上の来賓は入場をお断わり申し候。狐なんて仲々うまくやってるね。僕はいけないんだね。仕方ないや、お前たち行くんならお餅を持って行っておやりよ。そら、この鏡餅がいいだろう。」


 四郎とかん子はそこで小さな雪沓をはいてお餅をかついで外に出ました。
 
 兄弟の一郎二郎三郎は戸口に並んで立って、「行っておいで、大人の狐にあったら急いで目をつぶるんだよ。そら僕ら囃してやろうか。堅雪かんこ、凍み雪しんこ、狐の子ぁ嫁ぃほしいほしい。」と叫びました




其の二(狐小学校の幻燈会)二幕

****** 雪渡り *******
 其の二(狐小学校の幻燈会)
   〜一幕〜