「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(3)-中味の見えない地方分権

−静岡県の情報公開条例について考える−


静岡県が情報公開条例の改正にあたり、「法律との整合性」を強く打ち出してきた背景には、二つの側面がある。

一つは地方分権についての考え方がどれだけ定着しているのかという問題がある。
地方分権という考え方が、もう少し具体的なイメージを持って県政全体に浸透していたなら、もしくは、ある程度具体的な制度の裏づけがあるものになっていたなら、いくら法律の制定を待って一度に進めたほうがやりやすいという判断があったにしても、県の条例改正において、法律との整合性をそれほど前面に出すことはなかったはずだろう。

それに加えて、情報公開条例が、県政全体の中でどのような重要性を持って受け入れられていたのかという問題がある。
情報公開条例が、県政全体において、少しでも重要な位置づけを与えられていたなら、地方分権に立って、これからの県政を推進する上で、この条例改正がどのような意味を持つのかという視点はもう少し重視されていたに違いない。

おりしも、昨年10月、静岡県は「静岡県地方分権推進計画」を発表した。
この計画は、A4判44ページの総論と、国の地方分権推進法の施行に伴う条例改廃と権限の委譲等のリストを88ページにわたってまとめたものである。

「本県独自の地方分権の取組」の中では、「県民への説明責任の明確化と県民参加の促進による住民自治の拡大」があげられ、住民自ら判断し決定していくという住民自治を強化するために、県政の積極的な情報公開と、幅広い広報公聴活動、県民との実質的なコミュニケーションの機会の増大を第1にあげていた。
しかし、積極的な情報公開、県民参加の促進、双方向コミュニケーションの機会の増大、そして「協働」といった理想的な目標の中に、それを実現するための具体的な方策や、実現を促すための体制が見出せないもどかしさが残る。

一方でこれだけ情報公開と県民参加を重視するという内容の計画が作られていながら、同じ情報公開と県民参加を目的として定められている県の情報公開条例で、国の法律との整合性を主たる課題としてあげることに矛盾はないのか。

そのことを考えるならば、具体的な政策に裏うちされていない地方分権の推進と情報公開に対する意識の希薄さが、手数料をめぐって、他の都道府県に大きく遅れをとってしまった背景にあることを指摘しないわけには行かない。

 (つづく)

------------- (資料)--------------

 〜「静岡県地方分権推進計画」(平成11年10月)より、情報公開関連部分の抜き出し〜

T 国の法令改正に対する県の対応

4 本県独自の地方分権の取組

(1)県における「地方分権」の構図
B県民への説明責任の明確化と県民参加の促進による住民自治の拡大

(4)住民自治の拡大

 地方自治は、組織の自立による「団体自治」と住民の自己決定による「住民自治」とが揃って始めて成立するといわれている。地方分権一括法による地方分権改革は、地方自治制度の改革であり、団体自治の強化である。今回、地方自治の器としての団体自治を整えたことから、地方公共団体に残された課題は、住民自ら判断し決定していくという住民自治を強化して器の盛り付けを確実に行うことである。

 そのためには、県は第1に県政の積極的な情報公開をはじめ、幅広く広報公聴活動を行い、県民との実質的なコミュニケーションの機会を増大させること。第2に具体的な場面における県民の県政参加システムを開発し、政策形成過程から施策執行・事業評価までの各々の中に組み込むよう検討すること。第3に公的サービスの守備範囲を先例にこだわらず大胆に見直し、NPOとの協働等も視野に入れながら、県民満足度の向上と費用対効果のバランスを図ることが重要である。

U 地方分権推進の体制整備

    3 県民に開かれた行政の推進

     地方分権の基本は、国の担うべき事務を国家としての存在にかかわる事務、全国的規模・視点で行わなければならない施策などに限定することとし、地方の自主性・自立性を高め、個性豊かで活力に満ちた地域社会を創造することにある。

     そのためには、県民の理解と参加を積極的に進め、自己決定・自己責任の原則の下、縦割り行政の弊害を内外から変革し、開かれた行政を進めることにより、従来の中央集権の特徴として挙げられる画一性・統一性を地方分権の多様性・独自性に転換していくことが可能となる。

     目標とすべき「開かれた行政」には2重の意味が認められる。@政策過程の県民への公表(=行政の中から外への情報公開)とA政策過程への県民参加の促進(=行政の外から中への取り込み)である。

    (1)政策過程の県民への公表

     現在、条例に基づく公文書開示制度をはじめ、前記2(1)に記載した業務棚卸表の公開に示されるような課題設定や政策評価の段階についても情報提供を実施している。今後はさらに、県政におけるすべての政策課程(課題設定・政策立案・政策執行・政策評価)について県民の情報アクセス及び意見聴取が可能となるシステムを開発していくよう検討する。
     なお、県の公文書開示制度については、条例制定後10年が経過し、今般国の情報公開法が成立したことも受け、見直し作業を行っている。

    (2)政策過程への県民参加の促進

    @ 双方向コミュニケーション

     従来から、県民便りや県政モニター・県政世論調査等の長い積み重ねを経た事業や知事が直接県民と語り合う「緑飲トーク」、県民のこえ窓口・県民サービスセンター県政情報窓口等の新たな取組など県政の広報公聴活動の実施を通じて県民との間で情報提供と意見聴取に積極的に取り組んできた。

     さらに、行政の広報公聴活動においては、行政と県民との間のコミュニケーションが1方通行になりがちなことから、例えば「県民のこえ」への回答にみられるような応答関係を成立させるよう、新たな県民参加システムの策定においては、双方向コミュニケーションの仕掛けを組み込むことを条件とする等の対応を図っていく。

    A施策の対象からパートナーへ

     従来の行政において、県民は施策の対象として把握されてきた。しかしながら、県民参加が政策過程の全般において進むなかで、従来の県民と行政との関係を片務的なサービスの需給関係から相互に影響を与えながら地域の公共性を高めていく協働関係に変える必要があり、このため、県民を行政と同じく公共社会を構成するパートナーとして把握し直すよう、県民参加を積極的に取り入れていく。

    B 公私協働

     県民)住民だけでなく企業もNPOなどの団体も含む。)を公共社会を構成するパートナーであると認識すると、公共領域を行政が独占する形態から、行政と純粋な民間との間に中間的な領域が生ずることとなる。このような分野においては、行政と民間とが協働関係にもあり、競争関係にもあることとなる。地方分権の推進の立場から積極的に評価すれば、競争関係によって顧客志向・柔軟かつ迅速・高効率などの点で優れた公共サービスが提供されることは望ましいものである。

     行政にとって、公式的な政策決定を経た施策のみが公共サービスを独占すべきであると判断することが、求められた需給に対して質量ともに十分応えることと必ずしも一致しない現在では、NPOにみられるようなボランティア活動への理解度と協力度を高めることこそが行政に求められている。

     しかしながら、ボランティア活動は元来、行政を代替するために活動を行っている訳ではないため、行政がその活動に対してただ乗りをすることは関係を損なうこととなる。従って、ボランティアの得意な領域において活発な活動が確保されるよう、行政はネットワークマネジメント(団体間の調整を図り協力を要請する。)機能を果たすことや具体的活動拠点の便宜を図るなどインフラストラクチャーの整備に努めていく。

-----関連部分の抜粋 ここまで---


このホームページに関する御意見、御感想は
ヘパフィルター(E-mail:hepafil@ag.wakwak.com)
までお願いします

ホームページ 目次 次ページ メール