「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(5)-答申の重み

−静岡県の情報公開条例について考える−


現在、情報公開条例の改正手続は、7月にはじめられた情報公開懇話会の答申待ちの状況になっている。

平成元年に制定された現在の条例(静岡県公文書の開示に関する条例)は、静岡県情報公開検討委員会という内部の課長会議で検討した「静岡県における情報公開性素案」をもとに、条例の内容についての検討が行われた。

当時の委員は、弁護士2名、学術経験者3名、マスコミ関係者2名、労働組合関係者2名、市長会等2名、医師会、商工会、農協、青年会議所関係者各1名、企業関係者2名、婦人団体、県政モニターなど3名、計20名という構成になっていた。

情報公開室の説明によれば、今回は制定時とは異なり、懇話会の審議結果の報告程度以外の内部の検討は行っておらず、諮問の答申を待っている状況であるという。

現在開かれている静岡県情報公開懇話会の委員は全部で10名、構成などは下のとおりである。
県の顧問弁護士で県の訴訟代理人も担当されている弁護士の牧田氏を除けば、行政法に詳しい専門家はいないとされている。

会議の回数は今までのところ4回、5回目は27日に県民8名の意見陳述が予定され、その後、6回目の会議が追加されるかもしれないが、今年3月までには答申が出される予定だという。
会議は公開され、議事録も公表されているが、委員の意見がかみ合わない場合があることを想定して、予備知識の範囲で、会議ごとに作成した資料を配りながら、事務局が各委員にレクチャーのような形で説明に回っているのだという。
このようなこともあって、せっかく審議が公開されているのに、話し合いの過程が透明となっている印象は得られない。

結局見えない所で、作業は進められている。それでなければ、情報公開条例の改正という、専門的な知識をもっていても、相当の回数の審議を経なければ一致点がえられるはずもないような問題を、行政法の専門家もほとんどいないという状況で、用語についての予備知識もなく、条例の内容もよくわからずに選ばれた委員も含めた10人の委員が、わずか5回の審議を経て答申をまとめることは不可能に近い。
答申を待つことはともかく、その答申が、情報公開条例の改正に関して、県の方向を決める基本的な内容を提示することになってしまうとしたら、それはなんとも奇妙な話である。

答申として重視するなら、内容について十分な審議ができる委員を選ぶべきであるし、もしそのような委員を選ぶことができないのであれば、答申という形での意味付けを与えない程度の意見として扱うべきである。
県民のうちで、わずか10人の代表として選ばれ、たった5回の予定の審議だけで答申を出すことがわかっているのなら、自分が責任を持って議論できない内容について、委員を引き受けるべきではないだろう。

県民参加の実現のためには、本当に参加するべき人が参加することができるようになっていなければならないが、そのことを実現することがいかに難しいか、公開の懇話会が提示している問題は大きい。

(つづく)

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静岡県情報公開懇話会委員

 稲葉 昌代  常葉学園短期大学教授
 内山 博之  静岡県商工会議所連合会事務局長
○篠崎 鉄夫  日本放送協会静岡放送局長
 鈴木 和明  日本労働組合総連合会静岡県連合会事務局長
 土谷 直人  日本青年会議所東海地区静岡ブロック協議会会長
 牧田 静二  弁護士
 松本 玲子  民生・児童委員
 見野 孝子  有限会社ライフケア浜松代表取締役
◎宮下 淳  静岡県立大学経営情報学部長
 森田 明恵   静岡県地域女性団体連絡協議会 副会長

   ◎は会長、○は会長代理

−−−−−−−−静岡県ホームページの議事録より抜粋−−−−−−


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