狐は可笑そうに口を曲げて、キックキックトントンキックキックトントンと足ぶみをはじめて、しっぽと頭を振ってしばらく考えていましたが、やっと思いついたらしく、両手を振って調子をとりながら歌いはじめました。
「凍み雪しんこ、堅雪かんこ、
野原のまんじゅうはポッポッポ。
酔ってひょろひょろ太右衛門が、去年、三十八、たべた。凍み雪しんこ、堅雪かんこ、野原のおそばはホッホッホ。酔ってひょろひょろ清作が、去年十三ばいたべた。」
四郎もかん子もすっかり釣り込まれてもう狐と一緒に踊っています。
キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キック、トントントン。
四郎が歌いました。
「狐こんこん狐の子、去年狐のこん助が、焼いた魚を取ろとして、おしりに火がつききゃんきゃんきゃん。」
キック、キック、トントン。キック、キック、トントン。キック、キック、キック、キック、トントントン。
そして三人は踊りながらだんだん林の中にはいって行きました。赤い封ろう細工のほうの木の芽が、風に吹かれてピッカリピッカリと光り、林の中の雪には藍色の木の影がいちめん網になって落ちて日光の当たるところには銀の百合が咲いたように見えました。
其の一(子狐の紺三郎)四幕