静岡県の公文書開示審査会の委員が、累積する不服申立ての審議に悩む京都府の審査会の運営状況を視察した後、夜、同行した県の情報公開室の職員数名とともに歓談をして、公費を4万円(1人あたり6千円)くらい使った。これを京都の料理屋の名前にちなんで、「たごと事件」と名付け、あれこれと騒いでいた。
たしか昨年の12月頃だったと思う。額が小額だということもあって、その後あまり問題にされることはなくなっていたが、最近になって新聞で報道されてから、たごと事件は意外な方向に展開しはじめた。
5月15日、知事は、定例会見で「県職員が公費を支出して飲食を伴う懇談会を開くことを、原則禁止する方針を明らかにした」という。知事のこの発言を伝えた毎日新聞によれば、自治省はこれを「極めて珍しい」と言っているのだという(2000年5月16日毎日新聞1面)。
この知事の方針自体はいまさら何を言っているのかと思うような、当然の結論だろうが、そもそも情報公開条例の改正問題とからんで、審議会の中立や公正の問題、審査会委員のあり方の問題を議論しなければならないときに、このような形の、公務員の公費不正使用だけに問題が終始してしまうとすれば、重要な問題が置き去りにされてしまう。いったい何がどうなってこういう形の問題に発展することになったのか。
はじめ、これについて伝えた産経新聞では次のように報じられていた。
県の公文書開示審査会の委員と情報公開室の職員が年1回、公費で懇親会をすることが恒例となっている。平成10年度は京都の出張の際に行われ、委員4名と職員3名の計7名で4万円超の公費を使った。平成11年度は、静岡市内で行われ、委員5名と職員5名の10名で、計約7万円が支出された。
これについて、昨年10月から新しく審査会会長に就任した角替会長の話として、「県民からあらぬ疑いをかけられるのは本意ではない。懇親会の開催を見直すよう県側に提案していく」というコメントが載った。これに対する柴副知事の話は次のように伝えられた。
「公開室の職員が懇親会に同席することで、審査会の中立性が懸念されるという批判があるならば、職員の同席は今後(見直す方向で)検討させる」、「事務を円滑に進めるための懇談は意義あるものであり、委員が年に1回、1人あたり6千円や7千円程度の会合を開くことは社会通念を著しく逸脱しているとは思えない。」
今後も、委員同士の懇親会の開催を容認する方針(平成12年度の予算は10万5千円)。
(以上、2000年5月8日産経新聞24面 「公文書開示審委員と公費で“懇親会”−毎年1回、恒例に「悪いと認識していない」−より引用)県の当初の見解はこのようなものだった。
(つづく)