「開かれた県政」を求めて-目次-

条例改正の行方(12)-検討項目の決め方

−静岡県の情報公開条例について考える−


3月24日、静岡県の情報公開懇話会は、最終回の第7回目の審議を終え、翌週28日に、知事に「情報公開制度の改正について」と題する提言を提出した。
当初予定されていた5回の審議は、結局7回まで増え、審議は公開、発言はすべて発言者の名前入りでインターネットでも公開、県民からの意見を募集し、10分間とはいえ県民の意見陳述も行われた。

情報公開室がほぼ1年くらいをかけて取り組んだこの一連の手続は、全国的に見ればさほど珍しいことではなくなってはいるが、審議会や委員会等の審議がほとんど公開されていない静岡県の現状から見れば、今までにない画期的なできごとであったと言える。
その点は十分に評価されなけらばならないのだろうが、同時に、この過程で明らかになった問題も多かった。

一つには、審議会等の会議を原則公開とする旨を条例に盛り込むべきであるという意見について、懇話会では実質的な審議を経ずに、条例の内容には加えないという結論が出されてしまった。
提言の中でも全くふれられていないばかりか、検討するための資料も作られなかった。7回の審議のために、情報公開室が作った膨大な資料の中には、「会議の公開」に関する資料は全く含まれていないのである。

一方、他の自治体を見ると、北海道や宮城県、三重県などのように、「会議の公開」を条例の中に盛り込んでいる自治体は次第に増えている。山梨県や長野県などのように、条例には書きこまないという結論になる場合でも、提言には盛り込んでいる場合もあるし、大阪府のように改正案には出てくる場合もある。

このように、先進的な自治体を中心として積極的に取り上げられている今の流れからすれば、各地の情報公開条例を参考にする限り、「会議の公開」について検討する必要性は大きかったはずなのである。
にもかかわらず、審議のための資料も作られなかったわけは何かといえば、それは一つには、会議に先立って、懇話会での検討事項が決められた経緯にあった。

事務局では、検討事項の案を決めるにあたり、国の情報公開法との条文の比較によって項目をまとめていた。
県は、新たに始まろうとしている地方分権時代を担うにふさわしい「情報公開条例」を作ろうとしたというよりはむしろ、「法律との整合性」を主眼として、法律と異なる規定になっている現条例を、法律の内容と釣り合いが取れるように手直しすることを考えていたようだ。

それだから提言の内容は、総じて情報公開法に準じた内容となっており、情報公開法と異なっている部分をあげてみれば、目的に「知る権利」を入れるとしたことと、閲覧手数料を無料にすることとした程度にとどまっている。
念頭に置いていたのは、各地の先進的な情報公開条例ではなく、あくまでも、国が作った情報公開法であって、その点で、静岡県の取り組みにははじめから大いに限界があったのである。

はじめから、県の情報公開室は「会議の公開」を入れることは何も考えていなかった。「法律との整合性」を目的とする限り、そういうものが出てくる余地は、実ははじめから全くなかったのである。

 「情報公開制度の改正についての提言」
 http://www.pref.shizuoka.jp/~soumu/sm-07/konwa/090.pdf

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(参考)

北海道情報公開条例(H10.4.1施行)
 第二節 会議の公開
 第26条

宮城県情報公開条例(H11.7.1施行)
 会議の公開 第19条

三重県情報公開条例(H12.4.1施行)
(会議の公開) 第四十三条

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大阪府公文書公開条例の全部改正案について(H11.9.28)
(会議の公開) 第三十三条

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長野県の情報公開制度のあり方について-提言-(H12.3.28)

17 会議の公開
 審議会等の会議の公開については、条例とは別に各審議会等に共通の規程を設けることが適当である。

〔説明〕  現在、審議会等附属機関及びこれに類する会議では、通常、当該会議の場において、会議の公開・非公開を決定している。
会議の公開については、国では審議会等の運営に関する指針が閣議決定され、また、多くの都道府県で審議会等の会議の公開に関する包括的な規程等が設けられている。
 議事の透明性や公正性を確保し県政に対する信頼を高めるためにも、できる限り会議を公開することが望ましいことから、条例とは別に、会議の公開に関する各審議会等に共通の規程を設けることが適当である。  (以下略)

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 (つづく)



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